「月が綺麗ですね」と言わせたのは太宰治じゃないの
アイラブユーを「愛してる」と訳さずに「月が綺麗ですね」とでも言っておけ、
と夏目漱石が言ったことにされている。
読んでも、そんな場面ないので調べてみたら
「漱石が教師時代に言ってそうなこと」だった。
架空の名言がミーム化された野原ひろしみたいなことになっていた。
沢山文章あるのになんで架空の言葉追加した!お札の肖像画でいちばんイケオジやぞ!
だけど、太宰治の「津軽通信」を(金がないので図書館で)読んでいると、恋人同士で月を見るというシチュエーションはあった。
「津軽通信」はエッセイと短編集で、
恋愛などくだらんという愚痴、
女なんて…という愚痴、
酒が手に入らないという愚痴、
文章力を抜きにしたらSNSにいる底辺の人みたいな一冊で、電車が急停止して体がふれそうになった女性にいやな顔をされたという話なんか見ていられない。
あと、芸術を愛するシャイな男性の、ほんとに小さな話がたくさんある。昔の男性はみんな大ざっぱで豪快じゃないのがわかる。
本来、こういう人間臭いところがあって最後に「人間失格」が正しい順序で、常にシリアスな人じゃないのだ。
「チャンス」
という、恋愛なんかしょせん性欲なのにみんな夢中になりやがって、という文章の中で
「きれいなお月さまだわねえ。」なんて言って手を握り合い、夜の公園などを散歩している若い男女は、何もあれは「愛し」合っているのではない。
と、デートと月の話を結び付けている。
カップルが話題に困って天気の話をしようとしたら、夜だったから
「・・・月がきれいですね」
というのは、あるあるだったのかも。
「恋愛は色欲のウォーミングアップ」という迷文句も出てくる。
「アメリカソバ」という謎飯が出てくるが何だかわからない。
もののない時代で、おいしそうなものが出てこない。
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読んでくれてありがとうございます。
これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。