【ドラマ感想】刑務所のルールブック 最終話まで
「刑務所は人生のどん底だ」
劇中でハニャンが口にするセリフ。
そしてジェヒョクも何度も口にする。
「刑務所にいるんだ。どん底だ」と。
刑務所には多くの人が縁がなく人生を終え、縁がない方が「正解」だ。
間違いない。
犯罪を犯し、罪を悔い改める人が行く場所なのだから。
その生活をいかに淡々と、でも、ユーモアを交え、時に温かみもある生活の一つとして描くか…。
それはとても難しいことだと思う。
実際には、このドラマのように楽しいことなんて一つもないかもしれない。
こんなにもいい人たちばかりじゃないかもしれない。
刑務官も人情味の溢れた人ばかりじゃないかもしれない。
受刑者も気の合わない人間ばかりかもしれない。
それも一つとして、淡々とジェヒョクの人生の一部として
服役していた一年間を追った物語。
新しいヒーロー像ジェヒョクの魅力
普段は「ノロマ」や「カメ」と言われ、反応の鈍いジェヒョクだが
一度キレると何をしでかすかわからない。
鈍そうに見えて、それでいて、弟分にもなれるしアニキ分にもなれる強かさがある。
敵対し続ける人間をどうするか、いつまでもやり合っていても相手もひかない、
距離感を取れない、
そうなった時に、じゃあ、自分の側に引き込めばいい、と味方につけてしまったり、特別扱いをしたがる人間に、「ここまでは」と甘えてみせたり、
何とも人を動かすのが上手い。
それでいて、自分が一番単純で人に(信頼している人間なら)動かされてしまう、一つ一つが魅力的で愛してやまないキャラクターの一つだった。
彼が過ごした、接した一人一人が彼に魅力を感じ、愛してしまい、彼の蒔いた種がやがて花となり、実となって回り回って彼を助ける。
彼の通った道は、いずれ花道となって彼を照らす。
じんわりと心に響くラストだった。
これが現実なのかなと思ったこと
やりきれない事情を抱えた人間がたくさんいて、
「なぜその罪を犯したか」に至るに、同情を禁じ得ない人もいる。
そんな人生を歩んでいるような、どん底にいる人もいる。
どん底の生活になってしまった過程が、自分自身によるもので、
やはり報われないままになってしまう人もいる。
逆に、悔い改める20年という年月を過ごしてきたミンチョルさんのように、
孤独だった人生に、一つの光明が見え、やっと救いのある人生が過ごせる人もいる。
誰にでも甘えて、誰にでも悪態をついては、ユ大尉(チョンヘイン)と取っ組み合いの喧嘩を繰り返す、でも、なぜか憎めなくていつもジェヒョクの膝枕で寝ていた愛すべきキャラ・ハニャンは、必死の思いで薬を断ち、出所の日を迎えたというのに、そこへ迎えに来ていた薬の売人による誘惑に負けて、また捕まってしまう。すぐそばの店で家族と恋人が待っていたと言うのに。私は後でこのエピソードが何らか回収されるのかと思っていたら、ハニャンのエピソードはそこまでとなっていて、何とも後味の悪さを感じた。どうしてだろう、と。みんな幸せになってほしいのに、と。
でも、これがリアルなんだろうか。
麻薬というものを断ち切れないニュースは後を絶たず、繰り返し逮捕されている。
それが現実なんだろうか。
ハニャンも言っていた。
「始めは一回だけのつもりだった」と。
「遊びのつもりだった」と。
自分の意思で必死に耐えているように見えたハニャンが薬と離れていられたのは、
刑務所内での皆の支えがあったからで、
一人になった瞬間に貫き通せるものではなかったのかもしれない。
だからこそ、一度でも手を出したら終わりで、そこから立ち直るのは一人では無理だ、ということなんだろうか。
と、自分なりに解釈して、ハニャンがまた陥ってしまった「どん底」について、
自分を納得させている。
アベンジャーズのような
「この部屋はみんなすごい人たちばかりだ。アベンジャーズだ。」と言っているシーンがあったが、
ドラマに出てくる脇役の人たちが私個人的にアベンジャーズのようだった。
ハニャンのお母さんは「椿の花咲く頃」や「賢い医師生活」「悪霊狩猟団カウンターズ」のヨムヘランさん。名脇役。
ジェヒョクが「兄貴」と慕う弁護士に、「ヴィンチェンツォ」や「梨泰院クラス」の、これまた名脇役、ユ・ジェミョンさん
ユ大尉の年の離れたお兄さんに、「賢い医師生活」でジュンワンの愛すべき部下・ジェハクを演じていたチョンムンソンさん。
ちっとも融通の効かないナ課長に、「賢い医師生活」で弁護士として出演していたパクヒョンスさん。
ハニャンの恋人役には、「賢い医師生活」シーズン1にてソンファに恋心を寄せていたレジデントを演じていたキムジュンハンさん。
などなど、挙げればキリがない。「賢い医師生活」で観た顔がたくさん出てきて一人興奮しながらみる。(本当は順番が逆だけれど)
楽しみ方の色々あった「刑務所のルールブック」。「賢い医師生活」を楽しんだものとしてももちろん、作品そのものも深く、考えさせられ、自分の足元を見つめ直し、そして勇気づけられるドラマだった。