(詩)骨が叫ぶ
骨が叫ぶ
目には見えない
でも確かにそこにある
巨大な歯車に押し潰されて
一人の男が命を落とした
警察が下した結論は自死
だがほんとうは
彼の存在を不都合に感じる者たちが
彼を葬ったのだ
彼自身の手を使って
葬儀はしめやかに執り行われ
物言わぬ骨と化した彼は
真白な壷に収められ
墓の中に安置された
だが これで終わりではなかった
死者より恐ろしいのは生者である
彼らはハイエナのように
男の死を食い物にし
骨までしゃぶりつくす
上空には禿鷲の編隊が旋回している
彼らは死んだ男を殺す
なぜなら彼は
残された者たちの心に生き続けるから
断ち切られた志が
世の心ある人々に受け継がれることのないように
彼らは死者を殺す
必要とあらば 何度でも
彼らは真実を殺す
彼が墓場まで持っていった真実
彼が不幸にも知ってしまった真実を
それを後世のだれも知ることがないように
壺の中に封印する
人々の記憶を捻じ曲げ 抹消し
彼らにとって不都合な真実を殺す
必要とあらば 何度でも
だが これで終わりではなかった
死者は――
幾重にも殺されたあの男は
ついに沈黙を破る
偽善の白い壺を破り
重い墓石を吹き飛ばし
暗い穴の底から骨が叫ぶ
正義と真実を求めて
その叫びは闇夜を切り裂き
安眠を貪る者たちを震撼させる
必要とあらば 何度でも
(MY DEAR 316号投稿作・改訂済)
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