(詩)革命
革命
市松模様の盤上に
整然と並べられた駒(ピース)たち
それぞれの駒には
決められた色と役割があり
ルールに従ってしか動けない
駒には自分の意志はなく
プレイヤーの指示に従うだけ
その目的は
敵と戦い勝利を収めること
だがその勝利は駒のものではない
白軍に生まれたからには
黒軍と殺し合うのが定め
なぜそうなのか
そうでなければならないのか
問うことは許されない
最前線に進みゆくポーンは
いとも簡単に敵の餌食になる
だがプレイヤーには
捨て駒の気持ちは分からない
勝っても負けても
彼らはいつでも安全だ
戦場である盤の外にいるのだから
勝利を収めると
栄誉を手にするのはプレイヤー
駒が称賛されることはない
盤の横には
死屍累々と横たわる駒たち
ゲームが終わると駒たちは
ゾンビのように整然と並べられ
ふたたび戦いに駆り出される
それは終わりのない繰り返し
だがある晩
ポーンの頭に疑問が浮かんだ
なぜおれは前進しか許されないのか
ただそう教えられてきたからか
最前線で犬死にするための存在なのか
ポーンは勇気を出して
後ろに進んでみた
すると驚いたことに
どこにでも行けるではないか
前後左右どこまでも
おーいみんな 聞いてくれ
おれたちは騙されていたんだ!
望みさえすれば
どんな動きだってできるんだ!
ルールブックなど燃やしてしまえ!
他の駒たちは
初めのうちこそ半信半疑だったが
それまでになかった動きを試し出した
ナイトはまっすぐ突進し
ルークはおどけてジグザグ進む
もはやマス目にも縛られず
敵も味方もなく
王も一兵卒もない
黒いポーンと白のクイーンはワルツを踊り
ビショップはそれを祝福する
昨日まで敵同士だった駒たちが
白黒入り乱れ肩を組んで
平和(ピース)と自由を謳歌する
小さな四角い盤面は
革命の広場(スクエア)と化した
これはゲームではない
いのちの躍動そのものだ
プレイヤーたちが
明日の勝利を夢見て眠っている間に
駒たちは娯楽室から出ていった
市松模様の狭く四角い盤を後にして
自由な世界へと
(MY DEAR 341号投稿作・改訂済)