スマホ決済普及の突破口を掴んだ2019年
こんにちは、LINE Fukuoka Smart City戦略室の南方です。
ちょうど1年前の今頃、PayPayが100億円の大型キャンペーンを実施しビックカメラの長蛇の列が連日報道されていました。
それを皮切りに、2019年はキャッシュレスが物凄く加速!
消費増税という追い風もあり、驚くことに流行語大賞にも名を連ねるほどになりました。
LINE Payは2018年5月~2019年3月の1年弱でなんと2110%の成長!(図1)
PayPayもすごい。サービス開始から1年でこの成長。おそるべし...(図2)
このように各社積極的にCMなどのプロモーションや、還元などのキャンペーンを展開し、スマホ決済への認知・初回利用を促進させた1年。
思い起こすと去年は「LINE Pay?よく知らない」みたいな声が大半だったけど、それもだいぶ変わりましたね。キャズム理論でいうところの、アーリーアダプターくらいまで到達した感じでしょうか。
ただ、これは今年の夏頃までの話。いま現在はどういうトレンドになっているかというと...(図3)
そう、マーケティング費用を大幅に抑え、投資効率を重視。ばら撒きによる一時的なユーザーのアクティブ化ではなく、LINE Payの様々な機能や資産を通じてサービスの充実化によるオーガニックな成長を実現する、という方針に切り替わっています。
要するに、俗にいう「消耗戦」を回避する方針です。
※事業者がユーザーにお金をばら撒いて使い続けてもらうってのもおかしな話ですからね。
そして、サービスの充実化、つまり「よりユーザーにとって便利な体験づくり」が大切になってくる。と私は捉えています。
サービスの充実化に向けて、LINE Fukuokaが取り組んできたこと
さて、ここからが本題です。
マーケティング費用をかけない、サービスの充実化によるオーガニックな成長とは?
実は今年のはじめ(1月4日)に、こんな記事を書いていました。
要約すると、
・手段の代替(現金→QR決済)では変化が少なく、キャッシュレスとしてはまだ初歩段階【キャッシュレス1.0】
・決済前後のプロセスごと変革を起こす必要がある【キャッシュレス2.0】
つまりスマホ決済の普及に向けて、キャンペーンの次に大事になってくるのは、
・ユーザーの購買プロセスにおいて不便に感じている点を解決すること
・スマホ(LINE)ならではの体験をつくること
と考え、2つの取り組みを実施してきました。
①フードコートなどで活躍する、LINE CHAT ORDER
最近「モバイルオーダー」市場が盛り上がってきましたが、LINEのチャットボット上で店舗や商品を選択し、そのままシームレスにLINE Payで決済できちゃう仕組みです。
料理ができると店舗から通知がくるので、店頭に並ぶ必要もないし、ブザーみたいなやつも不要です。
家族で別々の店舗で注文したいとき、お子様から目を離せないときなど、お席に座りながら片手で注文できるのが魅力です。
このLINE CHAT ORDERシステムによって、まず商品提供までのトータル時間が約半減になります。
※2019年1月9日の福岡市主催イベント「ワールドキッチン」で測定
また、この便利さが後押しとなり、同イベントにおいて高いキャッシュレス比率を実現。
このイベントでは還元キャンペーンも同時実施していたので、LINE CHAT ORDER単体での成果ではありませんが、それでも「お得さ」と「便利さ」の相乗効果によって、国が定める「2025年までにキャッシュレス比率40%」という目標を上回る結果を実現できたのです。
ちなみに多言語対応も可能なので、LINEをたくさん利用いただいている台湾やタイからの観光客にとっても、注文・決済のハードルを下げることが可能になります。
上記は2019年6月に行われた、G20 福岡 財務大臣・中央銀行総裁会議の海外ゲストをおもてなしするイベントで提供したもの。
海外ゲストからは“ It's convenient! ” という声を、
店舗の方からは“ 注文受ける人員を減らすことができる。料理に集中できる ”
という声をいただくことができました。
この、並ぶ必要ない・レジ担当いらない・多言語対応、という素晴らしい機能を持つこのシステムは、実際のフードコートにも応用されています。
福岡市の住宅地にある、ファミリー層が多い商業施設「木の葉モール橋本」のフードコートで実証実験をおこなっています。
もうすぐ、一般のみなさんにも公開できると思うので、乞うご期待!
【おまけ】さらなる応用版として、ANAさんの新規事業「ドローン」とコラボした企画も実施しました!
②福岡市では、粗大ごみを捨てる人の3割がLINEで申請?!
2018年9月から、福岡市では粗大ごみ収集の申請手続きをLINEでできるようになりました。そして2019年7月から、中央区限定でチャットボット上でLINE Pay決済までシームレスにできるようになりました。
その結果、現在中央区民の3割がLINEを使って申請手続きをしています。
下図のとおり、うち10%がチャットボット上で決済(LINE Pay)まで完結させている状態。
一見、「あまり多くない?」ように思いますが、飲食店や小売店などではスマホ決済の割合が「一桁%」というところが多いことを考えると、「結構多い」というのが私の感覚です。
さらにそのうち18%が、LINE Pay初体験。
「今まで面倒だった粗大ごみの申請がLINEだけで完結する」
という便利さによって利用を促せたのでは、と推測しています。
つまりここでも、キャンペーンというお得さに頼らず、ユーザーの利便性を追求することでスマホ決済の利用につながった、と捉えています。
結論:LINEはスマホ決済でもっと輝ける
①フードコートなどで使えるLINE CHAT ORDER、②粗大ごみ申請、という2つの例を紹介しましたが、これらに共通して言えるのは、LINEという誰もが使っているコミュニケーションツールだからこそ、「注文」「決済」というプロセスをシームレスに繋げられる。その結果として、スマホ決済の利用につながっていく、ということ。
局地的ながらキャッシュレス比率53%を実現したり、大手ショッピングモールが導入に向けて動いていたり、粗大ごみきっかけでLINE Pay利用し始める人が現れたり、
今年の始めに考えた仮説が、徐々に成果を出し始めています。
・ユーザーの購買プロセスにおいて不便に感じている点を解決すること
・スマホ(LINE)ならではの体験をつくること
やはりこれが、今後のキャッシュレス/スマホ決済の普及に向けた突破口であり、LINEも各社さんも、それぞれのアセットをどのように活かすかが今後の注目ポイントかと思います。
思い返せばETCや交通系ICカード普及のときも、「並びたくない」というユーザーニーズが起点となっていましたよね。
そして「まわりの人がどんどん便利になっていく姿」が一番の動機付けになっていきました。
いわば、それをスマホ内で実現するようなイメージであり、ある意味日本にフィットしそうな普及のやり方なのかなとも思います。
そういうユーザー体験をつくるのはLINEの得意技だし、国内8200万人が日常的につかっているアプリだからこそ、効果はデカいと確信しています。
これからも、LINEによる便利な決済体験づくり、それを起点としたスマホ決済の普及を、福岡からどんどん創り上げていきます。ご期待ください。
自己紹介
この記事を呼んでいただきありがとうございます!
LINE Fukuoka株式会社 Smart City戦略室 室長 南方 尚喜です。
福岡市との包括連携協定に基づき、LINEをつかって福岡市の暮らしを便利にするための取組みをたくさんやっています。
※文中抜粋
図1:日経XTECH
図2:BUSINESS INSIDER
図3:LINE 第3四半期決算資料