(詩)変わり種
変わり種
川沿いの土手
陽当たりの良い南向きの斜面に
ぼくは生まれた
斜面を覆う緑の絨毯から
青空に向かって細い茎を伸ばし
緑の葉を大きく広げた
けれどもいつの頃からか気づいた
自分の姿が周りとは違っていることに
変わり種のぼくを見た仲間たちは
時に囃し立て 時に無視したが
決して受け入れることはなかった
だがどんなに辛くても
もって生まれた姿を変えることも
生きる場所を変えることもできない
緑の土手は生き地獄だった
そんなある日
いつものように
ひっそりと葉を広げて
川から来る風に吹かれていると
小さな柔らかい手が
ぼくを根元から摘み取った
これで終わりか
気まぐれな子どもに弄ばれて
飽きたら捨てられ
道端で朽ち果てるのだろう
短くて無意味な一生だった
だがその子どもは
土手を登り
ぼくを母親に示した
「ママ見て!
四つ葉のクローバーだよ
わたし、幸せになれるかなあ」
それからぼくは押し花になり
栞としてその子の本に挟まれた
その子は大人になるまで
ぼくの栞を大切に使い続けた
彼女が幸せになったかどうか
ぼくにはわからない
でも確かなことは
ぼくは周りのどの草より長らえて
大切にしてもらえたということ
そして
周りと違っていることも
悪くないということ
(MY DEAR 329号投稿作・改訂済)
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