キャッシュレス/スマホ決済の業界について教科書通りに分析してみた
今、個人的に中小企業診断士の勉強をしているのですが、その教科書に記載されているフレームに則って、昨今のキャッシュレス/スマホ決済まわりの業界分析をしてみたいと思います。
今回用いるフレームは、
・5フォースモデル(ポーター)
多くのビジネスパーソンが知っている、超定番なやつですね。
①競争業者
LINE Pay、楽天ペイ、Origami Pay、各銀行ペイなど、すでにスマホ決済事業に参入している企業群
既存業者の敵対関係が激化する要因は以下の6点。
(1)同業者が多い
(2)同程度の規模の会社がひしめいている
(3)市場規模の成長速度が遅い
(4)固定コストまたは在庫コストが高い
(5)製品を差別化するポイントがない
(6)業界から撤退しにくい
ほぼほぼ該当しそうですが、特に(1)(3)(5)あたりは顕著ですね。加えて、後述する新規参入企業も多いことから、マスコミは「群雄割拠」とか「戦国時代」とかいうワードを使うのでしょうね。
②新規参入企業
PayPay、メルペイ(未参入)、Pringなど
決済の仕組み自体はそれほど難解ではないため、既存事業のアセット(営業力とか資金力とか)の活用さえできれば比較的参入ハードルは低い模様。
③代替品
現金
日本のキャッシュレス比率は20%弱。この数字が示すとおり、現金の脅威はとても大きい、と言われています。
一方で、改めて教科書に記載されている「代替品の脅威」の説明を引用すると、「ある製品と同じ機能をもつ製品であり、保有することによって従来の製品が不必要になる製品である」と書かれています。
つまり、現在のスマホ決済サービスは、“決済”という機能しか担えていないために現金と競合してしまうのです。
これは前回の記事でも述べましたが、今後各決済サービスは下図のような“決済以外のプロセス”もカバーできるように機能開発が進んでいくと考えられます。
④売り手の交渉力
供給業者1:デンソーのQRコード
供給業者2:クレジットカード会社
スマホ決済事業において供給業者のイメージはつきにくいが、上記2点が考えられます。
供給業者1:QRコード自体は、デンソーさんの特許ではあるものの、自由に開放してくださっているため、交渉力としては皆無に等しい状況。
供給業者2:LINE Payの場合はクレジットカード連携はしていないため、交渉力無し。一方、他社サービスの場合は数%の手数料の支払いが発生している。
⑤買い手の交渉力
大手企業からSMBまで、無数のマーチャント群
ここの分析が最も難しい。対象数でいうと数百万店舗が顧客となり、業種や規模も様々。緻密なマーケティング戦略を立案していく必要があります。
ちなみに、例えば大手小売の場合は、既存POSシステムによる交渉力が働くことにもなります。
以上、少しシンプルな書き方になりましたが、5フォースモデルに当てはめて整理してみました。
ここからは、5フォースの内容をふまえ、LINE Payがとるべき戦略について、こちらも教科書通りの整理をしてみたいと思います。
①差別化戦略
これは言わずもがなですが、国内7800万MAUを有するコミュニケーションプラットフォームを活用することかと思います。スマホを持つほぼ全ての人が毎日開き、毎日会話をするアプリケーション上で、日常の経済活動(これもコミュニケーション)をアップデートする。
また、店舗側もLINE@などを通じて来店客とコミュニケーション接点を持ち続けることができるようになります。
そしてその先には、リアル店舗における決済シーンだけでなく、投資や資産運用、保険、ローンなどいわゆる銀行というポジショニングを得ていくという戦略があります。
②コストリーダーシップ
これはちょっと私見が含まれてしまいますが、「サービスの裏側の運営」は他社よりも高いコストパフォーマンスで実現できている可能性が高いと思います。
LINE Payはすでにサービス開始から4年が経っており、変化の激しいこの業界において、そのアドバンテージは大きいと考えています。
例えばCS。
4年間でたくさんの問合せが入ってきており、そのQ&Aはかなり蓄積されているわけで、世の中全体がそうなりつつあるように「AIによる自動化」が実現できています。
LINE PayのLINE公式アカウントで問い合わせたい内容を入力すると、AIが言語を理解し適切な回答をしてくれます。(もちろん答えられないものはオペレーターに接続されます)
こういう取組みによって他社と比べると実はコスト的に優位になれているのではないかと思うのです。
※繰り返しになりますが、私見です。
③集中戦略
LINE Payは現状広い市場をターゲットにしているため、こちらは該当なし。
以上、スマホ決済の業界全体と、その中におけるLINE Payの位置づけや現状の戦略について教科書通りに分析してみました!
出典:中小企業診断士 最速合格のためのスピードテキスト 企業経営概論(TAC出版)P38~P45