タラント 勇気をもらえる本
この人の書く小説は優しい。学生時代によく読んでいたのを思い出した。
周囲に賛同者がいないときでも、勇気をくれる。
主人公みのりは学生時代、途上国支援のボランティアサークルで活動していた。
まとまった休みごとにネパールやインド、ヨルダンなどで孤児院や難民キャンプを訪れるボランティアツアーに参加したこともある。
きっかけは学生寮の先輩がそのサークルに入っていたから。
国際協力に興味があったのは、ずっと田舎を出たかったから。
それがなぜなのか、使命とは、偽善とは、支援とは。
周囲の友人は自分なんかよりもずっと懸命にやるべきことを追いかけているように見える。
そんな友人よりも物事の繋がりとかその事象の社会との関わりに対する気づきが浅はかで、気づいたとしても何年も後になってて、後悔していることばかり。
子ども兵士の写真をきっかけに、みのりが立ち上がれなくなってしまったとき、
祖父の生き方が見えてくる。
祖父は戦争で片足を失い、今では実家の経営するうどん屋の店先でぼーっと休んでいることがほとんど。
寡黙で、自分のことはもちろん、過去の出来事もほとんど話すことがないから、家族も祖父がよく東京を訪れていた理由を知らない。
学校に行かなくなったという甥の陸とのやりとりを通じて、立ち止まること、見なくてもいいこと、その先で見えること、できなくてもいいことを自分の中で、感覚で取り戻していく。