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春巻にケチャップ

ちょっと前まで、空を見れば鉛色の絨毯に鬱々としていたけれど、立春を過ぎた今、だいぶ日は伸びて、朝の冷たい空気や足元の霜柱さえ愛でる余裕ぶり。時は疾く流れ、うっかりするとお彼岸も過ぎてしまいそう。

ああ、お彼岸といえば。しばらく実家のお墓参りをしていない。

田舎のお墓参りはくたびれる。行く場所が多いし、それぞれ遠い。我が家の場合、祖父の墓、本家の墓、親戚の墓、ご近所で付き合いの深い家の墓……墓地として4ヶ所、墓所としては6ヶ所お参りしなくてはならない。(大変だけども、今では文化・風習として価値あることだと思っているので、私が元気に生きてるうちは続けたいと思う。この話はいつか別の機会に……)

家族7人総出でお墓参りをする日は、普段車庫で眠っている白のデリカが出動する。3列シート標準装備のファミリーカー。運転手は父。車酔いしやすい末の妹は助手席。あとは適当だけど、目の悪い祖母の手を引いて最後に乗り降りするのはだいたい私だった。最初は別に気にも留めなかったけど、思春期の頃はちょっと嫌だったな。(そのうち祖母はほぼ失明して、一緒に出かける機会そのものがなくなった。ちょっと今では後悔)

行きがけに花を買って市内をぐるりと走り、墓所についたら、草をむしったり、水を撒いたり、墓石を拭いたり、と、周辺を綺麗にしてから、線香と供物を並べて手を合わせる。うっかり帽子を脱ぎ忘れると祖母や父に怒られたっけ。(そんな父も、歳をとって寛容になったのか、あるいは面倒になったのか、線香の火に息を吹きかけて消す始末……おいコラァ!!とは思っても言わない)子供時代、故人に思い入れのない私にはただの苦行でしかなかった。

午前中いっぱいかけて、急な階段のあるお寺とか、舗装されてない砂利道・泥道の先の山奥とかのダンジョンに赴き、お参りを済ませた子供ミトさんのライフはゼロ寸前。お腹ペコリーヌ。頭の中はもう、お昼ご飯のことしか考えられない。

こんな時、一応、両親から「どこへ行こうか」と尋ねられるけど、だいたい行き先はこのお店だった。

華園(カエン):福島県相馬市にある中華料理店。JR常磐線・相馬駅から徒歩6分。駐車場は狭い。店内はちょっと狭いように見えて隠し部屋(※筆者の主観)があるので大規模宴会もいけるらしい。天井のカドッコに小さなテレビが設置してある。漫画・雑誌はそこそこ豊富。
〒976-0042 福島県相馬市中村1丁目3−1

私が小さい頃から今も、少なくとも30年は営業してる。いや、子供時代の当時ですら「古い店だな」と思っていたのだから、もっと長いかもしれない。星は5点満点中3点台と目立って人気があるわけじゃないけれど、ここの「あんかけ焼きそば」は私のソウルフードと言ってもいい。

そう、あんかけ焼きそば……華園にはたくさんメニューがあるし、店頭のディスプレイはどれも美味しそうなんだけど、どうしてもあんかけ焼きそばしか選べない。届いた瞬間は熱すぎて舌を火傷するし、麺も固くてくっついてるし油っこいんだけど、注文を繰り返してしまう味なのだ。程よく水っぽいウズラの卵とか、程よくシャキシャキの筍とか、コリコリのキクラゲとか、なんか全てが調和している、何故か。野菜嫌いの子供ミトさんが葉物や人参を食べてしまうような魅力がある。

で、段々と麺がふやけて食感が変わっていくから飽きないのね。食べ終わる頃には満腹。大皿一枚ペロリーヌ。ごちそうさま。

この焼きそばを食べられれば、午前中の修行に似たお墓参りも、まあ、また行ってあげてもいいかと思うのだ。

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あ! あと、華園で外せないのが、春巻。

この店では、春巻の付け合わせに、ケチャップ皿を用意する

だから私は春巻にはケチャップをつけつもんだと思って育ってきた。それは成長過程のあらゆる場面で否定されてきたが、今でも春巻に一番合う調味料はケチャップだと思っている。

ちなみにtwitterでのアンケート結果はこちら。

合うよ、春巻にケチャップ。みんな試してみて!!

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「思い出の店」について考えてみたとき、パッと思いついたのが華園でした。ネット検索したらまだ生きてたので本当によかったε-(´∀`*)ホッ 
残念ながら観光協会の紹介には入っていないけれど、相馬市はうまいもんだらけです。諸々落ち着いたら、ぜひいらしてください。

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トップ画像はいらすとやさんよりお借りしたものを加工して作成しました。

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