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【ゲーム日記】XBOXで黄泉に行く:TREKTOYOMI

「trek to YOMI:黄泉への旅路」というゲームで遊びました。
海外の制作チームが、黒澤明をはじめとする時代劇をリスペクトした、白黒画面のアクションゲーム。

説明するより、画面をちょっとみてくれ、としか言いようがない。
昔のフィルムのかすかなちらつきがあって、手前には木の枝がかぶさって、遠くのほうには小さく馬が駆けていく。背景の情報量がすごい。
動かせるはずのない白黒の時代劇の中を、走れる。

あまりに本気すぎて笑ってしまう。
ゲームより、時代劇っぽくすることに寄せていて、操作しているキャラクターがどこにいるのか見失う。この、映画的といえば映画的、ミニチュアといえばミニチュア感のある世界観が魅力の8割。

たとえば、最初にチュートリアルとして、ガードボタンや斬るボタンの解説を先生に受ける。
それを、子供が興味深そうに覗いてるカットが一瞬入る。
ストーリー的にはなんの関わりもない、ゲームのチュートリアルには邪魔になる子供がちらっと映るんだけど、その「間」がアニメやゲームじゃない「映画の間」としか言えないタイミングで入る。

戦国時代の日本が舞台のゲームは山ほどあるけど、確実に映画から影響を受けている。侍はいるけど「ニンジャ」がいない、手裏剣は歯車みたいな形じゃなくて「棒手裏剣」なのも、ゲームより本物っぽさを重視したのだろう。

全編モノクロなのも、SNSで目を惹くことが重要な今、相当思い切った仕様だ。今、モノクロの映画を観に行けますか?
「あえて今そうするということは、何か表現したいものがあるんだろう」
と思えるのは映画好きだけで、だいたいは気が乗らないものだ。

背景美術に力を入れた本作では、ちょっぴり作り物っぽい城のハシゴを上がるだけで面白いし、主人公の侍の位置によって焦点距離がかわって、背景がほんのりボケていくのがわかるのが、いちいち新鮮。

色という情報がないから(ついでに音楽もあまりない)スタッフのこだわった部分がわかりやすい。
完成度が抜群に高いとは言えないけど、雑味を排除して、好きなものをまっすぐにぶつけられた感触が魅力的な一作だ。

タイトルどおりに、主人公は村を襲った敵と戦い、黄泉の国へと旅する。
過酷な人生を「黄泉への道」に例えているんじゃなくて、本当に死後の世界に行くんかいって時点で笑ったけど、その黄泉の造形があんまり胸躍るものではなくて、じつに残念。で、ござる。
前半の勢いのまま、賽の河原とか、針の山で鬼や閻魔と会えたら、ものすごい衝撃だろうけど。

主人公は他の侍と何が違うのか、何で強いのかわからないまま話が進むのも、足場がふわっとした旅路を歩いている気になる。
話運びやオリジナル要素にも惹かれるものはなくて、優秀なコピーバンドのカバー曲だけど、聞いて損はない。
だけどカバー曲! そんな印象。

序盤。お侍さんがいることに説得力がある
黄泉。床がSF映画みたいに浮いてる。お侍さんの存在が謎感を強める


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南ミツヒロ
読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。