
ゆっくり良くなる。パンが発酵するみたいに。
いっぱい寝たら少し元気になった
パンをこねる、発酵を待つ
あのとき
「少しずつ良くなる、パンが発酵するように」
と、言ってくれたことを思い出す

最近、中学生のころにハマっていた、パン作りの趣味をまた復活させた。
気づけば長い間、マフィンとかスコーンとかクッキーみたいな、作業が簡単なお菓子しか作っていなかった。
結婚して、生活にも慣れて、すこし余裕が出て、またやってみようかなぁという気になった。
そんな私には、パンを作ると思い出す出来事がある。
中学生のころ、鬱病で学校に行かずに、毎日パンやお菓子ばかり作っていた私に、スクールカウンセラーの先生がくれた手紙。
そこに書いてあったこと。
「ゆっくり、ゆっくり良くなっていくよ。
"パンが発酵していくみたいに"」
すごく信頼していた先生から貰った、大切な言葉。
その言葉をもらってから、私はパンが発酵していくのを眺めるたじ、同じように少しずつ良くなっていく自分を想像した。
ゆっくりゆっくり。発酵するように。
目で見ていても、わからないくらいの速さで、それでも一回り、二回りと大きくなる生地。
今覚えば、これはほんとうに魔法の言葉だ。
そうやって想像しながら何度もパンを焼いて、劇的にはよくならないけど少しずつ良くなって、中学校の卒業式では、なんとか大きい声で返事ができた。
勉強とか遊びとか家事とか仕事とか、いろいろ追われて、知らないうちにパン作りからは遠ざかっていったけど、
最近またパンを作るたびに、自分自身をゆっくりケアしているような気分になる。
私もそんな風に、お守りみたいな、宝物みたいな言葉を誰かにあげられれような大人になれたらいいな。