クロスビハインド
今回は、アーティスティック・ローラースケートのダンスの動きについて。ローラースケートには、もっとノリノリな感じのローラーダンスというジャンルもあるが、あれとは全くの別モノだ。アーティスティックのダンスというのは、アイススケートのアイスダンスとほぼ同じような競技なのだが、アイスと違うのは、男女のカップルだけでなくソロの競技もあること。相性の良いパートナーなんて必死に探さなくても自分一人でもできるのだ。氷上の社交ダンスとも呼ばれるアイスダンスと同じように、アーティスティック・ローラースケートのダンスも社交ダンスのスケートバージョンといった感じで、タンゴやワルツ、フォックストロットなどのステップがある。
そしてジュニアとシニアの国際試合では、アイスダンスと同じように数年前にコンパルソリダンス(全員が同じテンポの音楽に合わせて同じパターンを滑るやつ)がなくなり、スタイルダンスとフリーダンスの2つで競い合う。ただしユース以下の競技ではまだまだコンパルソリも健在だ。
(※注:アイスダンスやローラーフィギュアのコンパルソリ(規定)は、アイスのフィギュアスケートのシングル競技に昔あった図形を描く「コンパルソリ」とは全くの別物。コンパルソリという英語は、「必修の」「強制的な」という意味)
というわけで、ダンスでよく使われる動きの1つ、クロスビハインド。クロスオーバーは足の前でクロスさせる動きだが、クロスビハインドはスケーティングレッグの足の後ろで交差させる。クロスさせるのは、膝から下で。
■クロスビハインドのやり方
1)左足のフォアで滑る。
2)右足のフリーレッグの前のすねを、左足の後ろのふくらはぎにあてて、後ろからクロスさせる(まだ右足は床につかない)。
3)右足のアウト側の車輪だけを一瞬床につける。
4)右足の4輪をすべて床につけると同時に、一瞬だけ左足はアウト側の車輪だけ残してイン側の車輪を床から離す。
5)すぐに左足を前に伸ばしてすべての車輪を床から離す。
慣れてきたら、フラットなエッジではなく左アウト→後ろからクロス→右インサイドで。
反対の足も同じように練習して、両足でできるようにしておく。
最初は、後ろからクロスさせて足を入れ替えるのが結構怖い。足が絡まってしまうような感覚にもなりやすい。まずは止まったまま、足の動きをおさらいしてみよう。特に足の入れ替えの時の、右足のアウトの車輪だけを床につける→左足のアウトの車輪だけを床につける(同時に右は4輪とも床につける)、の動きをカチャ、カチャっと入れ替えて体重移動し、その感覚に慣れておくといい。この動きは、下の動画の6:45から7:45まであたりで実演されているので要チェック。
↑ ニコール・フィオーレの動画。両親がローラースケートのコーチで、幼い頃からこのリンクで育ったそう。
1:50 アウトサイドのエッジを意識して。膝を曲げる。
2:20 右足のフリーレッグのつま先をしっかりと伸ばす。こういう姿勢で滑ることに慣れておくこと。
3:00 上半身は少しねじって少しだけ円の内側に向けておく。
4:00 膝を伸ばしながら右足のつま先を内側に向ける。完全にクロスさせずに、膝を曲げる→伸ばしながら右足のつま先を内側にむけて左足の後ろにもってくる、を練習。もう一方の足でも練習して、両足ともやっておく。
5:45 先ほどの練習がスムーズにできるようになったら、右足を小指側から降ろす。降ろしたあとは、体重移動して完全に右足に乗る。
8:05 左足を抜いて真っすぐ伸ばす。
9:00 抜いた足は、イン側の車輪を右足のトウストップの前にまっすぐ並べるようにするといい。そして、両足を揃えて「and」のポジションに戻る(※1)。
9:50 その場でゆっくり動きのおさらい。
10:15 お手本の動き。
※1:「and」のポジションというのは、アーティスティックを習う時にしょっちゅう言われることの1つ。例えば、ゆっくりストロークをする時(普通に滑る時)も、「右、and、左、and、右……」というように、「右プッシュ、両足揃える、左プッシュ、両足揃える、右プッシュ」と、必ず次の動きの前に一瞬だけ両足を揃えて、美しくクリーンに次の動きを始める。
アイスダンスの動画も参考までに。
↑ オレグの動画。最初は足をくっつけて一瞬両足を氷につける方法で。上級者バージョンは詳しくやり方を説明しないが、実演してみせてくれる。
↑ 2008Twizzleの動画。どうやらこれをアップしてるのはロシアの「ツイズル」というアイススケートショップみたい。インサイドのクロスビハインド。アウト→後ろからクロス→インサイドで。
↑ 同じくロシアのツイズルショップから、アウトサイドのクロスビハインド。アウト→後ろからクロス→アウトで足を入れ替えるたびにくねくねと方向が変わる。クロスロールの後ろからクロスバージョンといった感じ。
追記:コンパルソリについての記述が間違っていたので、訂正しました。
追記その2:慣れるまでは、右足をクロスさせる場合、右足のすねを左足のふくらはぎにあててから、左足を伝って右足を下ろすようにしていくと正しい位置に靴を下ろしやすい。その分安定して足を下ろせるので、恐怖心も少なくなる。慣れてきたら、スピードに乗って一発で正しい位置に足を下ろして入れ替えていく(←これがオレグの実演している上級者バージョン)。
最近ダンスのレッスンに参加するようになったのだが、このクロスビハインドが出てくるパターンになると(たぶんマスターズ・タンゴ?)、選手のおじょーさまたちと同じスピードで滑るのがまだちょっと怖い……。
追記その3:アウトエッジに乗る
今日のレッスンで教わったのは、まっすぐ滑りながらクロスビハインドをしようと思っても逆に難しい、ということ。練習する時はアウトエッジに乗りながら体を少し円の内側へ傾けてやると、重心が正しい位置にきて(足を下ろすポイントの上に重心がきて)、クロスさせた足を下ろしやすくなる。
ツイッターでもつぶやいています。