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病気の犬と最後の日々をすごすゲーム「renal summer」との一週間
静けさの中に、インディーズゲームのとがった作家性がある。
病気の犬の腎臓になるゲーム「renal summer」レビューです。
犬の腎臓になるゲーム『renal summer』をリリースしました!
— ところにょり (@tokoronyori) August 7, 2020
あなたは腎臓病の犬の腎機能を補助することで、少しだけ犬を長生きさせ、少しだけ犬と老人の夏の終わりを先延ばしにすることができます。無料。#renalsummer
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ゲームは実時間とリンクしていて、昼間に起動すれば、老人は牛や馬と仕事をしている。夜だとコーヒーを飲み、夢を見る。足元にはいつも犬がいる。
死ぬ間際にいっしょにいるということは、元気だったころもずっとそうだったことを意味している。
プレイヤーは画面下のブロック状の血液をタップして、不純物を取り除いてやろう。
忘れずにこれをやることで、犬の寿命をすこしだけ引き延ばせる。
テトリスでもぷよぷよでも、「ブロックを消す」と、気持ちがいい。
それを病気の犬の看取りという、ぜったいに気持ちよくないものと同時にさせる。
消しても消しても終わらない、クリアのないゲームと、完治することのない病の看病が似たものに見えてくる。
「こんなことしかしてやれないけど・・・」と、実生活の合い間にブロックを消す。治るものではないので、本当に気休めに犬の体をなでてやってる感じになるのだ。
硬いタッチパネルの感触が、やわらかい犬の腹をなでてやっている感触になる。
犬はだんだん衰えてくるので、最後の方は「かかりっきり」になる。
「こんなことしかしてやれないけど」が繰り返される。
だんだん「こんなこと」を要求する間隔が短くなり、実生活を浸食してくる。
renal summerの作者「ところにょり」さんは犬好きだそうだ。
犬を愛するゲーム作者が、棒をキャッチするとか、飼い主を探すゲームじゃなくて、一番つらい部分をピックアップする。稀有なセンスだと思う。それを見ながら、適度に余裕のある作業をポチポチとやっているうち、自分に似た経験がある人は、その日々を思い出す。
実時間の一週間を終えると、一般的なゲームでいう「クリア」。線香をあげて故人を思い返すような、儀式のようなゲーム体験だった。(ゲームに付き合っていた期間は、ちょうどお盆の期間に重なった)
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