【ドラマ感想】まぶしくて
途中何度か観るのを辞めようかな、と思った。
息苦しくて。
けれど、観ておかないといけない気がして、
止められなかった。
あらすじ
キム・ヘジャは幼い頃、海辺で時計を拾った。
それは時間を戻すことのできる、不思議な時計。
ヘジャは楽しくて何度も時間を巻き戻した。
しかし何度も使ううちに、戻した時間の分だけ
年老いることが判明する。
ヘジャは時計を使うことをやめることにした。
時はたち、25歳のヘジャはアナウンサーを目指しているものの、
受からずに、自分が何をやれるかわからないまま、
実家で肩身の狭い思いをして暮らしていた。
そんな中、記者を目指す青年イ・ジュナと出会う。
二人は少しずつ惹かれあっていく。
しかし、ある日、ヘジャの父親が交通事故にあい、
亡くなってしまう。
ヘジャは父親を助けるために、何度も何度も時間を巻き戻す。
父親の命は救われたが、何度も繰り返し時間を巻き戻したせいか、
ヘジャは目覚めると70を過ぎたおばあさんになってしまった…。
ある日突然老いるということ
朝目が覚めたら、70を過ぎたおばあさんになっていたヘジャ。
絶望し、何も手につかなくなる。
鏡に映る自分に耐えられず、鏡を割り、
食べ物は喉を通らない。
突然老いた娘に両親は戸惑い、
そんな両親を見てまた絶望する。
親に迷惑をかけてばかりではいけない、
アナウンサーを目指すのをやめて、さて自分は何をするべきか…と
将来を憂いていた矢先に
その将来全てが失われる。
これまで元気に走り回っていた体が
少し歩くだけで息切れする。
夜まで遊んでいても平気だったのに、
9時には眠くなり、朝早くに目が覚める。
髪は薄くなり、目も見えない。
自分の体は一体どうなってしまったのか。
そして、一方で恋の相手のジュナも
一緒に暮らしていたお婆さんを突然失うことで
体は老いずとも心が年老いてしまう。
自分の人生に希望を見出せず、自暴自棄になる。
見ていて、苦しくなる展開の連続なのだ。
おまけに時計は壊れてしまい、ヘジャの手を離れる。
しかも、父親の命を救った代償に自分は年老いて、
父親が事故の後遺症で膝を悪くし、
以前の優しさを失っている様子を見るにつけて、
また時間を戻して、今度また何かを失ったら生きていけない、と
考えたヘジャはこのまま生きることを選ぶ。
一体、どこに希望を見出すのか…
明るい登場人物
とはいえ、このドラマの中で何度も笑わせてくれる存在がいる。
ヘジャのお兄ちゃん。ヨンスだ。
仕事にも就かず家でゴロゴロして、肉を食べたいと言ってはお母さんに殴られる、
情けないお兄ちゃんなのだが、
このお兄ちゃんのおかげで、アナウンサーになれずにいるヘジャも
大きな顔をしていられる部分は否めない。
突然年老いた妹に戸惑いながらも
いち早く妹を受け入れて、
自身の動画チャンネルに妹を登場させてお金を
稼ごうとする。
妹に殴られながらも、憎めないお兄ちゃん。
そして、ヘジャ自身が誰よりも明るい。
25歳のヘジャも明るく、前向きで、
心を閉ざしがちなジュナを慰めてくれる。
酒浸りの父親のせいで、街を転々としてきたジュナだが、
家族に愛されてまっすぐ育ってきたヘジャの
「自分を大切にしてほしい」というメッセージに心打たれ、
惹かれていく。
年老いたヘジャもまた、時がたち気持ちを入れ替えると
持ち前の明るさを発揮し始める。
戸惑い続ける両親を気遣い、慰め続ける。
膝の悪い父親にお弁当を作り、
美容院で一生懸命働く母親の手伝いをする。
過ぎた時間は取り戻せない
物語は、終盤これまでの展開を覆す。
そして、結局過ぎた時間は決して取り戻せない、と悟る。
けれども、過ぎていく時間の中で
ある瞬間は輝き、幸せな時間だったのだと
気がつき、
不幸だと思っていた過去も
未来によって癒されていく。
その一瞬一瞬が大切で、幸せだったのだと。
ドラマの最後のヘジャからのメッセージが
とても心に沁み入る。
私の人生は時には不幸だったし
時には幸せでした
人生は単なる夢に過ぎないと言うけれど
それでも生きられて
よかったです
朝の刺すような冷たい空気
花が咲く前に吹く甘い風
夕暮れ時に漂う夕焼けの匂い
どの日もまぶしく輝いていました
今の生活が苦しいあなた
この世に生まれた以上
その全てを楽しむ資格があります
平凡な1日が過ぎて
また平凡な1日が訪れても
人生には価値があります
後悔ばかりの過去や
不安だらけの未来のせいで
今を台なしにしないでください
今日を生きてください
まばゆいほどに
あなたにはその資格があります
誰かの母親であり姉妹であり
娘でありそして…
私だった あなたたちへ
とはいえ、心はいつも自由
過ぎた時間を戻すことはできない。
体の老いは止められない。
けれど、心はいつまでも若く、老いることはなく、
心は何にも縛られない。
それは、時間にさえも…
やり残したこと、やりたかったこと、
望むこと、心は自由に羽ばたき、叶えてくれる。
ヘジャは時を超えて、ジュナを愛し、想い、大切にし、
彼を幸せにしたいと願い続けた。
25歳のヘジャを「知ってるワイフ」のハン・ジミンが明るく、
力強く演じ、
年老いたヘジャをキム・ヘジャさんが優しく演じる。
キム・ヘジャさん!
女優さんの名前をそのまま使っている!なんと!
そこに物語の核が詰まっていたとは…
きっと、彼女に捧げる物語なのかな。
彼女の優しい眼差し。
彼女のメッセージがたくさん詰まっている。