高齢者の囲い込み(大きな社会問題になりつつある高齢者問題)Vol.2
高齢者虐待との関係
「高齢者の囲い込み」の裏には、高齢者虐待の一類型である経済虐待が隠れていることが多いのです。但し、経済虐待が明らかになるのは、親が亡くなった後であることが多いと言えます。要するに、囲い込みをしている兄弟姉妹が、囲い込みをしている間に、親の財産を使い込むということです。
それでは、遺産分割をする際に、一部の子供(たち)が使い込んだ親のお金を取り戻すことができるでしょうか。
法律的には、被相続人(亡くなった親)の生前に一部の子供がお金などの資産を受け取っていた場合には、特別受益(生前贈与)として、それを取り戻すことが可能です。しかし、実際上は、銀行からお金を引き出したのは親の依頼があったからで、親はそれをギャンブルや遊興費などで使ってしまったなどという主張をしたりします。要するに、特別受益の立証は難しいということです。
どうすれば会えるか
Vol.1で書いたように、高齢者施設(有料老人ホームなど)は、身元保証人(身元引受人、連帯保証人)を「キーパーソン」と呼び、キーパーソンの同意がない限り、入居者の子どもであっても、入居者に会わせることはできないという対応をすることが多いです。
数年前までは、キーパーソンの同意がないことを理由として施設に入所している親に会わせてもらえない場合に、会えるようにする手段はほとんどありませんでした。しかし、2018年に、横浜地方裁判所で、施設は、子供が親と会うことを妨害してはならない、という仮処分決定が出されました。また、2019年には、囲い込みをしている子供らの行為が不法行為にあたるとして、損害賠償請求を認める判決も出されました。
但し、高齢の親との面会を妨害することを禁止するという仮処分決定については、2018年の横浜地裁のもの以外、少なくとも私は寡聞にして知りません。
私自身、仮処分を申し立てたことがあります。結果としては仮処分の申立は却下になりましたが、実質的には、私のクライアントは誰の承諾もなく母親と会えるようになりましたし、オンラインでの面会も自由にできるようになりました。
その事案については、Vol.3でご紹介します。
(続く)