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キラー・ビー/ Swarm 全エピ解説  ドナルド・グローヴァーたちが描く「スタン」の世界

3月17日に公開されるやいなや、斜め上にグォっと話が進んで、さらにうしろにバク転を決めるような怒涛の展開で話題を集めている、アマゾン・オリジナルの『キラー・ビー』。原題は『Swarm』。ドナルド・グローヴァー(チャイルディッシュ・ガンビーノ)がプライム・ヴィデオ(アマゾン)と数作品分の契約をしたシリーズの第1弾。共同クリエイターが『アトランタ』のシーズン3から脚本で参加しているジェニーン・ネイバーズ。ほかの制作陣も同じチーム。コメディの要素が強いサイコ・スリラーです。内容に関連した曲を冒頭に流したり、世相を皮肉った視点を押し出したりと『アトランタ』との類似点はあるけれど、連続殺人者(シリアル・キラー)がテーマなのでもっとおどろおどろしい。

とにかく、2023年にまず観るべきドラマ・シリーズであるのはまちがいない。

2016〜2018年のファッションがわかるのもよき。

このドラマのログラインは、「世紀のポップスター、ナイジャ(明らかにビヨンセ)に執着しすぎてバランスを崩した主人公の大暴走」。冒頭に、「本作品はフィクションではない。実在の人物や事件との類似性は意図的なものである」とわざわざ出てきます。まるで、連続殺人が実際の事件だと言わんばかりのミスリーディング。まんまと勘ちがいして、私に問い合わせてきた友だちもいました(それで、書こうと思いました)。正確には「実際の事件からヒントを得たフィクションではあるが、熱心すぎるファンダムの危うさ、ともすれば一線を越す人も出かねない現実を抽出している」点が「フィクションではない」のです。

この記事では、「わかりづらい」点と、「細かすぎる演出」について解説します。

だけど、でも、しかし! まず、1回は前知識なしで観てください。30分前後x7回、210分強。韓ドラだったら3回半分ぽっきり。展開が早く、集中力を要する構成なので、ながら見はせず、再生速度もそのままで。聞き取りづらいセリフもあって、基本、日本語字幕がいらない私でも「どゆこと?」と思うくだりがたまにありました。

知っておいたほうがいい前知識は、次の2点。

その1:「スタン(stan)」の話であること。「スタン」はストーカーとファン(stalker +fan)をかけ合わせたスラングで、2000年のエミネムの大ヒット曲で広がり、定着した名詞/動詞です。stan twitterはファン同士の情報交換という名目で個人情報が晒されたり、やり取りが過激化してネット・ブーリー(インターネットでのいじめ)も起こったりする問題点が指摘されています。『キラー・ビー』という邦題は、BeyHiveと呼ばれるビヨンセのファンダムのなかでとくに激しい人を指す意味で出てきます。主人公のドレことアンドレアこそ、そうなのです。

その2:話題を呼んだ豪華なゲストアクター。Ep.1でローリー・カルキン(『ホーム・アローン』のマコーレー・カルキンの9歳下の弟)、Ep.2ではマイケル・ジャクソンの娘のパリス・ジャクソン、そしてEp.4ではビリー・アイリッシュが俳優デビューを果たしています。ビリーはアマゾン系列のストリーミングとよくビジネスをしていますね。 出演者ではないけれど、バラク・オバマ元大統領の長女、マリア・オバマがスタッフライターで参加しているのも、アメリカで話題になっています。

はい、まだ観ていない人は一旦、離れてください。のちほど、お会いしましょう!

ここからは、みなさんが1回は観ている前提で、ネタバレもガンガンしていきます。ビヨンセの件を含め、「あれって実は?」と疑問にも答えられるといいな、と思っています。

Ep.1 Stung/蜂の一刺し


・2016年4月、テキサス州ヒューストン。主な舞台はビヨンセの故郷なんですね。アンドレアが姉のマリッサ・ジャクソンの誕生日にナイジャのコンサート・チケットを買うところからドラマは始まります。字幕だと「立ち見席」と出ていますが、このスタンディングはステージの真ん前のスペース。リセール・チケットで1800ドルずつ(当時の円換算で21万円)になっているのは、アメリカは公式で転売できるシステムがあるから。人気のコンサートは日にちが近づくにつれ高騰するし、売り切れない場合は当日まで待つと、元値を割って売られたりも。ドレは、届いたばかりのクレジット・カードを2枚使っているあたり、暴走気味の性格が見て取れます。

・マリッサ・ジャクソンは実在のモデルがいます。ビヨンセが2016年に『レモネード』(劇中では『フェスティバル』)をリリースした際、熱烈なファンだったマリッサ・ジャクソンが自殺した、という噂がツイッターで駆け巡ったそう。『レモネード』はジェイ・Zの浮気を示唆し、世間を驚かせました。「ビヨンセほどの女性が浮気される世界なんて」と絶望して命を絶った、という噂を土台にしたエピソードなのです。

・マリッサ役のクロイ・ベイリーはR&Bの姉妹デュオ、クロイ&ハリーのお姉さんのほう。彼女たちはビヨンセのパークウッド・エンターテイメントのアーティスト。そう、この企画はビヨンセ本人のお墨つき、というか彼女のキャスティング込みで了承したのかな? と邪推しています。クロイは演技力も十分だし、ハマり役です。妹のハリーがディズニーのアリエル役で賛否両論を呼んでいる最中。ビヨンセとディズニーも仲よし‥ですねぇ。

・30分の間に、男性観を含めたドレの性格、モールのTシャツ屋の店員をしながらメーキャップ・アーティストの夢を追いつつ、恋愛運がないマリッサの運命。ドレはドレで、『フェスティバル(=レモネード)』を聴いて覚醒、ナイジャ(ビヨンセ)が乗り移ったかのようにクラブで自信満々で逆ナン、そこからの急降下、最初の一刺しまで矢継ぎ早に見せます。監督はドナルド・グローヴァー。

・ドナルドの弟、ステファンが演じるキャッシェはもちろんジェイ・Z。キャッシュ(現金)に寄せた名前がウケます。ナイジャがビヨンセ同様、6人組からグラマー・チャイルド(デスティニーズ・チャイルド)になって売れた話が差し込まれて細かい。ビヨンセのバックコーラスを担当したKIRBYが『レモネード』〜『ライオン・キング』期の曲調によく似た歌を作っています。2018年のジェイ・Zとのザ・カーターズ『エヴリシング・イズ・ラヴ』の「エイプシット」を思わせるヴィジュアルもあって、そこは時系列が崩れていますね。

・『Vulture』の記事で、『レモネード』でビヨンセが引用しているイギリスの詩人、Warsan Shireの詩がこのエピソード後半のプロットに当てはまる、とありました。訳出してみますね。「私の葬式でなんて言うつもり? 私を殺しておいて/最愛の人の亡骸が横たわっている、私が傷つけてしまった、私の頭に銃をつくつけることなく」という詩。たしかに。

Ep.2 Honey/ハニー


・2017年8月、テネシー州フェイエットヴィル。1年以上が経ち、スタン/キラー・ビーとしてのドレの活動は本格化。ツイッターでマリッサの死とナイジャをバカにした煽り屋を狙ってフェイエットヴィルのストリップ・クラブで働くドレ。源氏名の「カルメン」はビヨンセの俳優デビュー作、ヒップホップ・オペラ「カルメン」に引っかけています。ナイジャの曲しか使わないので、周りから嫌味を言われるシーン。「死んだ赤ちゃんの歌でしょ!」と言われているのは、ビヨンセが流産について歌った未発表曲「Heartbeat」のこと。

・パリス・ジャクソンの源氏名は、ホールジー(!)。ホールジーがバイレイシャルのお父さんをもつクォーターだから。MJの娘さん、すぐにスピリチュアルな言葉をいうわりに、ダメ男から離れられないストリッパーを熱演しています。浮気をする、女性を食い物にする、そしてDVまでやる男性は、『キラー・ビー』を通じて何回か出てきます。それがベースラインのようにドラマ全体に響いてリアル。

・ビヨンセ同様、ナイジャは2017年に双子の長男と次女を産みます。それを祝うかのようにホールジーのダメ彼氏を殺しに向かうドレ。殺人を重ねたあと、ダンサーとしてのスキルが爆上がりしているのが笑えます。

・ストリッパーと大学のアメフト部との乱行パーティーは『アトランタ』にも出てきそう。後半、そもそもフェイエットヴィルに来た目的の男性と偶然、出会うまでの流れも自然。この親切で人好きしそうなレジーが、ネットでは悪口を書き込むタイプというのも、ゾワっとします。このストリッパー4人が殺人事件を起こしたのも事実だそう。


Ep.3 Taste / 甘い誘惑


・2017年12月、ワシントン州シアトル。この年、ソランジュが義兄ジェイ・Zをエレベーター内でぶっ叩く映像が出回って物議を醸しました。ドレは、その件を揶揄した人気Youtuberを邸宅で襲います。「好きなアーティストは?」というほぼ儀式になってきた質問に、「リル・ギブル」と答えるのがおもしろい。リル系、いっぱいいますからね。

・2016年のスーパーボールのハーフタイム・ショーで、ブラックパンサーをほうふつとさせる黒いベレー帽姿で「フォーメーション」を披露したビヨンセ。これが、トランプ・サポーターの逆鱗に触れます。その一人、アリス・ダッドリーはビヨンセを標的にして、キラー・ビーたちの反感を買ったのは実話。巧みに現実をシナリオに織り込んでいるのです。

・アリスを成敗するために、LAに向かうドレ。アリスの通うファンシーなスポーツクラブの潜入するシーン。ゲイのダニーが知り合いと勘ちがいして中に招き入れるのは、「どうせ黒人の見分けがつかない」というエピソード1のセリフに被ってきます。ダニーが「クリッシーとジョン(・レジェンド)を入会させたの」が「セレブ夫婦」で省略されたり、ドレの「いつも揉めているカレン」というセリフが差別的で特権意識を振り回す白人女性の総称「カレン」を指しているのに、字幕で「ケレン」になっていたりするのは、字数の制約があるとはいえ、残念。この短いシークエンスであからさまな差別に隠れがちな、偽善的な差別を描写しています。

・キャッシェのツアーPAを見つけたドレが、DV男から逃げている設定にして近づく展開も見事。アメリカの、とくに黒人コミュニティの肥満と依存の問題をやんわりと示唆しています。キャッシェ(ジェイ・Z)のファンのふりをしたものの、「どの曲が好き?」と聞かれて「‥ドラッグの」と答えて沈黙が訪れるのは大笑いました。ほとんどの曲で出てきますから、ドラッグ。ドレ、ほんとうにナイジャ以外には興味がないんですね。

・ビヨンセが噛まれた事件も本当です。バックステージでナイジャの妹にすれ違うドレー。このとき、妹役の人がソランジュのビヨンセのコーチェラに出演したときの衣装を着ています。コンサートのバックステージの様子、アフターパーティーの描写も正確。さすがドナルド、もといチャイルディッシュ・ガンビーノ。出席者の男性が「<グレイズ・アナトミー>に出てたんだけど」と、やたら出演者が変わる長寿ドラマを持ち出して(=嘘でもバレにくい)ナンパするシーン、逃げるドレを見かけた作業員が「<ラヴ&バスケット・ボール>に出ていた人じゃね?」って2000年の映画を持ち出すシーンも吹きました。

・冷凍庫のケーキに「First Last Tour」とあるのは、ジェイ・Zが(一旦)引退したときに出した『ブラック・アルバム』の最後の曲、「マイ・ファースト・ソング」に引っかけています。また、ドレがナイジャの後ろ姿を見て、我を忘れるときにマクスウェルの「ディス・ウーマンズ・ワーク」のコーラスだけが流れるのもいい。儚さの中に不気味さが潜む曲です。

Ep.4 Running Scared / 逃避行


・いよいよビリー・アイリッシュの登場回。2018年4月、テネシー州マンチェスター。ナイジャが出演するボナルー・フェスティバルに向かうドレ。ボナルーも実在のフェスですが、ビヨンセはこの春、コーチェラの「ホームカミング」で歴史に名を刻んでいます。

・ビリー・アイリッシュが演じるのは一見、仲よしコミュニティに見えるカルト集団のリーダー、エヴァ。完売になっているフェスのチケットを目当てにドレは身を寄せるのですが、このエヴァとのセッション・シーンが見事。「血が流れた」を「ミルクがこぼれた」と表現するなど、ドレの生い立ちが少しずつ明らかに。ここがわかってからエピソード1を見返すと、いろいろ合点が行きます。

・あのコーチェラのパフォーマンスを見逃したらたしかに激昂するよね、と珍しくドレに同情しました。


Ep.5  Girl, BYE/ 帰郷


・1ヶ月後。心の支えだったマリッサのスマホのサービスを義理の父、ハリスに切られます。アメリカのスマホ店の店員はほんとうにああいう感じ。テレビに映っているのは、エレン・デジェネラスのトークショーの模倣。モールで元店員仲間に会うドレは、近況を聞かれてナイジャのお母さん、アンジーに見出されたと大嘘をつきます。ビヨンセもお母さんのティナさんと仲がいいので、説得力のある空想。話しているとき、完全に信じ込んでいる目つきがやばいです。

・義父、ハリスを演じているのはレオン。マドンナの「パパ・ドント・プリーチ」でブラック・ジーザス役、などカルチュラル・アイコンとして絶妙な立ち位置にいる俳優さん。マリッサの実家がじつは裕福であるのを知って驚きました。テレビでは当時の大統領、トランプのさまざまな疑惑のニュースが流れています。スマホのためなら命がけで危険を起こすあたり、現代病のスマホ依存が行き着く先が描かれて怖い。ラスト、クロイ&ハリーの「オール・アイ・ウォンテッド」が、それから締めにはエリカ・バドゥの名曲「タイロン」の「でも電話は使わせない」のラインが流れます。エリカもヒューストンの出身。

Ep.6  Falling Through The Crack/見過ごされた犯人


・ここで主な登場人物の俳優が変わります。本物の犯罪事件を追う刑事のドキュメンタリーの体をとって、事件の全容に迫ります。メンフィスの女性刑事であるロレッタ・グリーンが、犯人がビヨンセの熱狂的なファンである黒人女性であるのを突き止める過程が、SNSのポストを追うのがいまっぽい。

・ロレッタを中心にしたこのエピソードは、「ビヨンセ」に音をかぶせつつ、「ハイブ」ははっきり出てくる。ビヨンセの「スタン」を名乗るメイクをした男性は、ビヨンセとアディダスのコラボライン、アイビーパークの服を着ています。

・事実と見せかけたこのエピソードで、ハリスがガンで亡くなったこと、アンドレア・グリーンが政府の補助金目当てで養子にもらわれたものの、大事にされず、さらに戻されたこと、ドレがこれまでのエピソード以上の殺人を犯していることなどがわかります。

・マリッサの誕生日お泊まり会での事件を聞き回るくだり。いじわるな白人女性、グウェンはリンジー・ローハンの『ミーン・ガールズ』(2004)のボスを意識しているでしょう。なにしろ、「首にコルセットをつけて過ごした」とまで言っています。ちなみに、この映画の脚本はドナルド・クローヴァーと仲のいいティナ・フェイです。毒親家庭や養子システムの問題は『アトランタ』にも出てきましたね。

・最後に出てくる「ビヨンセのアトランタのステージに乱入したトニー」も実際の事件です。このエピソードだけ日付を示していなかったのが、最後になって2018年であるのがわかります。

・ここに来て、『キラー・ビー』が「フィクションではない」と再三、念を押している意図がさらにわかってきます。黒人女性は、被害者であっても加害者であっても「見過ごされがち」なのは現実。このドラマで描かれているストーリーが作り物だとしても、現実にこういうことはあるのでは? それくらい、私たちは無視されているよ? というジャニーン・ネイバーズの主張は「本物」なのです。

Ep.7 Only God Makes Happy Ending/結末はハッピーに


・2018年6月、ジョージア州アトランタ。車中暮らしをしているドレは、トニーと名乗っています。最初にジ・インターネットのシド「Know」が流れて、これが女性同士のロマンスに発展する可能性を匂わせます。その相手、ラシーダがルームメイトのレベッカが酔いすぎてウーバー・タクシーに断られるあたりもリアル。ラシーダとトニー(ドレ)のラブシーンではSZAの「Normal Girl」が流れます。

・男装のトニーとしてせっかく幸せと掴みかけたかと思ったら、またナイジャのコンサートに散財して家賃のことで大揉めします。2年以上経っても、ドレがまったく成長していません。ナイジャの悪口を言われると見境がなくなることも。最後は、エピソード6で新聞が報じていたようにステージに乱入して警備員に取り押さえられるドレ。ところが、マリッサそっくりなナイジャが救ってもらい、念願の邂逅を果たして涙します。

<ラストの考察>


最後のエピソードはあえて解釈が分かれるように作っていると思います。実際の出来事を題材にしたドキュメンタリー仕立ての(ややこしい!)エピソード6が現実である、という世界線に立つと、同時期に進んでいるエピソード6が本当に起こったことで、7はドレ(トニー)の妄想を見せているとも取れます。6でステージに上がって取り押さえられたのが現実で、新聞でトニー=カルメン=ドレであることを突き止めたロレッタがアトランタに向かった先(おそらく逮捕)はあえて見せないわけです。

なぜなら、『キラー・ビー』が一番、描きたかったのは、不幸な生い立ちから、義理の姉とポップ・スターに依存してしまったアンドレア・グリーンの顛末ではないから。極端なストーリー展開にまぶされた現実の出来事、行きすぎたファンダムや、スマホ依存、目の前の出来事よりSNSでのやり取りに気を取られる異常さをいかにうまく映し出すか、そこに工夫を凝らしています。そして、ネットで感情を爆発させる愚かさ、言葉で人を傷つけた先に死が待っていることさえある、現実の恐怖を描いている点が新しい。

私は、日本ではプラス面が強調されがちな『推し活」のマイナス麺を切り取っているのがおもしろかった。なにかに夢中の人は生き生きとして素敵ですが、なかには現実逃避しがちだったり、自分の常識を押しつけたりと実年齢より幼い印象を受ける人もいます。

室内を写すときの照明の冷たさ、妙にきれいな壁紙と凄惨な殺害シーン、ドレ役のドミニーク・フィッシュバックの演技など見どころはたくさん。ちなみに、ドミニークはジェイ・Zの「スマイル」でよりによってジェイ・Zのお母さん役を演じたことがあります。偶然だそうですが、すごい縁ですね。「金の亡者」と言われるなど、本作では散々な扱いのホヴァさんですが、それくらいは笑って流せる度量がある、と取ったらいいのでしょうか(もしくは、嫁には逆らえない?)。ただ、制作陣の並々ならぬビヨンセとジェイ・Zへの理解は、ファン心の裏返しでしょう。

インタビューで、ドナルド・クローヴァーと出演俳優陣が参考にした作品を聞かれ、ミヒャエル・ハネケの『ピアニスト』(2001)を挙げていました。

えーーーーー。

カンヌ映画祭で3冠獲った、なんとも言えない気分になる作品。あの映画もだいぶ歪んだラヴ・ストーリーですが、抑圧と性癖がテーマだし、だいぶちがう。あ、でも主人公がなにをしでかすか見当がつかないあたりが一緒なのかな。もう1回観たほうがいいのだろうけど、あまり気が進まない‥と思ったけど、私もこの文章の頭で「まず、1回通して観てください」とみなさんに強めに書いてしまったので、観ましたよ(U-Nextですぐ出てきたのも大きい)。

わかりました。参考にしているのは、ラストシーンですね。『ピアニスト』はウィーンのピアノ教師の話で、クラシックの演奏を聴かせる場面が多い。『キラー・ビー』同様、音楽がとても重要な映画です。それが、最後の最後に「無音」になるんですね。ドレがナイジャと車に乗り込むシーンも、ドアを閉めた途端、完全に外の喧騒がかき消されます。現実離れしているんですね。そして、LAのシンガー、アリマ・エデラの「ポータルズ」が流れてジ・エンド。目が覚めないタイプの夢オチだと私は取りましたが、みなさんはどうでしたか? ってmこの議論を起こすこと自体が、制作陣の目論みかもしれないですね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。スキマークのチェック、ドネーションもうれしいです。

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