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ローラースケートのダンスの試合準備③:ドーピングのお勉強編

 初めて試合に出場することになって、まず最初に「これをやれ」と言われたのは、ドーピングの勉強をすることだった。出場選手として試合に登録するためには、ドーピングについてのオンライン講習の終了証が必要だと言われた。

 私は大人スケーターだし、いつか将来立派な選手に成長して……などという可能性はゼロに等しい。しかも、出場するのは地方で開かれる小さな試合の、いちばん優しいカテゴリーの競技だ。それでも、どんな競技のどんな選手だろうと、競技に参加するにはまずドーピングについての知識が求められるのだそうだ。

 コアラの国って、こういうところが厳しいんだよなぁ。日本ではそれぞれの人の意識が高くて真面目なおかげで安全な生活が送れるけど、こちらでは国や地方行政のルールが厳しいおかげで、めんどくさいけど安全な生活が送れる、ということが多い。カンタス航空が過去に死者を1人も出していなかったり、国がコロナ対策で成功したりしているのも、何かにつけて細かに対応し(状況に応じてすぐ変更もする)、厳しいルールを施行する国だからかもしれない。こちらでは、小学生から高校生まで全員制服で通学するし。義務教育で私服を許す学校なんて、この国では私立でも公立でも存在しないのだ。選挙だって、なんと投票しないと罰金である。そんなルールにうるさい国の割には、国民はのんびりしたコアラみたいな性格でフレンドリーな人が多いのが不思議だが。温暖な地域が多くて、資源が豊富で、広大な土地がどこにでもある環境で育つことが多いからかな。庶民の家の庭にブランコどころかプールとかあるしね。

 というわけで、オンライン講習を受けた。まず驚いたのは、講習を開催しているスポーツ協会に登録する時に、さまざまな人気スポーツに混ざって「ローラースポーツ」がちゃんと選択肢にあって、自分の競技として選べたこと。ローラースポーツって、この国でもかなりマイナーなスポーツなんだけど、ちゃんとスポーツとして認識されてた~!そしてその後も、禁止薬物は各スポーツによって違うため自分のスポーツを選んで情報を確認する必要があるのだが、そこでもちゃんと「ローラースポーツ」が選べた。いつも誰かにローラースケートの話をしても「そんな競技あったんだ?知らなかった~」などと言われることが多いので、なんだかちょっと感動してしまった。

 講習は思ったよりも濃い内容で長く、数時間かかったが、インタラクティブに学んでいけるようによく工夫されいた。クリックすると絵がぱらっとめくれて情報が出る、とかね。内容は、ビタミン剤や薬は必ず成分を確認すること、サプリには禁止薬物が隠れた成分として含まれていることがあるので協会が安全性を確認したもの以外使わない方が良い事、成分の分からないものは日頃から口にいれないこと、選手だけではなくコーチやサポートスタッフにも罰則があること、チームスポーツの場合は自分の責任だけではなくなること、違法なドラッグを摂取しないことはもちろん、疑いがかかってマスコミに叩かれたりしないように友人関係まで注意すること、検査方法、持病がある場合はどうすれば良いか、などなど。

 知らなかったのだが、プラズマ(血漿)を提供する成分献血もドーピングになるそうだ。点滴や輸血を受けるのもほぼ禁止(細かな規則がある)。数週間後に成分献血をしようと思っていたので、慌てて予約をキャンセルした。

 そして、サプリの成分や、使っても良い薬(解熱剤その他)を調べる時には、このウェブサイトを活用する。

 Global DRO。各国の各スポーツの禁止薬物などの情報がつまっているウェブサイトだ。もちろん、日本のページもある。興味のある方は、ちらっとのぞいてみると面白いかも。日本のページにも、ちゃんと「ローラースポーツ」があったし。

 そんなこんなで、ドーピングについての3つの終了証をもらって、めでたく試合に選手登録することができた。

 へっぽこ大人スケーターだが、いっちょまえに厳しいスポーツの世界の入り口に立たせてもらったような気分で、ちょっと嬉しい。


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