花の定期便とずる休み
とうとうずる休みをしてしまった。
なんとなく行きたくないなーが積み重なって
でも休む理由がなかったから
騙し騙しやってきたけど
休むきっかけはひょんなことからできた。
家から出にくくなった期間にちょっとでも気分を上げようと始めたお花の定期便。
ポストに届くタイプのものだったのだが
家のマンションのポストが規定より小さかったみたいで
花の代わりに不在者票が投函されていた。
その再配達を仕事に間に合う時間にしてたのに
家を出るギリギリの時間になってもまだ届かない。
再配達の時間に遅れてるのは私のせいじゃないから家を出ても良かったのだが
生花だからできる限り早く受けとって花瓶に入れてあげたいし
また再配達を依頼するのもなんだか気が引ける。
あと5分。
そこまで待っても来なかったら、電車に間に合わないし今日は休んでしまおうか。
そんな賭けをしながらそわそわして待っていたのに、とうとう花は届かない。
迷ったものの、私は思いきって携帯の連絡先から会社の番号にタッチした。
3コール目で繋がると、できる限り体調が悪い演技をして休むことを申し訳なさそうに伝える。
電話しながらバレてないかな、と鼓動が少し早くなるのを感じていたのに
あっけらかんに「あら、こっちは大丈夫だからゆっくり休んで」と言われてしまった。
もう一度だけ謝って電話を切る。
ちょっとした罪悪感を感じたけど
休むことが確定してしまったら
なんだ、こんなもんかと気が抜けた。
そして、ちょうど乗る予定だった電車の時間に家のチャイムが鳴った。
何も知らない配達のお兄さんは
「すみません、遅れてしまって」と、さらりと謝ると、次の配達も時間を押しているのか颯爽と階段を降りていった。
そういえば、この前ニュースで配達が増えたことが取り上げられていたっけな。
受け取った箱をリビングに持って行って、丁寧に箱を開けると、
中には自分では選べないセンスの良い色とりどりの花が綺麗に並んでいた。
名前の知らない花々を一本一本取り出しては、なんとなく綺麗に見えるようにまとめて、水を張った花瓶に移す。
せっかく良い天気だからベランダの窓を開けてそこに花瓶を置いてみた。
いつもなら家にいない時間に流れるワイドショーの音。
電車の音。
道端で話すおばちゃんの声。
ちょっぴり新鮮で、なんだか特別な時間も運んできてくれた気がした。
たまには、こんなずる休みも悪くない。
窓から吹き込む風に花が揺れて、そうだね、と言ってくれた気がした。