【詩】あなたのきれいなまんまるのなかで―聾のるりる/草野心平③
聾のるりる/草野心平
あたくしはさいぜんから月を見てをります。もうどの位みてゐていたのか。すこし位置がちがったやうにも思はれますがよくは分かりません。あたくしのわきですかんぽも黙ってをります。ひるまとかん違ひしてゐるのでせうか。ああまた水すましがきました。月のおもてにローマ字を描いてをります。さうしてまたくらい水の方へ消えてゆきました。
あたくしは想い出します。くらびすとかいふカンタセリアの坊(せんせい)さんが話されたことでしたが。大昔。月はひどい疱瘡(ほうそう)を患ったさ