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第12章 1949年8月、釧路ではどんなイベントがあったか?

1.はじめに

 1949年8月に笠置シヅ子は北海道各地を公演にまわっている。その動きは、道新各地方版などを追うことにより、以下の通りだったことが判明した。
 
 8月1日まで…東京有楽座でエノケン劇団公演。
 8月15日、17日…小樽電気館で公演。
 8月23日~26日…旭川国民劇場で公演。
 8月27日~30日…札幌松竹座で公演。
 9月1日…札幌松竹座で公演(東邦生命主催)。
 9月2日~5日…函館公楽映画劇場で公演。
 
 1949年に笠置シヅ子が書いたというサインが老舗蕎麦店の竹老園に残っている。また、釧路東宝で1949年~1950年頃に笠置シヅ子の公演を見たという証言もある。もし釧路に来たのなら、小樽公演の前か、小樽公演と旭川公演の間だろう。しかし、道新釧路版に釧路公演の証拠はまったく残っていない。では、釧路東宝やその他の劇場でどんなイベントを催していたのだろう。当時の道新釧路版の広告から追ってみよう。

2.各劇場の映画と公演

 道新釧路版に継続して広告を出していたのは、釧路東宝、北映劇場、鳥取劇場、釧路日活、釧路劇場、釧路国民劇場の6館であった。8月5日から22日頃まで、各館がどんなイベントを催していたのか拾い出して、以下に示す。テレビがない時代、どこの館も映画や公演を連日催していた。聞いたこともない映画や出演者ばかりであるが、グーグル検索すると、映画は何らかの記録に残っている。一方で、公演の方はまったくヒットしない人が多い。歴史に名を残さなかったような芸人でもドサ回りで生きていける時代だったのだろう。また、一時期を調べただけであるが、釧路日活や釧路劇場は映画中心、釧路国民劇場は公演中心だったようにみえる。
 
a)釧路東宝
 8月5日…映画『三百六十五夜』。ニュース映画『日本ニュース』『日本スポーツ』。
 8月6日…映画『三百六十五夜』
 8月7日…映画『日本敗れたれど』。映画『深夜の告白』
 8月8日…映画『日本敗れたれど』。映画『深夜の告白』
 8月9日…映画『日本敗れたれど』。映画『深夜の告白』
 8月10日…映画『日本敗れたれど』。映画『深夜の告白』
 8月11日…映画『日本敗れたれど』。映画『深夜の告白』
 8月12日…映画『草原の英雄』
 8月13日…無声映画『刺青判官』、映画説明は伍東宏郎と花園楽団一行。映画『日本敗れたれど』。
 8月14日…無声映画『刺青判官』、映画説明は伍東宏郎と花園楽団一行。映画『日本敗れたれど』。
 8月15日…無声映画『刺青判官』、映画説明は伍東宏郎と花園楽団一行。映画『日本敗れたれど』。
 8月16日…無声映画『刺青判官』、映画説明は伍東宏郎と花園楽団一行。映画『日本敗れたれど』。
 8月17日…映画『拳銃街道』、ニュース映画『昭和24年夏場所大相撲』
 8月18日…映画『拳銃街道』、ニュース映画『昭和24年夏場所大相撲』
 8月19日…映画『拳銃街道』、ニュース映画『昭和24年夏場所大相撲』
 8月20日…映画『グッドバイ』。ニューサッポロタンゴバンド、池田富男と楽団、三笠眞理子、花園染子。
 8月21日…映画『グッドバイ』。ニューサッポロタンゴバンド、池田富男と楽団、三笠眞理子、花園染子。
 8月22日…映画『恋の人魚』

北海道新聞釧路版1949年8月5日付


b)北映劇場

 8月5日…女優大歌舞伎、市川牡丹大一座興行。
 8月6日…女優大歌舞伎、市川牡丹大一座興行。
 8月9日…映画『女の闘ひ』
 8月12日…祭典特別大興行、御門きん子(ジャズ)、澤雅子(ブルース)。
 8月13日…映画『母三人』
 8月14日…映画『母三人』
 8月15日…映画『母三人』
 8月16日…映画『森の石松』
 8月17日…映画『森の石松』
 8月18日…映画『森の石松』
 8月19日…映画『最後に笑ふ男』
 8月20日…映画『最後に笑ふ男』
 
c)鳥取劇場
 8月5日…松竹映画『麗人草』
 8月6日…松竹映画『麗人草』
 8月7日…松竹映画『麗人草』
 8月8日…市川牡丹大一座興行。
 8月9日…映画『結婚狂時代』
 8月10日…映画『結婚狂時代』
 8月11日…映画『結婚狂時代』
 8月12日…映画『森の石松』
 8月13日…お盆興行。御門きん子(ジャズ)、澤雅子(ブルース)。
 8月14日…松竹会女流浪曲大会。寿々木若子、春日井梅花。
 8月15日…浜田喜一(民謡)、井上喜美栄(民謡新舞踊)、函青園子。
 8月16日…映画『我が生涯の輝ける日』
 8月17日…映画『我が生涯の輝ける日』
 8月19日…映画『魔の口紅』
 8月20日…辰巳吾朗劇団、宮城一子・原ひろを共演、『死を越ゆる女』。
 8月21日…辰巳吾朗劇団、宮城一子・原ひろを共演、『死を越ゆる女』。

北海道新聞釧路版1949年8月12日付


d)釧路日活

 8月5日…映画『失恋四人男』
 8月6日…映画『高原児』
 8月7日…映画『高原児』
 8月8日…映画『高原児』
 8月9日…映画『高原児』
 8月11日…映画『青きダニューブの夢』
 8月12日…映画『凸凹探偵の巻』
 8月13日…映画『青きダニューブの夢』
 8月16日…映画『凸凹探偵の巻』
 8月17日…映画『凸凹探偵の巻』
 8月19日…映画『女性No.1』
 8月20日…映画『女性No.1』
 
e)釧路劇場
 8月5日…映画『白虎』。各社ニュースの『ナイトショー』。
 8月6日…映画『白虎』。各社ニュースの『ナイトショー』。
 8月7日…映画『どぶろくの辰』。
 8月8日…映画『どぶろくの辰』。
 8月9日…映画『どぶろくの辰』。各社ニュースの『ナイトショー』。
 8月10日…映画『四谷怪談』。映画『三つの真珠』。
 8月11日…映画『四谷怪談』。映画『三つの真珠』。
 8月12日…映画『四谷怪談』。映画『三つの真珠』。
 8月13日…映画『四谷怪談』。映画『三つの真珠』。
 8月16日…映画『大江戸七変化』
 8月17日…映画『嘆きの女王』
 8月19日…映画『大江戸七変化』、『嘆きの女王』
 8月20日…映画『大江戸七変化』、『嘆きの女王』
 8月21日…映画『大江戸七変化』、『嘆きの女王』
 8月23日…第4回オール釧路芸能コンクール大会
 
f)釧路国民劇場
 8月5日…ジャズプレイヤー御門きん子公演
 8月6日…映画『戦慄を追う人々』
 8月9日…片岡延若大一座、開館3周年記念披露大歌舞伎
 8月10日…片岡延若大一座、開館3周年記念披露大歌舞伎
 8月11日…片岡延若大一座、開館3周年記念披露大歌舞伎
 8月12日…評判の実演、勘菊座。女剣士室町澄子とその一党。
 8月13日…評判の実演、勘菊座。女剣士室町澄子とその一党。
 8月14日…評判の実演、勘菊座。女剣士室町澄子とその一党。
 8月16日…演劇座公演、怪談夜譚『呪いのお守』
 8月17日…演劇座公演、怪談夜譚『呪いのお守』
 8月18日…片岡延若一座、狂言『四谷怪談』。
 8月19日…片岡延若一座、狂言『四谷怪談』。
 8月20日…江戸川劇団、浜田喜一、各地民謡・漫才・舞踊。
 8月21日…楽団ニューポープ、りべらるサンマーショー。

北海道新聞釧路版1949年8月20日付


3.笠置シヅ子が来た可能性は?

 笠置シヅ子が釧路公演に来ていたなら、8月14日以前か18日~22日のいずれかだったはずだ。しかし、証言の残っている釧路東宝はもちろん他館でも、笠置シヅ子が来ることができた日にはおおむね何らかの催しを行っている。ただ、これ以外の劇場で公演していたなら、新聞広告に載ることはない。たとえば、十條製紙娯楽場は新聞広告を出していない。

 笠置シヅ子本人もしくはマネージャーやプロダクションの日誌、観客として公演を見たという人の日記、当時のチケットやポスター、日付入りの写真など、新聞以外の資料が出てこなければ、これ以上の追求は難しそうだ。
 

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