第一章 3話 音が聴こえる
3・音が聴こえる
子供の頃、夕焼け空を見上げた。
青と桃色の織り混ざった空に一番星を見つけたとき、空からメロディーが降ってきた。あまりにきれいだったから、慌てて口の中で復唱し記憶に刻みつけたっけ……。
景色を見ると音が聴こえる。
美しいものを見ると旋律が空から降りてくる。
和音を構成する各音符が一つずつ順番に音を発し、光を反射して輝くようなイメージをともない、きれいなアルペジオを奏でていく。音程はいつも同じで、見る景色によって少しずつ音色や音の大きさが変わることもあった。ただ、僕にとってごく自然なこの現象が、他の人にはない感覚だと知ったのはかなりあとのことだ。
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4,610字
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