倒産法判例百選 No.11「申立代理人の義務」
1. 本判例の解説
【判例タイトル】 No.11「申立代理人の義務」
【判例番号】 東京高裁 平成25年5月20日決定
【事案の概要】
弁護士法人Y(被告)は、訴外有限会社Aの代表者からAの自己破産の申立てを受任し、Aの債権者に対して「債務整理開始通知(破産申立予定)」と題する書面を発信して、YがAから債務整理を受任したことを通知しました。しかし、Yはその際、Aから印鑑や通帳類を預からず、Aの預金口座について何らの措置も講じませんでした。受任から2年後、Yの代表者はAの代理人として破産手続開始を申し立て、破産手続が開始されましたが、その間にAは預金口座の残高を大半費消していました。破産管財人に選任されたX(原告)は、Yが破産財団を構成すべき財産の管理を著しく怠り、結果として破産財団に損害をもたらしたと主張し、損害賠償を求めてYに対して不法行為に基づく損害賠償等の支払をもとめる訴えをYに提起しました。
1-1. 問題となったところ
本件では、申立代理人である弁護士が、依頼者の財務状況に関する正確な情報を把握し、誠実に申立てを行う義務を果たしているかが問題となりました。申立代理人は、依頼者の財務内容の確認と、裁判所に対して虚偽なく申立てを行う義務を負います。この義務に違反した場合、裁判所からの信頼を失い、申立てが棄却されることがあります。
1-2. 周辺知識:「申立代理人の義務」
申立代理人の義務については、以下の点が重要です:
情報の正確性の確保
申立代理人は、依頼者から提供された情報が正確かどうかを十分に確認する義務を負います。不正確な情報に基づいて手続を行うと、裁判所に誤った判断をさせてしまうリスクがあります。誠実義務
弁護士は、依頼者の代理人として誠実に手続きを遂行することが求められます。裁判所に提出する文書には、依頼者にとって不都合であっても事実を正確に記載しなければなりません。依頼者との連携
依頼者が財務状況を正確に把握していない場合、代理人は積極的に調査を行い、適切な情報を裁判所に提供する必要があります。依頼者からの情報だけに頼らず、独自の調査を行うことも重要です。
2. ショート問題と解答例
【問題】
A社の代理人B弁護士は、A社の自己破産手続の申立てを行いましたが、申立に2年かかりました。その間にA社は財産を浪費してしまい、B弁護士は不法行為に基づく損害賠償請求を受けました。損害賠償請求を受けました。かかる請求は認められるか?
【解答例】
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