ノーズロ
みつきのお友だち、ナツコとカフェでおしゃべり。
幼なじみ、ていうか腐れ縁? 的な、みつきの黒歴史を知る唯一の存在。
田舎から一緒に上京して、同じ大学に進学。付き合いを絶やしたことはない。同じく独身。
昔からベリーショートで、遠くから見るとオードリー・ヘプバーンみたいだから「ヘプちゃん」て呼んでる。で、失恋したときに限って髪を伸ばすという、ちょっぴり変わった人です。
新聞奨学生で学費、生活費を稼いだ頑張り屋さん。大学卒業後は新聞社に入って、校閲部、外回りを経て、1年ほど前から記事に見出しをつけて紙面をレイアウトする仕事をしている。
ナツコ(以下ナ)「整理部って言うんだけど、変なスラング? ってのが、たくさんあるの。
『泣き別れ』『飛び降り』『飛び越し』『両流れ』ってのは、読んでいて記事がどこへ流れるのか、読者の目線が戸惑っちゃう組み方。
『腹切り』は紙面の横罫線が右から左へ、縦罫線や段見出し、写真にぶつからず、すーっと通ってしまう組み方。
『尻もち』『煙突』『横並び』は、段見出しを紙面下部にある広告のすぐ上に配置したり、同じ段数の見出しが上下や左右で並んだりすること。
いずれもやってはいけないことなんだ。
話、むずかった?」
みつき(以下み)「若干」
ナ「ま、読者は知らなくてもいいことだからね。一番おかしいというか、噴飯ものなのが『ノーズロ』」
み「?」
ナ「ノー・ズロース。ノー・パンティーよ」
み「なにそれ」
ナ「記事下広告が落ちて、すべて記事で埋まっている紙面のこと。つまり広告、ズロースがないからノーズロ。お下品でしょ」
み「かなりね」
ナ「でしょう。『きょうはノーズロ!』なんて大声が職場で飛び交うのよ。
広告の代わりに自社の出版物やイベントの広告を入れる、って手もあるんだけど、そればっかりじゃみっともないんで、ノーズロになることもあるわけよ。
こんなページに当たると、しんどいわよ。
締切時間が迫るなか、原稿が殺到する・あるいはなかなか出てこない、見出しに悩む、レイアウトが決まらない、そんな時に限ってデスクが大量の赤字を入れてくる、なんてドタバタになって、オシッコちびりそうになるわよ」
み「ヘプちゃんも、苦労してるんだね」
ナ「まあ、好きで入った業界だからやってられるんだけどね。
それに最近は記事を四角にまとめてレイアウトを単純化するページも増えているから、楽になった面もあるにはある。
でも、あのヒリヒリ感は毎度毎度変わらないんだよねぇ。
あ、整いました。
『きょうはノーズロ(ノーパン)』とかけて、
童貞のお相手ととく。
その心は、ワクワク、じゃなくってー、ハラハラドキドキ。
なーんてね」
み「あなたもお下品よ」
ナ「ギャハハのハ」
※みつきの恥ずかしい黒歴史は、「みつきの微笑みがえし 第一部」第一話を読んでね。R18なの。
https://note.com/minamihanashima/m/ma94ecd063805
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