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対岸へ
8月の週末
今年こそは子供の頃のように大自然に抱かれ泳ぎたいと意気込んでいた。そこに思いがけずやって来たチャンス。この数年思い続けていた願いが、思いがけず叶うことになったのだ。
川底が透けて見える清流
10年ぶりの水着
灼熱の太陽の中
川へと足を運ぶ
真夏だと思えないような冷たい水
「あぁ〜」
覚えていたこの感覚!
何年経っても一瞬であの頃に戻れる
不思議。目を瞑り、五感を研ぎ澄ます。
川の流れ
鳥の囀り
冷たいという皮膚感覚
草の香り
身体の全てが緩む感覚
目を開け太陽の光に眩む
それと同時にどこまでも澄み渡る川底の石と川面の青緑色にもう一度心奪われる。
思い切って、身体全部を水に浸け、足元を泳ぐ魚と連れにつられて得意ではない「泳ぐ」をがんばってみることにした。
だんだんと泳ぐということを思い出す。
足がつかない対岸まで泳ぐことを挑戦してみることにした。
大きく、大きく、腕を開き
川面を両手で漕ぐ
川の流れに流されながらも
大きく、大きく、大きく
身体全部を使って水の中を進む
もう少し、あと少しで岩に手が届く
渡り切った達成感
空を見上げる
空が近くなった気がした
岩の上に腰掛け
しばし対岸をたのしむ
帰りの泳ぎは、此処に渡って来た時よりも軽やかで、満たされた時間だった。