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PS4「ナイト・イン・ザ・ウッズ」のレビュー

町を人体だとすればカネは血液。
人も文化も貧しい田舎町、ポッサム・スプリングは店々が壊死してシャッターを降ろしている。黒猫の姿で描かれた主人公メイ・ブロウスキは、クソみたいな町に、そこで生まれた自分に、全てに毒づき、無為な日々をすごす。

チェーン店でバイト中の友達は耳にコップかぶせて遊んでいる。レンタルビデオ屋で立ってる友人に、今ビデオ借りにくる客いるの?って聞くと、
「便利なものを知らない老人とか」

主人公メイは、この町に大学を中退して帰ってきた。
帰ってきた娘に、親は深いことを聞かない。
とにかく、苦労して大金をかけて、未来に向けて半歩踏み出したはずの娘は、終わった町に戻ってきた。

失敗の理由を深く語らず、両親もちょっと距離を置いている。
メイはプレイヤーと違う姿で描かれているけど、うまくいかない経験があれば、その一点で、プレイヤーはメイに自分を重ねることができる。不登校引きこもり失業離婚、なんでもいい。
アメリカの田舎で生きる感じはわからなくても、若さや可能性をつぶして生きた経験があれば、なんかわかる!
「生まれてから一度も失敗したことないです!迷う暇あったら行動すればいいじゃん!」と即答できる人には全くわからない!

バンド活動をしていた仲間と再会してメンバーになるんだけど、パソコンで楽器の音は出せるからいてもいなくてもいいし、ライブやプロデビューで人生を変えようとも思っていない。

仲間と騒いで楽しかった店に久しぶりに行くと、とっくに閉店していて「寂しい場所の象徴」になっていて、

たまに忘れちゃうんだよね。あたしとメイの「現実」が別々だってこと。

あんたの記憶では楽しい場所のまんま止まってたんだね、と。

自分たちのことを描いてくれてる!と思える状況があり、登場人物はみんな動物の姿にデフォルメされて、二次創作の盛り上がりそうな想像・妄想の余地もある。独特のバランスで成り立っている。
あとバンドメンバーふたりは普通にゲイカップル。ゲームでLGBTを取り上げました!どうだ!挑戦的でしょう!?って感じじゃなくふつうに。

唐突ですが、最近のゲームシーン、付いていけてますか?

ゲームはスポーツに入るのか、って問われたら、これは入らない。ギリで「文学」。
みんなと配信だ、共有だ、オンラインでバトルロイヤルだーみたいなのは自分にとってのゲームの向き合い方じゃないってかた。もしくは胸の中にポッサム・スプリングが広がっているかた。そういう人は、ナイト・イン・ザ・ウッズみたいなゲームが人気作になったことを知ると、むしろ孤独がやわらぐはずだ。

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南ミツヒロ
読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。