【流行語大賞】「エモい」はマイケミの曲。三密とフワちゃんは時代のインデックス。
20年後でも「三密」と聞いただけでその年に何があったか思い出せる
流行語大賞に選出されることばが別に流行ってねえ! とは何年も言われてますが、冷静に見ると、
「時代のインデックスになることば」
が記録されているのがわかる。
10年後でも、その言葉を聞いただけで、
「その年にこういう出来事があって、そのときできた言葉だ」
と、その年のことを思い出せる。
2040年になったら、2020年のことを忘れていても、
流行語は「三密」の年と言われただけで、
「その年は感染症があって集まることを避けるように言われて、テレビ番組の収録ができなくなって個人配信が台頭して、「フワちゃん」が配信もできるタレントで重宝されて、目上のタレントにもタメグチでぶつかっていくキワモノ扱いだった「篠原ともえ」の系譜だった」と説明できる。
流行語には時代を記録することばと、単に口ざわりがいいから使いたくなる言葉の2種類があって、流行語大賞は「単によく使う言葉」以上の選出理由がある。
不気味に広がる「エモい」
流行語から「エモい」の話にうつる。
エモいとは、マイ・ケミカル・ロマンスの歌を表現する言葉である。
洋楽が好きな人たちの間では、パンクロックのようでやや情緒ただよう作風を「エモ」と呼んでいた。
調子のいい音楽レビューサイトでしか見たことがない言葉で、実際に発したこともない。
この手のジャンル分けは複雑で、詳しい人でもなるべく使わないようにしているけど、僕がいいなと思った曲に限ってジャンルに「エモ」とある。
特にスイート・リベンジってジャケも名前も曲も、ときどきかすれる高音も、これすっごくいいよ! ボーカルが精神的に不安定で日本びいきだったこととか全部いい。これと2作目で完成。決まり。2005年に書かれたレビューによると「エモコア」で「スクリーモ」らしい。
その時からエモはよく分からない言葉として一旦忘れていたけど、2020年代になってから新しい「エモい」が出て、そっちも何か分かりにくい。なんなの。
2021年の流行語大賞に「エモい」は入っていない。言葉自体はそれより前から耳にする言葉だったけど、エモいが広がっている1年だった。
特に、その言葉を使わない人や、新しく出た言葉に興味がない人も「エモい」の、意味がつかみきれないまま広がってくる感じを不気味がってるように感じる。
毎年、使ったやつのほうが恥ずかしくなる耐久力のない言葉がポコポコときのこみたいに発生しては消える。エモいもそのひとつだと思っていたのに、
「まさか使わないほうが不自然なくらいに市民権得てる? ダサい、エロい、キモい、ヤバい、に続いて定着する気なのか!?」
と叫びながらエモいに拳を向けてかまえてみても、やつはふっと姿を消して、気が付いたら背後に回られている。意味がつかみきれないまま浸透したと思ったら消え、消えてはまた現れ、ことば好きも、新しい言葉なんて気にかけないし使わないサイドの人にも、なんとなく視界のはしっこでちらついて、言葉にびんかんな全ての者をほんろうする。他の新語とは存在感の違う言葉だ。エモい。
読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。