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クロスオーバー(フォアクロス)
ロックダウンは解除されたものの、コロナのおかげでまだレッスン後の自主練習の時間が規制されていて、なかなか思うように練習できない。通常は1時間のレッスン後に1時間の自由時間があり、自由に習ったことをおさらいできるようになっていたのだが、ロックダウン後はこの自主練習の時間がカットされてしまった。月に一度開かれていたローラーディスコもしばらく休止。おかげで、自分の中での課題が山積み状態。今週末は片足スピンの練習がほぼできなかった(両足スピンを直されて時間が終わってしまった……)。あー、もっとリンクで滑りたい!
今回は、フォアのクロスオーバーについて。これも、アーティスティック以外でもすべてのローラースケートで滑る人たちが初期に覚えるエレメントの1つだと思う。これができるようになると、お、滑れるな、という感じになってくる。
クロスオーバーは、スピードを出しながらコーナーを曲がる時に使う。スピードスケートの人がコーナーを回る時によくやる、アレである。もちろんフィギュアスケートやアーティスティックローラースケート、ローラーダービーでも頻繁に使う。
まずはクロスオーバーの練習を始める前に、エッジに乗って片足で滑れるようになっていること。コーナーに来たら片足でアウトやインに乗ってすーっと滑れる状態になってから始めよう。
前段階として、このページのスウィズル・パンプをやっておくと、軸足に重心を置いてアウトエッジで滑りながら円の外側の足を動かす感覚がつかみやすいので参考にして欲しい。
それでは、まずはこんな動きだよ、というお手本動画から。
↑ ジプシー先生の動画。この人の動画は、短くて要点がハッキリしているのでいい。ただし、今回のこの先生の上半身と腕のフォームはローラーダービーの人がやる方法なので、アーティスティックをやっている人は足だけ見て欲しい。
0:25 腰を落としてスクワットの時のように体を低くする。体重をすべて左足に乗せるように重心を移動する。右足を持ち上げてクロスさせて少し前方に置く。右つま先は外側、右を向くと転ぶ。
0:50 右つま先が内側に向いていることを確認して、体重を右足に移動する。左足は後ろに小指を残すような感じでプッシュする。左足を戻して左に体重をかける。鼻と膝とつま先は一直線上に。
1:05 ではもう一度。体を落とす。左足に体重を移動。鼻と膝とつま先を一直線に。手はスイングさせて足と反対側を前に出す。右足をプッシュ。前方でクロス。体重を移動させながら後ろの足を伸ばす。また左足に体重をかけて鼻と膝とつま先を意識。
1:27 腰と肩は常にスクエアにしておくこと(前をまっすぐ向いてひねらない)。ローラーダービーやスピードスケートのようなやり方をしない場合は、上体を起こして。でも、同じように膝を曲げて前方でクロスさせる。
2:00 常にカーブの内側に体重をのせていること。鼻膝つま先は一直線。外側の足はまっすぐ横にプッシュ。
■クロスのやり方
この動画で言われていないことを補足すると、足から足への体重移動が不安定なら、最初は手を真横にまっすぐ伸ばしたままにしておくと、やじろべいのようにバランスを取りやすい。慣れてきたら、手は真横ではなく以下の方法で滑ってみよう。
<手と上半身>
手はまっすぐ伸ばし(外側が前、内側が後ろ)、常に円の内側に向けて手と体を開いておく。肩も開いておく(後ろの肩を入れない)。手と体を開かなければ、足をクロスさせにくいからだ。そして体は手を向けた方向に進みやすいので、前の手を円周のカーブ上に置く。アーティスティック以外のスタイルで滑る人は上体を屈めても良いが、アーティスティックの場合は基本的に上体はまっすぐ姿勢よく伸ばしたまま、屈めない(ハイスピードの時は屈めてもOK)。
<目線>
目線は、最初は体を開きやすくするためにまっすぐ円の内側にある中心を見て、慣れてきたら円周上の進行方向を見るようにするといい。慣れないうちはつい足元を見たくなるが、足元を見ると体のバランスが崩れて逆に転びやすくなるので絶対に足元を見ないこと。うちのコーチが良く言うことだが、体は無意識に目線の方向に行ってしまうものなのだ。床を見れば床の方向に転ぶし、あそこにぶつからないようにしようとそっちに意識が行っていると、逆に近づいてしまったりする。みんなでクロスオーバーをしながらサークルをぐるぐる回っていると、なぜか円が小さくなってきてみんなが近づいてきてしまう、なんてこともよくある。
<下半身>
しっかり膝を曲げて腰を落とすこと。そうしないと、足がクロスしにくい。アーティスティックの人は、クロスに限らず、外側の足をプッシュする時(ストローク)は横ではなく斜め後ろに。
<つま先と重心の位置>
反時計回りの場合、左足はアウト側、右足はイン側に重心を置いて円を描いていく。基本的には、左足アウト→右足をクロスさせてインに置く→左足を抜く、を繰り返すのが基本のクロスだ。常に円の内側に重心をおくことをイメージするといい。
慣れてきたら、左足を抜く前に円の外側へプッシュする。
それから、クロスさせるつま先の向きがとても大切だ。これに気をつけないと、逆方向を向いた靴同士がぶつかって転んでしまう。最初の頃に、うわ!っと転びそうになるのはほぼこれのせいだと思う。うちのコーチはよく、外側の足をクロスさせたら、カーブのラインに沿ってインサイドに乗るようにして足を下ろせ、と言っていた。こうすると、自然とつま先が少し内側を向く。もちろん、インサイドはインサイドでも、かかとを突き出してインサイドに乗ろうとしてはいけない。あくまでも、滑りながら描いているカーブのラインに沿った、つま先が少し内側に入ったインサイドである。その向きで足を出すには、常に体が円の内側を向いて開いていることも大切だ。そして体を円の内側に向けておくには、腕を外側前、内側後ろに開いておくとやりやすいのである。
外側の足をインサイドに下ろす、について分かりやすいのが、こちらの動画。アイススケートだが、動きはまったく同じだ。
↑ いつもかわいいジェナ先生。この人の動画もいつも短く簡潔で、わかりやすい。
0:07 インサイドとアウトサイドのエッジを交互に使う。ちょっとスピードを出してから、右足を持ち上げて(クロスし)インサイドに滑る。
0:18 (左足)アウトに(右足で)プッシュ→クロス。
0:27 (左足を)アウトサイド、(クロスした右足を)インサイドと繰り返す。
アーティスティックでの姿勢、腕はこのジェナ先生のやっている通りなので、こちらの動画を真似する方がいい。でも、他のスタイルのローラースケートをやっている人でも、このインサイド、アウトサイドの足の動きは全く同じだ。
■イメトレは正しい方法で
最初の頃は私も、片足を持ち上げてクロスさせるだなんて、怖くて仕方なかった。上手な人の動画をみながら、PCの前でよく裸足でイメージトレーニングした記憶がある。だがうちのコーチは、いろんな人の動画に出てくるようなローラースケートを履いて立ったまま横にカニ歩きのように足を入れ替える練習をしていると「それ、やっちゃだめ」と言っていた。おそらくこれをやると、間違った動き(つま先の向きや重心の位置など)を体が記憶してしまうからだと思う。止まったまま足を入れ替える練習やスケート靴なしでイメージトレーニングをするなら、ただなんとなくクロスさせて横に進んでいくのではなく、
(反時計回りの場合)右足プッシュで左足アウトにのる→右足インサイドを意識してつま先内側にクロス→左足は小指を残すようにプッシュ→左足を抜く
を繰り返して、重心の位置、つま先の向きをちゃんと意識しながらやるといいと思う。
長くなるので細かい説明は省くが、いくつか他の動画も並べておくので、活用して欲しい。最初の3つはどれもローラースケートでの説明だ。でもアーティスティックで美しいフォームを真似したいなら、4つ目以降のアイススケートの動画の方が参考になる。
↑ ファウンテン・バレーでローラースケート教室を開いているダーティ・デボラの動画。
↑ ローラースケートの世界大会で優勝経験もあるらしいニコール・フィオーレの動画。
↑ インディ・ジェマ・ジョーンズによるプラネット・ローラースケートの動画。ゲストのバンザイ先生が日系人なのかちょっと気になる。
↑ イギリスのジョン・ヘイズの動画。手を広げる時に肩を入れちゃだめだよ、などのアドバイスがためになる。
↑ ここだけの話だが、実は私、このロイド・ジョーンズが大好き。訛りで分かるようにイギリス出身だが、フランス代表としてソチオリンピックにも出ていた人。この頃はまだちょっと青二才風だけど、最近の動画では歳をとってますますいい男になってきている。この動画は、やりがちな失敗例も多く参考になる。
↑ アイスダンサー、オレグの動画。たらたら歩いてるようなクロスオーバーはダメだよ、という例も見せてくれる。オレグの動画は、髪の毛の変遷に時の流れともののあはれを感じて味わい深い。
↑ オレグがキセニアとペアを組んでいた頃の動画。この2人でアメリカ代表として世界大会にも出場しているらしい。さすがアイスダンスの人の滑り、という感じで、膝の角度は90度など、美しいフォームや重心の位置などが大変分かりやすい。ただしキセニアはちょっと反り腰気味になる癖があるようなので、そこは真似しないように注意。
クロスオーバーは必ず両方向で練習すること。反時計回りのサークルで練習する方がやりやすい人が多いと思うが、時計回りも同じように練習しておく。
そして脳内トレーニングでイメージをつかんだら、何度も何度も実際に練習すること。頭で理解しないと体が動かない人でも、ある程度理解したらやっぱり実際にローラースケートを履いて、何度も練習する以外に上達の方法はない(とこれもうちのコーチがよく言っている)。
私ももっと練習しなきゃなぁ。
追記:オレグの動画、高橋ニコルと組んだ時に作ったらしい日本語バージョンありました。
追記その2:説明の文章をクロスのやり方として一つにまとめ直しました。
追記その3:アーティスティックのダンスの「フロントクロス (Cross in front)」は、また少々違う動きなので注意。
ツイッターでもローラースケートについてつぶやいています。