(詩)がんばれよ
がんばれよ
つかれた足をひきずるのをやめて
しばし星空を仰ぐ
あのちいさな光のまわりには
もっとちいさな星がまわっていて
そのうちのいくつかには
もっともっとちいさな生きものが
住んでいるのかもしれない
すがたやことばがちがい
環境がちがっていたとしても
かれらもかれらなりに
生きるなやみがあって
メタンのため息などつきながら
ぼくのように
夜空をながめているのだろうか
はてしない暗やみをへだてて
さみしさだけでつながる
いのちといのち
おもわず
がんばれよ
とつぶやく
だがもちろん
そんな声が届くはずもなく
かれらに分かるはずもない
ぼくは目をふせて
ふたたび歩きだした
そのときぼくは聞いたのだ
かすかなかすかな声が
くらい空からいくつも降ってくるのを
がんばれよ がんばれよ……
ふたたび見あげた星たちは
さっきより少しだけ
近くなった気がした
ぼくらは孤独ではない
この宇宙には
しずかなやさしい声が満ちている
聞きとる耳が ありさえすれば
(MY DEAR 325号投稿作)
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