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倒産法判例百選 #6「破産手続開始申立てに対する事前協議・同意条項の効力」

割引あり

倒産法の百選判例を勉強するために、まとめてと該当問題をつかったショート問題と解答例を作成しました。解答例はXでシェアしてくれることを前提に無料にしています。法名は破産法は省略、民事再生法は民再としています。


1. 本判例の解説

【判例タイトル】 No.6「破産手続開始申立てに対する事前協議・同意条項の効力」

【判例番号】 東京高裁 昭和57年11月30日決定

【事案の概要】

X社は、労働組合との間で「破産法、会社更生法、商法に基づく整理手続については、事前に組合と協議し、同意を得なければならない」とする覚書を締結しました。その後、X社の経営が悪化し、組合の同意を得ることなく破産手続開始の申立てを行い、破産宣告がなされました。組合はこの覚書の条項に違反するとして、破産宣告の取消しを求めました。

解説

決定の法的構成「本件覚書の約定に含まれる債務者の申立権の放棄の合意は、一部の債権者との合意であるため、債務者の申立権についての総債権者の利益を害し、有効性を欠く。したがって、本件覚書の約定に反する申立てであっても、それを理由に違法・無効なものとはならない。」
論証として丸暗記すべきものではないので、似たような内容をかければいいとおもいます。

理由としては、破産手続の申立権は、総債権者の利益のために存在するものであり、特定の債権者や権利者との合意によって制限されるべきものではありません。仮に総債権者との合意があった場合でも、個々の債権者が不当に害される形で制約される場合には、公序良俗に反して無効となります。

このような申立権の放棄や事前協議条項は、契約自由の原則に基づき、一見有効であるように思えます。しかし、破産法の目的は「債務者の財産を公平に管理・配当することにより、債権者の平等な満足を得させ、併せて債務者の経済的更生を図ること」(破産法第1条)にあります。そのため、破産申立権が特定の債権者との合意によって制限されることは、総債権者の利益を害し、破産法の趣旨に反するため許されないといえる。


2. ショート問題

今回2問あります。

【問題1】

X社は労働組合との間で、「破産手続の申立てを行う際には、事前に協議し、同意を得る」とする覚書を締結しました。その後、X社は同意を得ずに破産手続開始の申立てを行い、破産宣告がなされました。この場合、X社の破産申立ては有効でしょうか。

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