予備 R6 民事訴訟法再現
第1 設問1について
裁判所は、L2の提出した相殺(民法505条1項)の抗弁につき、時期の遅れた防御方法にあたるとして却下できるか。
民事訴訟法においては、「裁判所及び当事者は、適正かつ迅速な審理の計画的な進行を図らなければならない」(民事訴訟法、以下法明省略147条の2)とされている。そのため、裁判所を及び当事者は、証拠の提出が求められる。
その一方で、相殺の抗弁は、当事者が実質的敗訴にあたるといえ、また抗弁につき裁判所が審理の順番に拘束がされないために、主張した当事者にとって不利になってしまう。
そこで、民事訴訟法では、紛争の解決を目指す(1条)ため、時機に遅れた攻撃防御について、定めている(157条)。裁判所は、当事者の主張について、①当事者の故意また重大な過失により②時機に遅れて提出した攻撃方法について、却下できるとされている(157条1項)故意又は過失があるかどうかについては当事者の主張の内容や、主張された時機などを総合的に判断をする。
また、1項のみならず、③趣旨が明瞭でない場合に、当事者が必要な釈明しない場合についても却下できるとしている(157条2項)これは、当事者が主張した抗弁について、必要な釈明を行うことで紛争についても、紛争の適正かつ迅速な審理の計画のために却下できるという趣旨である。本件においては、L2は口頭弁論終結後の期日にかかわらず、相殺の抗弁について主張を行った。この自動債権については、本件訴訟の提起に弁済期は到来しており、本訴訟開始前から相殺適状になっていた。そのため、本抗弁について、口頭弁論終結前にも主張できるとしており、L2が意図的に遅らせた、または重大な過失があったといえる。(①充足)
また、本抗弁について仮に裁判所が審理をおこなうとすると、自動債権の成立につき、証拠の取調や証人喚問など大幅に訴訟が遅延するといえる。これは紛争の「適正かつ迅速な審理」(147条の2)に反しているといい、時機におくれたということができる。(②充足)
さらに、L2は、「相殺権の行使について、法律上特段の定めがなく、初めから主張する必要がないといっていた」という以上のことについて説明をしていない。そのため、本抗弁について主張がおくれた理由についてなんら説明をしていないといえる。そのため、必要な釈明をおこなったとは言いがたい(③充足)。以上により、裁判所は、時機に遅れた攻撃防御方法として、157条1項または、2項で却下することが可能であるといえる。また、L2は自己の主張するとおり、請求異議の訴え(民事執行法35条1項)で相殺の抗弁を主張すればよい。
第2 設問2について
前訴にて訴訟告知(53条1項)を受けたにもかかわらず参加せずに敗訴したAは、後訴で、代理権授与の主張をすることができるのか。
判決について、既判力(114条1項)は判決主文に包含するものに限られ、代理権授与というのは判決理由中になるため、既判力を有しないとされている。そのため、後訴においても主張が可能であるともおもえる。
しかし、「補助参加人に対してその効力を有する」(46条1項)と特別に定めたことについて、法は紛争の解決を目指した趣旨(1条)のもと、当事者の敗訴責任の公平な分担から、参加的効力について判決理由中の判断にまで及ぶといえる。そのため、敗訴当事者間において、当該主張は後訴にてできないといえる。
また、訴訟告知を受けたものについて、参加しなかった場合においても参加することができた時に参加したものとみなされる(53条4項)ため、補助参加の利益があった場合には、訴訟参加をしなかった場合においても、参加的効力が生じる。本件についてみると、Aは訴訟告知を受けたにもかかわらず、訴訟には参加しなかった。補助参加の利益はあるため、53条4項により、参加することができたときに補助参加したとみなされる(53条1項)
さらにAの主張する、代理権授与の主張については、前訴判決においては「YはAに代理権を授与しておらず、表見代理の成立は認められないこと」が理由となっている。そのため、参加的効力として判決理由中まで及ぶため、Aは後訴において、代理権の主張について行うことはできない。そのため、排斥が可能であるといえる。以上により、裁判所は、参加的効力(46条1項)が及ぶことを理由にして、Aの代理権授与の主張について排斥をすることができる。
以上
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