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幻調乱歩3 東京ニュートロン曠野

去る2024.9/7〜8、東京の霞ヶ関近くにあるイイノホールにて上演された朗読劇、「幻調乱歩3 東京ニュートロン曠野」に作曲担当として参加しました。 

緻密な脚本と演出、豪華声優さんによる迫真の演技、世界観を魅せる衣装と舞台美術に照明、そこに生演奏…。現地チケットは前売りで完売でしたが、音楽も含めて「これは劇場で観てよかった!」っていう反応を多数いただけてありがたいです。スタッフ側の僕自身も、かなりいい舞台なのでは?という手応えを感じていました。
劇場は終わりましたが配信はまだ続いておりますので、是非ご覧ください!

改めて裏話を含めて、まとめてみました^^。

作曲過程

1と2は他の方のご担当だったのですが、3は「ジャズでやりたい」というお話で→アメツチ常連ジャンルレス作曲家の僕が担当することに。
パンフレットにも書きましたが、実は2のカーテンコールのBGMで既に今回の「テーマ曲」を伏線的に?を出していました
アメツチの安藤Pから『番町皿屋敷』の劇伴作曲途中の2023年9月に相談を受けて→即日未明にラフなデモを出して、修正要望を受けてメロを作り直してまた即日未明に出して、翌日OK貰って出先のホテルでアレンジ&音作りして未明に完成。
この音源は、1と2を未見の方向けの動画でも使われています。急いで作ったせいか、かなりテンポが速いです。

劇伴制作は、同じく細川さん脚本演出の「ジャック・モーメント」が終わったあとの6月くらいからかな…と思っていたら、脚本が難航している、と。
なんせ音源ではなく生演奏での劇伴、僕も初めてで勝手がわからず(苦笑)。レコーディングの譜面作りはあっても、アドリブの入るジャズはなかったですし。ただ、バイオリンでジャズのセッションには参加経験があって、ジャズ奏者の方はかなりラフな指定でも対応できることはわかっていたんで、あとはどこまで何を指定すれば劇伴として成り立つか、手探りになるなぁ…と思いながら待ってました。

そして7月も終わり…(※想定外!)、月末に6曲ほど曲イメージの予告をいただいて、8/10未明についに初稿をいただき。ただ、同時に書き上げた細川さんが入院されたとの報で…
曲のスケッチをいくつか作ってイメージを高めつつ、テーマ曲のリアレンジ&譜面作成。
そして、8/18に曲入り指定つきの第二稿(ほぼ完成稿)が来て、本格的に劇伴デモ音源制作開始、8/24に音楽の初打ち合わせ。
修正・追加作曲しつつ劇伴の譜面を作り(これが想像以上にハードだった…)、8/28のバンドの初合わせ当日朝に編成の大きな8曲を優先して譜面をお送りして、テーマ含む全16曲のデモ音源と譜面が揃ったのが8/30。

僕は専業作家ではなく、朝から日付変わって深夜まで仕事しているようなアカデミア研究者の兼業作家なんですが、よりによって8月後半にそっちも重要な〆切があって…。まぁなかなか壮絶でしたけども。演奏者の皆さんのスキルに頼りつつ、劇伴としてのクオリティを下げないギリギリなラインで間に合わせた形です><。

生演奏劇伴のこだわり

劇伴制作で大事なのは、演出効果の部分。
特にジャズだと下手をすればただ背景で流れている「ザ・BGM!」になってしまいますが、あくまで「劇伴」として演出に直接関わるサウンド感になるように設計してみたつもりです。アレンジ上も、純粋にジャズというよりは、ジャズバンド編成による映画風な劇音楽を指向してみました。

セリフの尺が定まらない上に生演奏なんで、繰り返しの設計も必要で…まずは脚本や稽古の音源をベースに、尺だけでなくセリフ展開と曲展開の相違を感じさせないように、コードや構成を工夫してみました。基本的には普段の劇伴と同じなのですが、無限に展開を作ると譜面が長くなるので、比較的少ない和音で転調は最低限、あと管楽器ベースなのでフラット系の調を多めにしています。

最終形は、そこからさらにサックスの門田さんに演奏終了タイミングの指示を出していただく前提で展開を変更したり、奏者の皆さんからのフィードバックをいただいて決定しました。初日を踏まえての意見で、2日目に変更した部分もあります。

劇中休憩前とラストで2回演奏されるテーマ曲はもちろん、4度上昇スケールのベースラインが浮遊感を呼ぶオープニング曲や、スパイものテイストな曲、要所のサックスが歌い上げるバラード曲…どの曲も、バンドの皆さんが生きた劇音楽として演奏してくださって、作家としてはただただ感無量でした。

劇場では生ライブ!という迫力重視の音響で、声優さんの迫力ある演技と相まって聴きごたえがある舞台にできたかな…と思っています。程よい残響で音の分離も良く、聴きやすいホールでした。バンドだけで演奏するシーンでは、セリフ被りの遠慮もいらないので、さながら音楽ライブでしたね!
配信ではセリフの聞きやすさのバランスの関係で、音量を絞られている楽曲も多いので、また何かの形でお聴きいただける機会があればいいなぁ、と思っています。

舞台美術もかっこよかったですね~

バンドメンバーについて

凄腕なバンドのメンバーの皆さまも、僕の目線で改めてご紹介を。

サックス:門田JAW晃介さん(HP

安藤Pから「大物ミュージシャンのツアーに参加されているプロのサックス奏者」の方が入る、というのはかなり初期から伺っていて。
そろそろ劇伴作るかって頃に、お名前を聞いて…ん?ひょっとしてPE'Zの!?と気付いてちょっとした騒ぎに(笑)。ポップス寄りのサウンドアプローチで人気だったジャズバンドで、ジャズを聴くひとならそう紹介いただいたら「おお!」と分かるような方。僕も一時期されていた歌モノコラボのpe'zmokuがすごく気に入ってヘビロテで聴いていたのです(「ペズモク大作戦」というアルバムは名盤ですよ)。
テナーのイメージが強かったのですが、ソプラノも吹いてくださって、曲想をだいぶ広げて作れました。何より、旋律の持つ魅力を深く解釈された演奏で、サックスってこんなに表現の幅が出るのか、と驚かされましたね。最近はエフェクターやルーパーなども駆使したアプローチの音楽もされていて(YouTube)、今回の劇伴でも導入の一曲目や子供探偵団の曲などでは、エフェクターを生かした表現も入れていただいています。

ドラム:能村亮平さん(HP

門田さんとは小さい頃からのお付き合いらしく、門田さん以上にリーダーの風格で(?)楽曲をまとめてくださいました。ドラムアレンジに関しては、デモ音源で軽くイメージを共有した以外はキメを含めてお任せが多かったのですが、楽曲の立ち位置を深く解釈して演出を支えてくださる演奏をしていただきました。セリフとの音量バランスで、クリアソニック(ドラムを囲む透明の板)を使ってもかなり制限された弾き方を強いられる環境ながら、安定感を失わない演奏はさすがという他なく。完全にプロのお仕事ですね。余談ですが…サプリにお詳しくて、楽屋はそんな話で盛り上がってました。

ピアノ:兵頭佐和子さん(HP

ジャズ・ピアニストは素人でもパッと聴きで分かるくらい個性が出ますが、兵頭さんはクラシック畑ご出身だからか比較的マイルドな味付けが特徴的で、映画音楽的な曲調のソロとすごく良い相性でした。演出上ピアノに頼らざるえない場面も多かったのですが、最終日までよりよい劇伴を指向していろいろとご提案をいただいて、曲を進化させてくださいました。かなりアドリブを入れていただいていて、特に冒頭一曲目はサックスと相まってまさに幻調乱歩の世界観に誘う音楽でしたね。

ベース:佐久間百合香さん(Instagram

当初予定していた河原真さんが急遽降板せざるえなくなり…佐久間さんに代役としてご参加いただきました。いきなり最終リハでゲネプロ、とタイトなスケジュールでしたが、完璧に間に合わせてくださいました(まさに綱渡り…)。ジャズと言えばウッドベース(コントラバス)のウォーキングベースでしょう!と、ギターかベースかで編成を迷う安藤Pにリクエストしたのですが、やっぱり映えますよね。劇伴設計の都合で、1曲を除いてソロを取る場面はなかったですが、縁の下でしっかりと曲を支えてくださいました。

僕は舞台裏で、楽曲終了タイミングを(念のため)知らせる係を。
「見守りカメラ」の発光機能を使うという荒業。

おわりに

本当は楽曲解説もしたいのですが、配信では聴こえにくい部分も多いので、またの機会にでも…(いつ?)。
ライトモチーフというほどライトではないですが、二十面相や姫宮のテーマフレーズとか、よく聴くとor分析すると、見えてくる楽曲構成になっています。脚本を踏まえて伏線を引いてたりしますので、配信リピートされる方はその辺もお楽しみいただけましたら幸いです。…といってもちょっと難しいですけど(特に姫宮のテーマの変奏)。

サウンドトラック…是非出したいですね!! ←

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