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interview:第一期生 関場 翔さん

いつか農業をやりたい、移住して理想の生活送りたい、という想いを持っている方は、きっと多くいるはず。でも、これまでの仕事や生活を変えて、新しい世界に足を踏み入れることは、決して容易なことではありません。みらい農業学校の第一期生は、15人もの仲間がその決断を経て入学してくれました。この世界を志したきっかけも、未来の展望も、15人15色でみんな違う。であれば、全員にお話を訊いてそのエピソードをみなさんに紹介させてもらおう! というのがこのインタビューのはじまりでした。あなたの未来に背中を押す、ちょっとしたきっかけになれば幸いです。

さて、第一期生の全員インタビュー、お2人目は福島市ご出身の関場翔さんです。ホテル業や市役所での勤務を経験した後に農業法人に就職され、農業に携わるなかで知識不足を感じた37歳の今、学び直しを決意。卒業後は就農先と連携して、「農家民泊を作りたい」という夢を描いています。これまでのお話や夢にたどり着いたいきさつ、これからの展望について伺いました。聞き手は、みらい農業学校の運営事務局です。

5月上旬におこなった田植え。田植え機を運転する関場さんと遠藤先生です。

ー福島市のご出身で、これまでのお仕事の関係ですでに南相馬市で生活されているなかで当校に出会ったと伺いました。これまでどんなお仕事をされていましたか?

入学前は水稲中心の農業法人で、種まきから収穫まで一連の作業をしていました。他にもブロッコリーやたまねぎを栽培しており、そちらの栽培管理もおこないました。さらにその前は市役所で働いていましたが、自然を相手に、自然の中で仕事がしたいという想いで、農業への興味はずっと持っていたんです。市役所ではどうしても人が相手なので、この先を考えたときに、自分がやりたいと思う、例えばものづくりなどのクリエイティブな仕事がしたくて農業に踏み出しました。

ー学校を卒業後からずっと市役所勤めだったんですか?

まず、ホテル業界で働いていました。もともとはまちづくりや都市開発といった不動産関係の仕事がしたいと思っていましたが、当時はなかなか縁がなくて。色々探しているうちに、ホテル業界にもリゾート開発といった、近隣エリアを含めて開発するような事業があると知り、ホテルに就職しました。とはいえ、新規出店に関わっていたものの「開発」といったところまでなかなか携われなくて。そしてやはり人相手が中心のお仕事なので、ホテルだけで続けるというのは違うのかなと考えるようになりました。

ー「まちづくり」に興味があったものの、根底にはずっと「自然を相手に」という想いがあったんですね。

ホテル業からの転職を考えた時点で実は農業フェアにも行っていて、就農を検討していたんですが、当時震災から5年目くらいということもあり、南相馬での新規就農がまだまだ現実的ではない段階で。今ほど新規就農者に向けたイベントや支援も少なかったし、行先も決まらず、たまたま募集があった市役所の募集を見て入職しました。

ー人にかかわるお仕事が続いていましたが、いずれも関場さんが就農後に想い描く「農家民泊」を実現された際には、かならず活きてくるご経験ですね。農家民泊の構想はいつごろから描きはじめたんですか?

南相馬市に引っ越してきてからですね。出身の福島市とは環境も違って、南相馬市の方が田舎、農村という感じなので。「田舎暮らし」ということを考えるようになりました。南相馬市は海があって、山もあって。風光明媚という感じでもないかもしれないですが、海でも山でも遊べる環境が面白いなと思いました。ただ、その環境だけを推したいわけじゃなくて、やっぱり農業をやってみて、地元の生活を知ってもらいたいと思った点が大きいかもしれないです。観光地ではないと思っているので。

講師・遠藤先生の田んぼで田植えの実習をしました。遠くに、海が見えます。

ー確かに景勝地があったりというわけではないけれど、南相馬市は先ほどもおっしゃっていた「なんかいい」と言いたくなる場所です。関場さんの施設が、まだ就農するほどの意気込みはないけど、農業が気になるという方が経験してみるきっかけの場所になるかもしれないですよね。

そうですね、別に農業を目指してなくてもいいんです。たとえば、都会の人って今時の農業とか知らないと思うんですよ。「田植え機」というものがあると漠然と知ってるかもしれないけど触ったことがないとか、泥の感覚も忘れていたり。もっというと刺身は知ってるけど魚を知らないとかいう状態だと思うので、現場を見に来てほしいという想いが最近は出てきました。大人でも子供でも農業の現場を知ってほしいな、って。

ー市街地に住んでいる側からすると、農業の現場は非日常で、子供を連れて行って泥に触れさせたり、夜になったら蛍が見られたり、採れたての野菜を味わったり…そういう経験が少なかった親としても子どもと一緒に体験したいという気持ちは大きいです。

農業体験をする、と構えなくてもいいんです。いいところでのんびりできるから、気軽に来て、気軽に体験できる場所になったらいいと思います。

ーふらっとそういうことが体験できる場所があると嬉しいなと思いました。ちょっと話が変わりますが、関場さんはみらい農業学校の説明会を2月に受けていただいていて、願書締め切りのギリギリに提出いただいたと思います。学校のことはいつ知りましたか?

2月初めです。ちょうどその頃に、今後のことを考えて転職するのか学び直すのか、検討を始めて。いろいろ調べているうちに市内の農業学校が募集しているということを知りました。実際のところ、年度末間近だったこともあり、採用をしているところもなかったこともあり、学校に行って勉強してみようかなと。

ー学び直しの期間にしようという決断をするときに、開講期間が1年間であることはプラスでしたか?

そうですね、もし2年だったら、選択できてなったと思います。全日制ということもあって、金銭的な面も厳しくなっていたと思います。説明会に参加後はすぐに願書を出したような流れです。

ー入学してから数か月を過ごしてみて、どんなことを感じていますか?(註:インタビューは6月下旬におこないました)

まず、年齢層の幅広さに驚きました。年齢もバックグラウンドも全然違う、こんなに幅広い層の方がいるというところが想像と違いましたね。20~30代前半がメインで、私のような、転職を経験している30代後半は年長者になるのではと思っていたので。

ーそうですね、関場さんはちょうど真ん中くらいですよね。他にはいい意味でも悪い意味でも、ギャップがあったことなどありましたか?

学校のほ場になっている農地が、震災以来ずっと耕作されていなかったところというところもあって、ある程度開校前に整備は進められていたものの、まだまだ作業が残っていて(笑)。第一期生ということもあって、ある程度の立ち上げ作業は想像していましたが、予想以上にヘヴィーな作業だったなと。開拓から始まるという第一期生ならではの、なかなかできないいい経験ができました。

2023年秋頃のほ場予定地。
2024年5月上旬のようす。畑づくりが進み、栽培が始まりました。

ーそこから今整備が進んで、作物を育てて…事務局としてはその変化も感慨深いものがあります。そんな状態から、野菜が続々と育ち、収穫したお野菜の販売会が始められるようになりましたね。

小高区役所での販売は、役所の昼休みに行わせていただいているので、職員の方中心に購入していただきました。作ったものを購入していただいて嬉しかったです。今後もどんどん販路を拡大していき、経験を積んでいきたいです。

ー以前は水稲がメインでブロッコリーとたまねぎを経験されていたということですが、就農後に作りたい品目はありますか?

水稲はやりたいと思っているので、米のほかにも複合経営をやっている農業法人さんにまずはお世話になりたいと考えています。作物としてはまだ決めていないですが、ビニールハウスで栽培管理ができるものにいろいろと挑戦してみたいですね。あとは、自分で畑を借りて、自主研究と言いますか、マニアックな品目もやってみたいと思います。薬草とか、漢方薬といったものに興味があります。

ー薬草や漢方薬! また新しい扉が開きそうですね。最後に、今までの講義で一番印象に残っているものや、より興味がわいた講義はありますか?

座学の講義ですが、石原北斗先生(アグリイノベーション大学校 学長)の農業技術の講義ですね。農業学校に通ったことがない自分としては、知識としてかなり情報量が多くて、濃密で、刺激的でした。理解がまだ追いついていないので、しっかり復習して深めて、実践していきたいです。


第一期生インタビュー#2
関場 翔(せきば しょう)さん
福島市出身/30代。ホテル業や市役所勤務を経て農業界へ。卒業後は農業に従事しながら、田舎暮らしの「なんかいい」を体感できる農家民泊を構想。


▼△関場さん的、南相馬ぐらしのとっておきの1枚△▼

鹿島区の烏崎海岸です。気分転換したい時によく行く場所。

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