倒産法判例百選 No.9「不当な目的による再生手続開始の申立て」
1. 本判例の解説
【判例タイトル】 No.9「不当な目的による再生手続開始の申立て」
【判例番号】 東京高裁 平成24年9月7日決定
【事案の概要】
Y社は経営悪化により再生手続の開始を申し立てましたが、その目的が問題となりました。Y社の代表取締役Aは、以前、Y社の取締役会で自身の債務の連帯保証をY社に承認させ、これに基づく保証債務を負っていました。しかし、その後、AとY社は債権者Xらからの強制執行を回避し、否認権を利用してこの連帯保証債務を取り消そうとしました。申立書には「連帯保証契約は否認権行使の対象となる」と明記されており、Y社が否認権を使って債務の取消しを目指していたことが明らかでした。
裁判所は、この再生手続の申立てが、本来の目的である債務整理や再建ではなく、連帯保証債務の否認に限定されたものであり、濫用的な目的に該当すると判断しました。そのため、民事再生法25条4号に基づき、この申立ては棄却されました。
1-1. 問題となったところ
民事再生法25条4号は、「不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき」に、裁判所が再生手続の申立てを棄却することを規定しています。本件では、Y社の申立ては連帯保証債務の取消しを唯一の目的としたものであり、債務整理の本来の目的を逸脱する濫用的なものと認定されました。濫用的な申立ての判断基準としては、再生手続が債務者の再建を目的とせず、否認権などの制度を悪用して債権者に不利益を与えることが問題とされます。
本件では、否認権を行使させることを目的としており濫用的申立と認定されました。基本的に条文をベースに「濫用的かどうかについては諸般の事情の総合考慮によって判断される」でいいかとおもいます。実際に問題として出る可能性は少ないですが、結論ありきのロジックに、あてはめ勝負となるとおもいます。
規範:民事再生法25条4号に基づき、再生手続の申立てが棄却されるのは、連帯保証債務の否認のみを目的としたように、本来の目的から逸脱した濫用的な申立てがなされた場合です。
2. ショート問題と解答例
【問題】
Y社の代表取締役Xは、会社と連帯保証債務を負っており、その債務を否認して取り消すために再生手続開始の申立てを行いました。申立書には「否認権行使を目的としている」と明記されており、債権者Zらはこの申立てが不当な目的に基づくものだとして、再生手続開始決定の取消しを求めました。この場合、Y社の再生手続開始の申立ては棄却されるか。
【解答例】
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