秋田県・五城目町での「教育留学」から神奈川県・逗子市に帰ってきて1週間。
あれは夢だったんじゃないかと思うくらい、早くも現実に記憶が溶け始めている。
あぶない。
早く記録しておかないと何もかも溶けきってしまうので、考えたことを残しておくことにする。
いったい私たち家族が何をしていたのか、また教育留学の今後に向けた具体的なアイデアについては夫のnoteに詳しいので、興味のある方は覗いてほしい。
https://note.com/dem_yeah/n/n83638c4cf55f
そしてもっと細かい3週間の日記的記録はこのnoteの最後に付けておくので、時間がある方はよかったら見て下さい(長いです…)。
五城目町は特別なのか?
留学先である「五城目小学校」は、住民や教育関係者とのワークショップを何度も重ねて、さまざまな常識・制約・場所を“越える”学校として生まれた学校。
設立時の校長に学校を案内していただき、公立小学校でもここまでできるんだと感心するばかりだった。
※五城目小学校の開校までの流れはこちら↓
そして五城目町のすごいところは、この教育留学を推進していることだけではない。
■シェアの概念が広がる前から、茅葺の古民家を全国の“村民”とシェアして大きな話題になった「シェアビレッジ町村」
■廃校を活用して土着のベンチャー企業(通称ドチャベン)が有機的につながりながら地域を盛り上げる施設「BABAME BASE」
■デジタルファブリケーションを活用して地元産木材で“現代の長屋”を作った「森山ビレッジ」
■500年以上続く地元の朝市をアップデート&拡張した「ごじょうめ朝市plus+」
■コロナで廃業しかけた温泉を有志で再起させた、女子高生(当時)が代表を務める「湯の越温泉」
■自由度の高い子供の居場所として生まれ、朝市通りの活気作りに貢献した「ただの遊び場」
■コミュニティライブラリーとして思い思いの棚を貸し出して交流を促す「貸し棚 おうみや」
ほかにも、老舗酒造が営む素敵なカフェ「hikobe」や、地域の交流の場になっている「いちカフェ」、絵本を扱い宿泊もできるギャラリー「ものかたり」などなど…
ハード面ばかり列挙したけれど、もちろんこれらの裏には書ききれないほどのソフト面の資源=人のつながりや無形の工夫がある。
でも。
滞在中ずっと頭を離れなかったことがひとつ。
それは
「これって五城目だからこそできたことなの?そんなに特別なことなの?」
ということ。
五城目で出会う人は本当に素敵な人ばかりで、出会って日も浅いのに「みんな大好き!」と言いたくなるほどの温かいコミュニティ。
でも、疑り深く根っこがドライな私は(笑)、「いやいや、こうした有形無形の資源は実はほかの町にも転がっているはずだし、すでに芽を出していることだってたくさんあるはずなんじゃないの?!」と思ってしまったんだよね。
私たちは今回、五城目町について知りたい!学びたい!限られた期間の中でできるだけのことを吸収したい!という、かなり前のめりな気持ちで滞在した。
そんなスタンスでいたら、そりゃ町をよく理解するし(すべてを理解したとは到底思ってないけど)、リスペクトもするし、愛着もわくのも当然だ。
かたや自分の住む町はどうか?
住んでしまえば日常となり、向き合おう・関わろうとしなければ、地元とはただの景色に過ぎない。
恥ずかしながら、私は3年住んだ自分の町のことを、3週間住んだ五城目よりも知らないかもしれない...と気づいたのだ。
だから、きっと“隣の芝生”が青く見えているのではない。
私はただ、“自分の芝生=地元”を知らないだけなのだ。
また、何かを起こしている、もしくはこれから起こすであろうキーマンやイシューに出会っていない・関わりきれていないだけなんじゃないのか。
残念ながら日本のすべての町で五城目のようなことが起き得るとは思えないけれど、
少なくとも私が住む海沿いの町や、関わりのあるいくつかの街にはそのポテンシャルがたっぷりあると思う。
つまり、「五城目町の素晴らしさは再現できる」というのが今の私の考えだ。
“頼る”ことですべてが始まる
では、五城目の素晴らしさの本質は何なのだろうか?と自問すると、おそらくそれは
・助け合うこと
・応援すること
・おもしろがること
だと思う。
だがこの「助け合う」が、私はめちゃくちゃ苦手。
助けを求められたらできるだけのことはしたい。
でも、助けを求めることはしたくない。
できれば誰の助けも借りず(=誰にも“迷惑”をかけず)生きていきたい。
「こんなことお願いして申し訳ないなぁ」と頻繁に思うし、貸しをつくったら早く返さねばと焦るし、忘れっぽいくせに返せていない恩は何年経っても覚えている。
そして、私のようなうまく頼れない人は現代人に(特に都会住まいの人に)多い気がする。
自己責任という冷たい言葉が幅をきかせる、助けを求めづらい時代ならではの傾向かもしれない。
ところが、五城目の人たちは頼りまくる。
私もその流れに乗っかって(?)滞在中はいろんな人に恐縮しながら頼っていたのだが、あるとき車で送ってもらった方にこう言われた。
「誰かが頼らないと、関係性って始まらないんですよ。」
なんてこった。
そうだったのか…。
頼ることが、人がつながり何かが起こるスタートラインになっていたのだ。
ちょっとした衝撃だった。
このやさしい声かけに五城目の秘密を見たような気がして。
逆に言うと私たちは、頼っていたら生まれたはずの良い変化や可能性をみすみす逃してるのかもしれないなぁ。
「ちょっと頼ってみる」は、これからの自分のキーワードになりそうだ。
結局、渦中の人が一番たのしい
さて、
・五城目の素晴らしさは再現できるはず
・“頼ること”は何かが起こるきっかけになるかもしれない
と考えが至ったところで、私はどこに向かいたいんだろうか?
五城目に滞在中、長男が自分で先生に働きかけて、逗子と五城目のクラスをつないだオンライン交流会を開いた。
双方の担任がとても柔軟な先生で、子供たちをうまく巻き込んで準備をうながしてくれて、当日の交流会はそれはそれは盛り上がった。
でもやっぱり、一番幸せそうなのは長男だった。
渦中にいる人は楽しいのだ。
五城目で出会った人たちも、全員何かの“渦中”にいた。
必要だと思ったから、それが面白そうだから、自分の手で何かを始めて、誰かと紡いで、何かを生み出して、変化させる。
それは、生きてるなーって感じ。
これまでやってきた大きな仕事もどれも有意義で楽しかったし、
それなりに手触りのあるプロジェクトに取り組んでいたと思うけど、
今の私は、より身近でリアルなことの渦中に入りたいようだ。
その対象は、
教育とか、食とか、地域とか。
(あと、今はまだ意味も価値もなさそうなことも。)
そのために、さまざまな人たちの世界線をなるべく一次情報として体験して、化学反応が起きそうなことへの嗅覚を磨きたい。
まだまだ、抽象的。
でも、前に進みながら、後からそれに名前や価値がついてくるようなやり方でも良いと思ってる。
春からすこし毎日を変えます。
面白そうな場所にはフラ〜っと現れますので、
私が興味ありそうな何かがあったら、ぜひ教えてください!