
『てんとう虫とオシッコ?』の巻
小学生の頃私の住んでいた所は住宅街で、駅に行くのにバスに乗らなくちゃならなかったし、家から歩いてコンビニやスーパーに行った記憶も無い。今ならきっと不便だと感じるが、当時は幼かったのでそう感じたことは一度もなかった。むしろ、そういったものの代わりに公園や畑、川が沢山あり自然に囲まれた場所を楽しんでいた。
学校帰りには友達と道端に咲いているツツジを摘んで吸い、「これ美味しいアタリだ」と三時のおやつ代わりに味わっていた。そんな緑の多いところだったので自然と蝶や昆虫などが集まってくるのか、よく見かけた。
ある日の学校帰り、てんとう虫が飛んできた。そのてんとう虫は私の衣服に止まり、友達とはしゃぎながらてんとう虫を間近で観察していた。
「水玉模様で可愛いやんな、てんとう虫って」
「そうやな。小さいし赤くて可愛い」
「こんなに小さくても飛べるんやもんな」
「凄いな。大きかったら怖かったかもしれへんから小さくて良かったわ」
と坂道を友達と下っていた。私は衣服に止まっているてんとう虫をもっとよく見てみたくて手で掴み、手のひらに乗せた。
「くつろいでるな、私の事好きなんかな」
「そうなんちゃう」
「へへへ、可愛いなー」
「ねぇ、なんか手のひらについてんで」
「え?てんとう虫やろ?」
「え、違う、てんとう虫の傍。なんかある」
「え?あ、ほんまや。なんか濡れてるな…黄色い……えっ、オシッコ!!」
「え!?オシッコ!?いやや!近づかんといてー」
そう言い残して友達は笑い声の混じった悲鳴のようなものを響かせながら家へ走り去り私は可愛いと思っていたてんとう虫にオシッコされた上、その手のひらを見るともうてんとう虫は飛びさり居なくなっており、手のひらにされたオシッコを眺めながら複雑な気分で家に帰ることになったのだ。
みなみ まる
(先程調べたらてんとう虫から出る黄色い液体はオシッコではなく、血液らしい。危険を感じると膜を破って臭くて苦い血液を出し「美味しくないよ」というアピールをしていると知り、衣服から引き剥がして手のひらに乗せたのをなんだか申し訳なくなった)