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膝が内側に入ってしまう問題

 こればっかりは母、そして祖母を恨むしかないのだが、私は脚の形が悪い。膝から下の部分が外側に湾曲しているのである。

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 ↑ こういう感じ。画像は「いらすとや」さんからお借りしたのだが、絵の説明にはXO脚と書いてあった。そうか、私、XO脚だったのか……。

 脚の形は生まれつきの遺伝だからしょうがないと、母と祖母の脚を眺めて長い間諦めていたのだが、ローラースケートを始めてから、これがちょっとした問題になってきた。片足に重心を乗せて滑ると、膝が内側に入って落ちてしまい、重心の位置がずれてインサイドエッジに乗ってしまいがちなのだ。バックスケーティングになると特にこれが顕著で、バックは長い間フラットかインサイドでしか滑れなかった。バックのスパイラルになるともうフラットでも滑れなくて、インサイドエッジで円を描く以外はコントロール不能だった。コーチには、「膝を足のつま先の真上に持ってくるよう意識して!」と何度言われたことか。

 原因はいろいろあったのだが、一番大きいのは脚の内側の筋肉が弱くて、ちゃんとまっすぐ支えられないからだった。膝から下の脚が外側に向けて曲がっているように見えるのは、膝下の脚の内側に筋肉がなくて、外側だけに筋肉がついているからだ。脚が曲がっている人というのは、実は骨そのものが曲がっている人はほとんどいなくて(本当に骨が曲がっていたら大変な問題らしい)、筋肉の付き方が曲がっている人が多いのだそうだ。私はずっと、歩く時に足の外側(小指側)に体重をかけて歩く癖がついていて、こうなってしまったらしい。しかも、幼いころから土踏まずがあまりなく、偏平足ぎみである。

 私がローラースケートで片足立ちになる時に膝が内側に入ってしまう原因は、

・脚の内側の筋肉が弱い

・足が偏平足ぎみでアーチが崩れている

・筋肉、足のアーチなどの歪みのせいで膝がねじれている

・片足で滑ろうとする時に重心の位置がずれている

 この4つが絡み合っていたようだ。


■脚の内側を鍛える簡単エクササイズ

 一番いいのは、バレエをやることだ。バレエは、足の内側の筋肉を使うことが多く、正しく美しく足の筋肉を鍛えることができる。足裏や足の骨のアーチを支える筋肉も鍛えられる。

 とはいえ、みんながみんな大人バレエ教室に興味を持つわけではないと思うので、まずはうちのコーチが教えてくれた脚の内側の筋肉を鍛える簡単なエクササイズを紹介する。夜寝る前や朝起きてから、ベッドの中で毎日やるといい。

1.ベッドか床にあおむけに寝る。体と腕、脚をまっすぐに。手は下を向けてベッドや床を触る。

2.足のかかとを、下にぎゅーっと下げる。床やベッドにめり込ませるイメージで。膝は曲げずに、まっすぐのまま。10秒力をいれて、休憩。

3.これを3回繰り返す。

 これだけだ。これだけで、結構脚の内側の筋肉にくるのが分かる。


■インソールを入れる

 かわいそうに、うちの娘も私や祖母とまったく同じ脚をしているので、膝が内側に入って困っていた。ある日コーチが「ちょっと靴を脱いで立ってごらん?」と脚を見てくれたら、娘の足は後ろから見ると、かかとの筋の向きがまっすぐではなく、ハの字になって内側に倒れていた。脚と膝のゆがみは、足元からきていたのだ。「すぐに毎日履く靴とスケート靴にインソールを入れた方がいいわよ。直しておかないと、今は大丈夫でも大きくなって選手になったら膝を故障しやすくなる」とコーチに言われて、慌てて足の専門医(podiatrist)に診てもらうことにした。日本ではなぜか馴染みのない職業なのだが、英語圏にはこのポダイアトリストという人たちがいて、足の爪や骨、皮膚など、足に関するあらゆることを診療してくれる。一番多いのは、巻き爪で通う人だろうか。こちらには、このポダイアトリストが靴を選んでくれる靴屋さんなどもよくある。

 娘はポダイアトリストで足を3Dスキャンして、オーダーメイドでインソール(ちなみに英語ではこういった専用のインソールをオーソティックスと呼ぶ)を作ってもらうことにした。日頃から民間の高い医療保険に入っていると毎月の支払いがもう本当に大変なのだが、こういう時にカバーしてもらえるのがありがたい。インソールのフルオーダーは450ドルくらい(日本の感覚では4万5000円くらい)するのだが、保険でカバーされて実費負担は70ドル(7千円)くらいだった。これくらいなら、ちょっと高めの市販のインソールを買うのとそれほど変わらない。それでもお財布には痛いけど。

 新しいスケート靴を買うと、足に馴染むまで足首のくるぶしの内側がスケート靴に当たって痛いことがあるが、インソールでそれも解決されることがある。私も以前、ジェルパッドを貼ってみたりしてもあまり効果がなく、アイススケートが盛んではないうちの街にはスケート靴のコブ出しなんてできる人はいないし、どうしたもんかなぁと思っていたのだが、足の骨の位置を矯正するインソールを入れたらその痛みがピタッとなくなった。足の歪みが矯正されたことで、くるぶしの内側が正しい位置に収まるようになり、靴に当たらなくなったのだと思う(スケートの靴ずれと予防についてはこちらを参照)。

 ただしインソールを入れると、人によっては足の動きが靴に直に伝わりにくくなり、滑りに影響してしまうこともあるようだ。詳細は下の追記を参照。

 私の場合は、結局滑る時ではなく、普段の運動靴やパンプス、ブーツなどに必ずインソールを入れて足の骨の位置を矯正することにしたら、かなり滑りやすくなった。


■医師のおすすめするエクササイズ

 娘のポダイアトリストが考えてくれた、ローラースケートが上手くなりたい&足の歪みを矯正しながら筋肉をつけたい娘のためのエクササイズ・メニューがこちら。

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 一番最初に「NIKEズーム・ストラクチャー」と書いてあるのは、娘がナイキの靴が好きなので、ナイキのお勧めのモデルを教えてもらったから。ナイキは幅が狭い靴が多く、幅広な足を持つうちの娘たちにはあまりお勧めではないらしいのだが、このモデルなら良いとのこと。ちなみに、うちの先生お勧めの靴は、革靴ならクラークス、運動靴ならアシックスかニューバランスだそうだ。

エクササイズ①:壁に体をつけて、足を90度に曲げて空気イスに座っているような形でキープ。30秒を3回。

エクササイズ②:片足で1/4スクワット。左8回、右8回を1セットとして、3セット。足を曲げる時には、まっすぐ前に(膝と足の人差し指の位置を合わせる感じ)。

 もっと筋肉に負荷をかけたい時は、エクササイズ①で壁と背中の間にバランスボールを挟むといいそうだ。


■膝のねじれを解消するエクササイズ

 こんな動画も見つけた。膝のねじれやXO脚についての説明がとても分かりやすかった。そうか、私の大根足も、これが原因だったのか……。

↑ 森拓郎さんの人気動画。正しいスクワットとバレエのプリエは、外旋が大切なところがやっぱり似てるな。プリエはこれに「お尻を絶対につきださない」が加わるけど、真下にお尻を落とすって説明があるからやっぱり似てる。

 この中で紹介されている、足を30度内側に入れて膝を前に曲げるエクササイズは、やってみると一時的だけど即効性があって便利だと思った。スケート靴を履いたまま、すぐにちょっと歪みを直したい時などにもいいかも。


■バックでアウトエッジに乗れない時(重心の位置)

 コロナのロックダウンでしばらく滑っていなかったら、練習再開してしばらくの間もともと苦手だったバックのアウトエッジにうまく乗れなくなってしまった。おかげでバックの片足スラロームもできなくなってしまったのだが、自分でも訳が分からないままずっと自主練習していたら、ある日コーチが近づいてきて「もっとね、ぎゅっと体の中心に足と重心を絞り込む感じが必要なんだよ。ちょっとバックのクロスやってごらん」と言うので、バックのクロスをやってみた。そしたら、クロスさせる時に、確かにコーチの言うぎゅっと絞り込む感じがつかめたのだ。その後でバックの片足スラロームをやってみたら、ちゃんとアウトにも乗れるではないか。コーチ、さすが~。

 ようするに何が起きていたかというと、片足に重心が乗りきらずに内側に残っていて、そのバランスを補うために膝が内側に入って落ちていたのだ。これを解消するためには、嫌でもバックのアウトエッジに乗って重心移動をちゃんとしないと滑れないバックのクロスオーバーで滑ってみる事がとても役に立った。頭ではなく、体の感覚で理解した、という感じだった。


 最近、ふくらはぎの内側に少しずつ筋肉がついてきて、脚の見た目が少しはマシになってきた。ローラースケートを始めたおかげで、自分の脚の問題に気付けたことは本当にラッキーだったと思う。このまま歳をとっていたら、いつか膝の痛みに悩まされていたかもしれない。


追記:ツイッターで大人アイススケーターのKSさんが、某有名選手に振り付けを依頼して、振りうつしとマンツーマンレッスンを受けたところ、使っているインソールを取り外すようにアドバイスされた、という話を聞いた。私も試しにずっと使っていたインソールを取り外して滑ってみたら……バックのエッジにぐんっと乗りやすくなった!驚いた。特にフィギュア(図形)をやってみると、明らかにバックの安定感が違う。

 私はホッケーやフィギュア選手が勧めているSuperfeetのインソールのYellow(現在はカーボンプロホッケーという名称になったらしい)を長い間使用していたのだが、どうやら私の場合は使わない方が良いようだ。このインソールはアーチが低めのデザインで土踏まずに違和感が少ないのに、足を乗せるとアーチ部分の骨が正しい位置に収まって踵が安定する感覚があり、とても良い!と感じていたのだが。

 スケート靴選びと同じように、インソールの場合も、合う、合わないはその人によって千差万別なのかもしれない。KSさんのリンク仲間には、逆にインソールを外すと滑りにくくなる人もいるらしい。

 そのかわり、私はこのSuperfeetのインソールをスケート靴ではなく普段使いの靴に必ず使って足の骨の位置を矯正することにした。そしたら、偏平足ぎみだった私の足に、なんとアーチができてきた。滑りにも良い影響が出ていると思う。もちろん以前痛かったくるぶしの内側も痛くならないままだ。

 これまでインソールの箇所に書いていた文章は、一部本文から削除して修正した。


追記その2:日本人の女性は内また歩きの人が多いと思う。日本では伝統的に、女性は着物の所作でも、日本舞踊の動きでも、足はすり足で内またになっていることが良しとされてきた。その伝統は今もしっかり根付いていて、日本のアニメの女の子の立ち姿も内またで描かれることが圧倒的に多い。もちろん普通に歩いている日本女性は、アニメでデフォルメされているほど、そこまであからさまに内また歩きをしているわけでもないのだが、無意識にどちらかというと内また歩き「気味」になっている人が多いのではないだろうか。内また歩き気味になると、バランスを取ろうとして体重は小指側にかかり、脚の外側にばかり筋肉がついてしまう。

 内またでも外またでもなく、まっすぐに足を踏み出す歩き方に日頃から注意するとともに、脚の内側の筋肉を鍛えると、脚の形が良くなる&スケートにも良い影響が出てくると思う。


追記その3:ローラースケートのフレームの位置をずらす、という方法もあるらしい。ツイッターで知り合ったあるローラースケーターの方が教えてくれたのだが、内また気味の人はつま先側のフレームを2ミリ(5ミリ動かすとかなり変わる)くらい外側寄りにつけると良いのだそうだ。アイスでもローラースケートでも、ちゃんとしたメーカーのフレームには、自分でネジの位置を微調整できるようになっている横長の楕円形の穴が空いていることが多いらしい。残念ながら私のフレームにその穴はついていなかった。そんな時には、ネジ穴を丸い棒ヤスリで削って、自分でネジ穴を広げてしまうこともできるのだそうだ。調整するのはつま先側だけで、かかと側は普通触らないとのこと。

 私は工具の扱いに自信がないし、失敗したら怖いので、まずはフレーム位置ではなく自分の筋肉や滑り方を見直してみることにした。フレームの取り付け位置についてきちんとアドバイスできるような、知識と経験のある店舗を知っている人は、一度相談してみるといいかもしれない。


追記その4:トラックのネジを緩めると滑りやすくなる人もいる、という噂を聞いて、私もある日トラックのナットの緩み止めの出っ張りがカチカチと2回鳴る分だけ緩めてみた。すると確かに、バックのアウトエッジにも乗りやすくなった。でも、トラックが緩いので、その分ぐらぐらして安定しないから、結局片足で滑りにくい。そのことをツイでつぶやくと、フレームのネジ穴調整について教えてくださった同じスケーターさんから、またまた「トラックを緩めることにはメリットもデメリットもある」、と教えていただいた。それよりも、クッション(ブッシング)のゴムの硬度で調整すると良いそうだ。


追記その5:トラックとクッションの調整をしてみたらかなり滑りやすくなったので、その話はこちらで。


 ツイッターでもつぶやいています。


 

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