選挙結果から国民は現政権の退陣と保守連立新政権を要求
2024年 10月 31日
社会資本研究所
南 洋史郎
10月27日の第50回衆議院の総選挙結果は次の通りとなった。 自民191、公明24、立民148、維新38、共産8、国民28、れいわ9、社民1、参政3、保守3、無所属12の総計465議席。 与党の自公で215となり、過半数233に18議席不足する数字となった。
この国民の投票意思の結果は明白である。 現政権の石破首相と森山幹事長は即時退陣、速やかに国民から人気の新首相のもとで、自公と保守系の政党が組み、連立政権を樹立せよという審判が下ったのである。 国民は左派リベラル色の強い自民党でなく、リアリズムで政治をおこなう保守中道の自民党を望んでいる。 その証拠に非公認で無所属で戦った保守系の旧清和会重鎮の
萩生田、世耕両議員は当選、リベラル系の旧二階派重鎮の武田議員は落選している。
今回の衆議院選挙の自民敗北に対する石破首相や森山幹事長の責任は相当に重い。 9月の総裁選で解散しないと明言した石破首相が、総裁選出の途端に首相就任前に解散、総選挙を公表、選挙前に収支報告書不記載の問題で処分を受けた議員に対し、二重懲罰的な比例での重複立候補を認めない判断を下した。 さらに投票直前に非公認の議員へ勝手に2千万円を振り込み、必死
で戦っている候補の印象を悪くし落選を促す行動までとっている。 極め付きは、選挙前に自公で過半数維持を明言、約束していた首相が、総選挙で過半数割れとなった際に即時退陣を表明せず、責任を果たすための続投を発言したことである。
過半数割れの結果そのものが、国民の意思として石破首相と森山幹事長の退陣を要求するものであり、続投という話は、国民意思と無関係に政権を続けるという意味となり、民主主義を否定する独裁的言動なのである。 この独裁発言は、権威主義のロシアや中国、北朝鮮の政治主導者と同じであり、民主主義を標榜する日本では、さすがにこのような国民意思を無視する続投発言
は許されない。 当然ながら、自民党内では次の新首相の選出をおこない、現行の首相と幹事長の退任時期をはかる手続きが進められているとは思うが、当然ながら、今までの経緯から9月の総裁選で決選投票に残った高市議員が新総裁、新首相に選ばれるのであろう。
ただ、選挙日から30日以内に開催される首相首班指名がおこなわれる特別国会まで残された時間は限られている。 自民党内で次期総裁、首相に高市議員を選定、自民党議員による参議院と衆議院の両院総会で新首相が決まり、特別国会で首班指名を円滑に受けられるかどうかは、自民党と同じ保守中道の路線を歩んでいる国民民主党との自公国の連立政権を樹立できるかどうか
にかかっている。 国民民主党の玉木党首も、高市首相なら、積極財政や減税で同じ路線で一緒に組みやすいと公言されており、すでに自公国の保守連立政権の樹立は、自民党内の手続きが円滑に進むかどうかの時間の問題だけになっているのであろう。
神の国日本で起こった今回の政治のゴタゴタで日本の保守中道の政治基盤は強まる
今回の一連の政治のゴタゴタは、9月の自民党の異常な総裁選から端を発している。 本来なら、積極財政の高市総裁が選ばれるべき総裁選で、国民からすこぶる不人気であった岸田元首相などの黒幕の暗躍により、天邪鬼(あまのじゃく)にも数々の裏切り発言で有名な石破総裁が選出され、それからは予想された通り、自民党内で様々な問題が起こってきた。 なんと驚いたこ
とに石破首相はいま総選挙をおこなえば、誰が見ても高い確率で自公過半数割れが起こるのに平気で国会の解散を首相就任前に公表している。 国民の目からみれば、自傷自爆的な行為に思えるのであるが、まるで何かの筋書きが読めるドラマのようにひたすら自滅の方向に突き進んでいるのである。
決選投票で総裁選に敗れた高市議員にとっても、今までの自身の政治行動を猛省する良い機会になったことは間違いない。 政策通で理路整然とした説明ができる数少ない有能な政治家であるが、国民目線からは、ここ一番、国民のための政策実現に向け、腹の座った命をはった勝負ができるのかという政治根性については未知数で、その面では不安があった。 ところが、今回の
選挙では一介の議員になってからも、自分に投票しなかった議員や過去に意地悪をした議員へも広い心で快く応援演説に出向く姿が評価されている。 想定通りの選挙敗北で、まさにいま自民党は結党以来、党として自滅するかも知れない危機に遭遇している。 この状況で新たな首相に就任することは、火中の栗を拾うマイナス環境での総裁、首相就任になるが、その一連の判断、
行動を国民や形而(けいじ)上の何ものかがじっとみているのである。 首相になると様々な難問奇問が、これでもかこれでもかと次々と降り注がれる。 今その覚悟が試されているのである。
今の日本が置かれた国際的な政治環境、状況は極めて深刻である。 11月5日になるとおそらく米国はトランプ大統領が選出されるであろう。 米国第一主義のとても厳しい大統領が再び返り咲くことになる。 今までのような利権とカネの甘い政権ではない。 対応によって、韓国文政権の時のように同盟関係の見直しなど日本へも様々な想定外の厳しい要求がされる可能性は極めて高い。 その時にコロコロ言動を変えるような首相が応対したら、その時点で日本は米国から信用を失い、様々な厳しい要求をのまざるを得なくなるのである。 高市首相の応対でこの猛獣のような大統領と理詰めでうまく交渉できれば、日本の国益を守ることにつながるのである。
この時に高市新首相は、今回の一連の政治のゴタゴタで火中の栗を拾う経験が、米国との交渉に役立ったと感じるに違いない。 つまり、外交での相手との交渉では、単なる理詰めは駄目で、良好な人間関係、信頼関係を築くことに腐心すべきという当たり前のことに気づくのである。
今回の政治のゴタゴタそのものが、神の国日本における神の見えざる仕業(しわざ)と感じるのは自分だけであろうか。 その意味では、結果的にこうした厳しい貴重な試練を与えてくれた岸田元首相や石破首相には感謝しないといけないのかも知れない。 こうした様々な身に降りかかる厄災などの森羅万象に動じず、何事も前向きに強く、潔(いさぎよ)く政治に取り組む姿勢がもてれば、首相として国民から頼りにされ、国民が求める保守中道の政治を突き進むことができるのであろう。
特別国会の高市首相の首班指名の前に国民民主党との連立をうまく組む交渉が大事
さて、これから国民民主党とうまく連立を組むためには、積極財政と減税への具体的な対策を練る必要がある。 その時に過去の自民党の政治家の言い訳は、財務省が言うことを聞かないという話であった。 国民民主党の玉木党首も財務省出身であるが、これほど国民を愚弄(ぐろう)する言い訳もない。 冷静に考えてみて欲しい。 仮に財務省が減税に反対し、増税だけを推進
する愚かな省庁でも、税収入に頼らない納得できる財源の仕組みを企画設計し、法律で減税できる社会制度を創出する責任は政権与党の自民党にある。 与党の政治主導がだらしないから国民が苦しむのである。 それを名のある与党の政治家が、財務官僚を増税大魔王のように形容し責任転嫁するのは間違っている。 まず政治家自身が経済をよく勉強し、自分の頭で考え、どうす
れば減税と積極財政ができるのかを考えないといけないのである。
財務省といえども行政機関の一つに過ぎない。 政権与党が国会で消費税を含む新たな減税策を決定すれば、財務省はその政策を粛々(しゅくしゅく)と実施するだけの話である。 万一にも抵抗する官僚がいたら、それは国家への冒涜(ぼうとく)、反逆であり、そこまで頭がおかしい財務官僚はいないと信じたい。 岸田政権の3年間の急激なインフレで生活が苦しくなった国民が急増した。 特に高齢の年金生活者で余裕のない人たちが増え続けている。 インフレ時代に生活者を救済する即効力のある唯一の処方箋(しょほうせん)は、可処分所得を一気に増やす消費税や所得税の減税である。苦しむ底辺の国民を救済するため減税を進め、国民所得を上げるために積極財政を推進しGDP拡大を目指す政策が国民を豊かにする唯一の方法なのである。
ところが、今までの自公政権は、過去30年以上も消費税の増税を進め、緊縮財政で公共投資を抑制、一部の上流階級を除く大多数の一般国民を貧困へ追い込んだ罪は重い。 また、与党を非難するだけで、減税を含む国民所得向上に有効な経済政策を何も提案できなかった野党の無責任さに対しても国民の怒りは爆発寸前である。 今までの自公の連立政権は、国民にとって貧乏
神であり、6人に一人の貧困生活者の国民にとって、疫病神のような存在なのである。 ところが政権与党は、財務省だけを悪者にし、そのような有効な減税策はとらず、それどころか、国の借金が大きすぎて大変という間違った経済認識のままで、社会保険料を含む国民負担を5割まで上げ、国民を窮地に追い込んできた。 多くの国民が反対し、昨年10月に零細の個人事業者に
とって厄介なインボイス制度も強引に導入、その不可解な増税に四苦八苦する中、自民党の多くの議員が、政治資金の裏金の脱税を知り、庶民の怒りの導火線に火がついた状況となっている。
今回、自民のお灸票のお陰で運よく議席を増やした立憲民主党も同罪である。 多くの国民は10年以上前の民主党の野田首相時代の増税緊縮路線、消費税増税の主張を鮮明に記憶している。童話風に風刺すれば「(日本経済が)ドンドンダメダメ、とてもダメ。ゾウゼイ(増税)わな(罠)にはまってさあ大変。ドジョウがでてきてこんにちは。皆さん一緒に(税)上げましょう。」という怖い歌詞まで脳裏をかすめるのである。 従って、ネット論客が危惧する自民党と立憲民主党との大連立はありえない話であり、高市首相のもとで自公と国民がうまく連立を組み、国民のために減税と積極財政を推進する政治選択のみが国民の期待する唯一の政局なのであろう。
以上
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