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(詩)虚音

虚音 


ぼくが好きな音 それは
桜の最初の花弁が落ちる音
芋虫が蛹の中で蝶に変わる音
頭の中でことばが羽ばたき始める音

数直線上に記せない虚数のように
鼓膜ではなく心を震わせる虚音がある
聞く耳のある者だけに聞こえる音が
虚数が数直線から垂直に離れているように
虚音を聞くには世界と直交する必要がある

ぼくが耳を(垂直に)傾けるべき音 それは
真理がゆっくり押しつぶされる音
血に汚された大地が呻く音 そして
その下から正義を求める、声なき声


※2024年9月16日(月)~9月22日(日)に画廊楽IIにて開催された、横浜詩人会「詩画展」出品作品。今回のテーマは「音」だった。


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