ほかの男に誘われたら断って! 韓国の恋人未満たちの誘惑フレーズ「ラーメン食べて行きますか?」(『愛の不時着』について#8)
ドラマ『愛の不時着』について、8回目です。
韓国ではこれから恋に発展しそうな、本格的につき合う前の状態の男女のことを「ソムタダ(썸타다)」と言います。「ソム(썸)」は英語のsomethingの頭3文字、「タダ(타다)」は韓国語で「萌える」、つまりまだ“何となく”なその状況に萌えるという意味。相手の男(ナム)は「ソムナム(썸남)」、相手の女(ニョ)は「ソムニョ(썸녀)」です。
最近の韓国の若者たちは、お互いに気はあるけれどまだ正式な恋人ではない、スリリングな状態を楽しんでいるそうです。その「ソムタダ」から次のステップに進むときに有効なフレーズとして使うのが「ラーメン食べて行きますか?」です。これは単純にラーメンを食べるだけではなく「家に泊まっていく?」という深い意味になります。
『愛の不時着』にこのラーメンのエピソードが登場するのは第11話。気になる展開になるので、ここから先は、まだドラマを見始めて間もない人、お楽しみにしたい人はドラマ観賞のあとで読んでみてください!
ドラマ『愛の不時着』からのキャプチャー画面 ソ・ダン(ソ・ジヘ)の部屋に初めて入る男性がク・スンジュン(キム・ジョンヒョン)になるとは、お互い「想像してなかった」というシーン
この誘惑のセリフを言うのは主人公のリ・ジョンヒョク(ヒョンビン)でもユン・セリ(ソン・イェジン)でもなく、素性を隠して北朝鮮で逃亡生活中の韓国人実業家ク・スンジュン(キム・ジョンヒョン)。セリとも縁のある彼が、平壌のデパート経営者のお嬢様ソ・ダン(ソ・ジヘ)に「ラーメン食べて行きますか?」と誘い、部屋で2人でラーメンを食べるシーンがあります。
ドラマ『愛の不時着』からのキャプチャー画面
ダンはラーメンの韓国での意味を知らないはずですが、それでもひとつのお鍋から一緒にラーメンを食べるのは何となく気を許している証拠かなと思えます。クールに振る舞うダンですが、この部屋だって元はといえばダンの新居を、困っているスンジュンに貸してあげているのです。
ここで一緒に暮らすはずの婚約者ジョンヒョクとセリの関係に悩むダン。そんな彼女を放っておけないスンジュンは、韓国でのラーメンの意味を話し、「俺とはいいけど、今後ほかの男に誘われたらきっぱり断るんだ」と言います。ダンは「どうして断るの? 好きなのに」と意味深に答え、表情を変えずにラーメンを食べてスンジュンを翻弄します。何だかかわいくてもどかしいソムナムとソムニョが急接近したシーンでした。
ドラマ『愛の不時着』からのキャプチャー画面
この「ラーメン食べて行きますか?」は、2001年の映画『春の日は過ぎゆく』でヒロインのウンス(イ・ヨンエ)が家まで送ってくれたサンウ(ユ・ジテ)に言ったセリフで、映画のヒットとともにブレイクしたキラーフレーズ。お酒の締めにラーメンをよく食べる韓国では、カップルが一緒にお酒を飲んだあとに、自然な流れで「もっと一緒にいたい」という気持ちをさりげなく表現できる最高の言葉なので、こうしたシーンは映画やドラマにもよく出てきます。
ちなみに『愛の不時着』の最終回でチョン・マンボク(キム・ヨンミン)が草原で音を集めていたシーンは、『春の日は過ぎゆく』で録音技師のサンウが自然の音を集めるシーンのパロディになっています。
『春の日は過ぎゆく』をはじめ、2000年前後の韓国映画は『八月のクリスマス』『恋愛小説』など、今見ても心ときめく作品が多いので、純愛映画がお好きな方におすすめです。
映画『春の日は過ぎゆく』
http://m.cine21.com より
【『春の日は過ぎゆく』】
2001年公開の韓国映画。『八月のクリスマス』のホ・ジノ監督の第2作。韓国でもっとも権威のある映画賞、青龍映画賞で最優秀作品賞を受賞。ラジオ番組のスタッフとして出会った男女の恋愛模様を描いた作品。
【『八月のクリスマス』】
1998年公開のホ・ジノ初監督作品。写真館を営む余命いくばくもない青年と、駐車違反取締り員の女性の悲恋物語。『8月のクリスマス』として2005年に日本でリメイクされた。
【『永遠の片想い』】
2002年公開の韓国映画。原題は「연애소설 恋愛小説」。ひとりの男性とふたりの女性、若者3人の微妙な感情の変化を描く。
【韓国のラーメン】
手軽に作れるインスタントラーメンは、韓国の家庭でもよく食べます。お店でもラーメンはインスタントが主流で、「ブンシクジッ(분식집)」という軽食を出す食堂のメニューにあり、お餅を入れたトックラーメンや海鮮ラーメンなど、一味違うインスタントラーメンを味わうことができます。
インスタントラーメン自体も種類が豊富で、ノーマルなラーメンからビビン麺、韓国式のジャジャン麺、カップラーメンまでさまざま。違う種類のラーメンをミックスして食べるのも流行っています。映画『パラサイト~半地下の家族~』に登場する「チャパグリ」は「ノグリ」と「チャパゲティー」というラーメンをミックスしたもの。「ノグリ」は太麺で、10年ほど前にあるブログで紹介され広まりました。「チャパゲティー」は韓国式ジャジャン麺です。最近はダクカルビ味の炒め麺も大人気です。