第11章 1952年、笠置シヅ子の北海道巡業
1.はじめに
笠置シヅ子は1952年にも北海道に来ている。北海道新聞釧路支社版と札幌本社版に広告が載っていたことから、その事実は分かった。「第6章 続 笠置シヅ子は釧路に来ていた」に書いた通り、この年、笠置シヅ子は6月19日に釧路、22日から24日に札幌で公演している。しかし、1953年とおなじく、道立図書館の改装工事のため、函館支社版や旭川支社版のマイクロフィルムの閲覧ができなかった。12月1日に閲覧制限が解除され、両支社版を確認したところ、さらに詳しい足取りが掴めた。
2.函館、室蘭、旭川、帯広でも公演
1952年6月7日付の道新函館版に「各地で人気爆発 空前の2大合同実演 日本一!ヴギの女王 笠置シヅ子 キングのNo1! 津村謙」という広告が出ている。公楽映画劇場で7日から10日までの4日間連続、昼夜3回の興行である。1回目は11時半、2回目は15時、3回目は18時半からで、1回目と2回目は通し、3回目は入れ替え制、前売券は200円だった。2人のほか、小川静江、山本照子、西田滋子、西村正美、名和太郎、林伊佐緒、大國阿子、三條町子、若原一郎、益田孝舞踏団らが出演した。明治製菓から、津村謙一行のサイン入りボールと明治キャラメルのプレゼントもあった。
10日の函館公演が終わると、笠置シヅ子は室蘭に移動した。6月11日付の道新室蘭版に「豪華実演と映画 笠置シヅ子 映画モナリザの微笑」という広告が載っている。室蘭中央映画劇場での公演だった。共演者やチケット代、時間などは分からない。12日付にも同じ広告が出ている。13日には掲載されていないので、2日間の興行だったようだ。
6月12日付の旭川版に「ブギの女王久々の豪華実演」という広告が載っている。「15日大公開 実演と映画 国劇」とある。国劇は国民劇場の略である。14日付、15日付、17日付、18日付にも広告が出ており、昼興行は10時開場、夜興行は19時半開場であったことが分かる。18日の広告に本日最終とは書いていないが、国劇では19日から「カーネギーホール」という映画の上映が始まっており、笠置シヅ子も19日には釧路公演を行っているため、旭川公演は15日から18日までだったはずだ。
19日の釧路劇場での公演の前後に十條製紙娯楽場でも公演したらしいが、日付が不明だった。旭川に18日までいたのだから、十條製紙の公演は20日だったと思われる。それが終わり、22日の札幌公演までのあいだはどこにいたのか、これまで分からなかったが、札幌版を見直していると、21日付に「21日、1日限り、昼1時、夜6時 ブギの女王が豪華舞台ひらく! 笠置シヅ子 楽団クラックスタア」という広告が出ていた。会場は帯広の十勝会館、入場料は大人250円、小学生100円、前売券200円だった。
3.1952年の笠置シヅ子の動き
道新の各社版から判明した1952年の笠置シヅ子の動きをまとめると、以下となる。
6月7日~10日…函館公演。公楽映画劇場。昼夜3回興行。津村謙との合同公演。
6月11日~12日…室蘭公演。室蘭中央映画劇場。
6月15日~18日…旭川公演。国民劇場。昼夜興行。
6月19日…釧路公演。釧路劇場。昼夜興行。
6月20日…釧路公演。十條製紙娯楽場。
6月21日…帯広公演。十勝会館。昼夜興行。
6月22日~24日…札幌公演。大映劇場。昼夜4回興行。
こうやって並べると、この年も休むことなく北海道をまわったらしい。13日と14日が不明だが、室蘭から旭川のあいだにある大きな町、たとえば苫小牧や夕張、あるいはその他の産炭地で公演したのではないか。初日の函館から最終日の札幌まで18日間の長丁場であった。