念願の再会が復帰戦✨①
『今手術しないと3ヶ月後には死に至ります』
病院の狭いカンファレン室 お昼下がり 手術を終えた先生が、空いた時間で口早に説明した内容は殆ど耳に入らなかった。
他の子供達、明日学校大丈夫かな。
旦那さん、仕事抜け出してきてくれたけど、戻らなくていいのかな
こんな事ばっかり考えながら、先生の説明を聞いていた。
無意識にこの子の病状から目を背けたかったのかもしれない。
病名は『肺動脈大動脈起始症』生後1ヶ月で5時間に及ぶ、大手術をした。
‥‥‥‥
4名男の子が続いて、5人目の妊娠が分かった時には産んでいいのか迷ったのが正直な気持ちだった。
5人の人生を背負う自信がない。
職場にはなんて言おう。
思春期を迎えた長男の気持ちはどうなんだろう。
そんな迷いがある中、旦那さんだけは大喜び。もちろん産もう。女の子かもしれないよ!
結局産まれたのは男の子。
親の気持ちはよそに、お兄ちゃん達は大喜び。
すぐに入院しだけど、病院まで休みの日は通って、いつか抱っこできる日を楽しみにしていた。
そんな五男君も、大きな合併症もなくすくすく育つ。
長男、次男、三男がバスケットをする中、自然とおもちゃはバスケットボール🏀
無理矢理抱っこされながら、おもちゃのバスケットリンクにダンクを強要される日々。
バスケを好きになる環境は自然と彼の周りに溢れていた。
独身の頃から、バスケット観戦が好きだった私に連れられ、琉球ゴールデンキングスの観戦に連れられて行ったのが、五男君の人生の変わり目。
試合終わりに、ファンだった#9長谷川智伸選手にブラックサンダーを渡そうとコートサイドに立った五男君。
『はせがわー、はせがわー』
広い体育館に響く、小さな3歳児の呼びかけに彼は気づいて、笑顔で近寄って来てくれた。
『ありがとー』と、五男君の頭をぽんぽん。
五男君の嬉しそうな、恥ずかしそうな顔を今でも忘れられない。
そこから五男君の夢は『はせがわになる事』
4歳の誕生日を迎えた、保育園での誕生日会に将来の夢を聞かれると『はせがわとものぶです』と答え、先生をキョトンとさせる始末。
会場には中々足を運べない中、テレビでの応援中もブラックサンダーを握りしめて全力で応援。
握り締められたブラックサンダーは、溶けてぐちゃぐちゃになってしまうほどだった。
そんな中、心臓の定期検診日がやってきた。
大嫌いなレントゲン撮影やエコー検査。泣いて検査できなくて、トンボ帰りする日もあったほど。
『今日は、はせがわと泣かないって約束するんだ!』と、玄関に飾ってある一緒に写した写真に向かってお約束して病院へ出発。
『はせがわ』は、もう五男君にとって夢でもあり、心の支えにもなっていたのだと感じた。
そんなはせがわが、キングス退団のリリース発表。
遠い所に行ってしまう事を、私は五男君にずっと言えずにいた。理解は出来ないかもしれない。でも、悲しい思いを少しでも味わって欲しくない。
会場の側を通るたび、『はせがわにチョコあげたいから試合見に行こう』という五男君に、そうだね、いつかねーと言いながら、目を合わさずはぐらかす事で精一杯だった。