大学に入る前に読みたい本 2016年版
2013年版および、2015年版を先に閲覧することをお勧めします。塾講師最後の年に書いた読書案内のページです。2015年版および2016年版ではおまけのページとして他にも色々つけたので、ワンコーナーとしてのポジションが強く、大学に入る前に読みたい本シリーズで唯一、あとがきがないものとなっています。あとがきや他のおまけページについてはまた別の記事で紹介します。(内容的にやや重いことも言っているので、そちらは無料記事ではない可能性が高いですが、、、)なお、まえがきの前書きには固有名詞が多いので、その部分については全て〇〇という形で伏せています。実際に生徒に配布したものは全て入っていますが、流石に何年も前に辞めた職場とはいえ守秘義務違反はできないので、伏せています。
第3版 読書案内
これで、3回目に突入する読書案内になる。この教室で随分長く働いたものであるという感慨を抱かせる結果と言える。2010年の9月より〇〇校での勤務が始まり、多くの生徒を担当してきたものである。今となっては高校生が主であるが、元々授業をメインにする仕事ではなく、2010年の異動に際しても○○の活用を推進するために、○○校で勤務する予定であった(授業をほとんどする予定ではなかった)が、何が起こるか分からないもので、人員不足が生じていた○○校に勤務地が変更になったのである。しかも、○○に来て初めて、人員不足は高校生の文系の担当であることが分かり、そこから全く慣れていない高校生の授業を担当することになったのである。慣れていないという事実は大きなことであり、授業の準備に大分苦戦したものである。努力を繰り返したことで、今となっては、○○校は近隣の塾の中でも高校生に強い教室にまで成長することができた。このような身の上を語るのも、この3月をもってこの教室からいなくなるからである。厳密には、知り合いに依頼されて、中高一貫校の学校に勤務することになったからである。よって、○○校在籍の生徒が読書案内を目にするのはこれが最後となる。今年の高3生の多くが中学生の頃から知っており、ちょうど良い区切れ目にもなったと言える。そんな特別な冊子となった今回の『大学入学前の点検』では、読書案内の後に人生のアドバイスになるようなことも記載しようと思うので、いつもより量が多くなっている。いつもなら終盤に来るはずの読書案内は今回は折り返し地点なので、ここからまた心してかかってほしい。なお、今まで方針は同じで、読書案内は過去の読書案内も載せているので、紹介している本の数も今までで最も多い。そのため、きっと興味を持てる本がいくつかあると思う。
2016年
[新々版] 大学に入る前に読みたい本
2016年
はじめに
2015年という時代を振り返ったときに何か大きな出来事があったかと問われれば、あまりにも多くのことが起きたため1つを取り上げることはできないと思われる。例えば、2015年の年始は2016年同様に青学の駅伝優勝で幕をあけた。その後すぐに、マクドナルドの異物混入事件、イスラム国関連のニュースが報道され、2015年は波乱の幕開けと言っても良いだろう。そんな2015年の出来事のベスト10を読売新聞で見ると、1位は大村智と梶田隆章両氏のノーベル章受章、2位はラグビーW杯日本歴史的3勝と明るいニュースが上位に来ていることを見ると、少し安心できる。そのようなニュースとしては第7位に北陸新幹線開業もある。そう言えば昔金沢に旅行しに行ったことがあるが、とても良い経験ができたので機会があればぜひとも行ってもらいたい。
そんな中、6位には安全保障関連法の成立があった。国会前にSEALDsを中心として人々が集まり、デモを展開したことは懐かしい記憶のように思われるかもしれないが、1つの歴史的転換点であったのは明らかである。だが一方で、近年の政治は過去の亡霊に囚われているような気がしてならない。例えば、鳩山由紀夫が総理大臣であったとき、他の総理大臣が重視していなかったが鳩山のみが特に重視していたものがあったが覚えているだろうか。それはロシアとの関係を改善することである。では、なぜ鳩山由紀夫はロシアにこだわったのか。それは彼の祖父に当たる、鳩山一郎が日ソ基本条約を結び、ソ連との関係を改善したため、彼もまたロシアとの関係において実績を残したかったのであろう。では、安倍晋三の場合はどうだろうか。彼の祖父は岸信介である。つまり、安倍もまた、祖父が安全保障条約という実績を残したことを受けて、安全保障関係で実績を残したかったのであろう。さらに、岸時代に起きた学生運動について、今回はSEALDsという学生集団の行動が再現度を高めている。まさに歴史再現をしたかのような事態である。
「歴史再現」という言葉を聞くと、『境界線上のホライゾン』というライトノベルを思い出させる。いわゆる「世界が滅びた後の世界」というdisaster系作品の1つであるが、その中でアルマダ海戦の歴史再現を行なう話が出てくる。ちなみにアルマダ海戦はウィキペディアでも出てくる、実際にあった歴史上の出来事である。その話において繰り返し言われるのが、「歴史再現」という言葉である。その作品の中で「歴史再現」がなぜ重要であったかは今となっては覚えていないので、気になる人は原作を読んでほしいが、実際の世界において「歴史再現」の意味とはどのような意味を持つのだろうか。
歴史を再現しているものとして世界で最も有名なものと言えば、ディズニーランドが挙げられる。ディズニーランドには、現実世界は存在しない。例えば、ビッグサンダーマウンテンがあるウェスタンランドは開拓時代のアメリカを意識しており、東京ディズニーランドホテルはイギリスのヴィクトリア朝時代を意識している。どちらも客を楽しませる施設であり、多くのファンを獲得していると言って良いだろう。そこに訪れた客は誰しも、ウェスタンランドでは西部劇に出ているような感覚を味わい、そして西走していくフロンティア精神を賛美したくなるような雰囲気を味わうのである。実際、ファストパスを求めて開園と同時に西走する人もいるわけである(実際は3つのマウンテンに向かうので3方向に散るわけだが)。また、東京ディズニーホテルでは気品と優美さを感じさせるようなヴィクトリア朝時代を意識した内装により、宿泊客は「お行儀のよい」ヴィクトリア朝時代の英国人になったような気分を味わい、翌日もらえる特権に心を馳せて就寝するのである。しかしながら、客が体験している当時の世界は一面的なものにしか過ぎない。開拓時代のアメリカはネイティブアメリカの生活環境を次々奪って征服していったし、ヴィクトリア朝時代はイギリスが植民地を増やしていった時期であり、多くの国で戦争やそれに類するものを起こしている。つまり、どちらも血なまぐさい背景を抱えているがそれを隠して美化している。そのような美化を、アラン・ブライマンは『ディズニー化する社会』において「無菌化」と呼んでいる。つまり、過去の栄光にすがっているということもできよう。しかしながら、ディズニーランドは夢の国である。つまり、過去の栄光や再現された歴史空間を楽しむことは悪いことではない。
しかしながら、社会生活においてはどうであろうか。政治についてでないが、過去に影響をされることについて警句を促した人物としてハル・フォスターがいる。彼は『デザインと犯罪』の中で、現代アートにおいて過去の影響を強く受けたような作品を制作することは亡霊的であると否定的な評価を下している。過去を参考にすること自体には否定的ではないが、参考にしすぎることについては否定的なのである。つまり、過去をいかに利用するかが大きな問題なのである。歴史再現の大きな意義は「安定」として読み解くことができないだろうか。歴史再現は文字通り「再現」であり、同じような背景において同じような行動をすれば同じような結果が生じやすくなる。つまり、現代のような変動が大きく先が読めない世において、歴史再現は予期しやすい未来を可能にし、端的に言えば約束された未来の提供なのである。言い換えれば、未来がわかりきっており、安定を獲得して行動をすることができる。
だが一方で、安定に意味があるのだろうか。もちろん、たまには足を止めて思考を整理したり、自身の過去の成果を見て自信をつけたりすることは現在の自己・未来の自己にとって重要なことである。しかし安定に甘んじていては革新はありえない。シュンペーターが定義した、「イノベーション」では創造的破壊が前提となっている。つまり、安定を求めていては進歩しない。奇しくも最近『もしドラ』の第2弾である『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』が出版されたわけであり、イノベーションを考える時期が来たともいえる。ともあれ、流行において歴史再現は守株になりがちであるが、岩崎夏海はなかなか勝負をかけてきたと言える。だが、そのような逆境において再度成功を収めると目覚ましい発展を遂げるのも事実である。
一時期、自身を二発屋と呼んでいた有吉弘行はその典型であろう。彼は最底辺からトップ集団へと返り咲いたのである。そう言えば、今年を飾るニュースには、トマ・ピケティの来日があったことも思い出される。彼の主著『21世紀の資本論』は、私はまだ読んでいないが、大きな主張としては資本の一極集中と中間層の消滅というものがある。つまり、新自由主義は新しい局面に移行し、新しい経済状況を現出させつつあると言って良い。そのような経済状況の別の証拠として、リチャード・フロリダの『クリエイティブ資本論』がある。彼は労働者階級・資本家階級という旧来の階級ではない階級としてクリエイティブ階級が存在するようになったことを示している。ピケティの考えとフロリダの考えを合わせると、クリエイティブではない人間は自由主義経済に飼い殺しになるということであろう。有吉の例を見ると、やはりクリエイティブであることは現代において重要である。クリエイティブであるためには、革新性は必須である。新しいものを生み出さなければ敗者なのである。
だからと言って、創造的と言えるような新しいものは突如天才的に降り注ぐものではない。印象派の絵と言えば日本人のとりわけ婦人に人気の高い作品であるが、19世紀において最新の画期的な画法として重用されたことは良く知られたことである。しかし、そのような印象派を生み出した、エドゥアール・マネは、ベラスケスを筆頭とするヨーロッパの伝統的な絵画と、北斎や写楽などの日本の浮世絵を参考に、印象派という画期的な画法を生み出している。まさに温故知新の傑作なのである。革新とは大体そのようなものである。既存のものを良く知っているからこそ、次への進歩を導き出すのである。我々にとって、過去や歴史は再現するものではなく、参照し未来に活かすものであるべきなのである。そういえば、『徒然草』に次のような言葉がある。「ひとり灯のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる」(第十三段)とあり、簡単に意味を取れば「一人灯りの下で、書籍類を広げて読めば、会ったことのない過去の人々の考えを知ることができ(書籍を通して交流することができ)、さらに著者と深い交わりを持つことができるが、そのような交わりがこの上ない心を慰める方法である」というものであろう。つまり、本を通して過去の人々やあったことのない人の考えを知ることは現在の自己にとって大切であるということである。まさにそのような過去との対話の端緒となるのが、これから紹介する本たちである。長々と前置きを述べたが、今回は今まで以上に読みやすい本を拡充し、一方で重要な文献も多く取り入れ、良い所どりを目指した。ぜひ本屋や図書館に行き、手に取ってもらいたいものである。
[学問への入門]
<文系>
森田良行『基礎日本語1・2・3』角川書店(同じ内容で『基礎日本語辞典』というものもある)
→いわゆる言葉のニュアンスについて分析した本。辞書にはない記述ということを念頭に置いており、ネイティブにとって説明しづらい部分を明確に示している。辞書に近いので、気になった言葉を引くにも便利であり、また1つ1つの項目は短いので暇つぶし読むにも便利なものである。
益岡隆志、田窪行則『基本日本語文法』くろしお出版
→こちらは文法について説明したものである。短く簡便にまとめられているが、文法関連で説明しづらいことをほとんど載っており、困ったときにあると便利。特に、正しい日本語を意識したい場合には、持っておくと参考になる。
グループ・ジャマシイ『教師と学習者のための日本語文型辞典』くろしお出版
→『基礎日本語文法』よりも具体的な例が示されているもの。抽象的な説明は『基礎日本語文法』で確認し、具体的な使い方はこちらで確認すると良い。なお、中国語やインドネシア語や英語版など外国語への翻訳も盛んに行われているので、日本語から英語など翻訳する際の参考にもなる。
久曽神昇『古今和歌集への道』思文閣出版
→『古今和歌集』の研究者として知られる久曽神の人生を回顧した本。なぜ、『古今和歌集』を研究し始めたのかなどもわかる。研究が究極のはまるという行為であれば、そのような人生をささげるほど熱中した人物の生涯を知ることは自身の人生の参考になるであろう。もちろん、『古今和歌集』について基本的なことも分かる。
馬場あき子『鬼の研究』三一書房(現在はちくま文庫でも出ている)
→節分やなまはげでしか現在は鬼に触れることはないかもしれないが、その歴史は古く平安時代にはほぼ鬼という概念はありふれたものとなっていた。そのような鬼について多くの文学作品から分析した本である。丁寧に作品を分析することや、良く知られたことの源流を知ることよって、古典を知る楽しみの一端を体験できる。
角山栄『茶の世界史』中公新書
→お茶という日常的なものから世界史を見直した本。イギリスと言えば紅茶の国だが、元々はコーヒーの国であった。そのようなイギリスがどうして紅茶の国へと転じて行ったのかがわかる本である。歴史とは自己の源流を知るものであるということを感じられる一冊。
サミュエル・ハンチントン『文明の衝突』集英社
→21世紀の国際情勢を文明から論じた書。特に、9.11以降注目が増したことでも知られる作品と言える。なお、この作品の批判として『文明の衝突という欺瞞』という本もある。一般に批判書がすぐに出る著作というのはセンセーショナルで的を得た作品が多いが、この作品もそうである。西欧と第3世界の衝突が主な内容ではあるが、日本はその他の国家について考える際にも参考になる。
グレゴリー・マンキュー『マンキュー経済学』東洋経済新報社
→経済学の基本的なテキストである。マクロ経済とミクロ経済の両方について論じており、例もわかりやすいものが豊富である。そのため、数学が全く分からない人でも経済学について理解することができる。また、困ったときに傍に置いておくと参照できる本としても有効である。
<理系>
馬場敬之『スバラシク実力がつく!大学基礎数学キャンパスゼミ』マセマ出版
→大学入試の参考書としても有名なマセマ出版の大学で利用するタイプの参考書の最も入門的なものである。数学が苦手な人や、少しでも大学での数学で後れを取りたくない人におすすめの参考書である。また、数学と物理学については専門的な内容を扱っているものもあるので、シリーズ全体を見て必要なものを活用するのも有効である。
岡田章『ゲーム理論・入門』有斐閣アルマ
→ゲーム理論は理系と文系にまたがる重要な考え方の1つであり、端的に言えば人間の行動の仕方を数式で考えてみようとする学問である。そのような比較的新しい学問について簡単に書かれている本である。ただし、数学の知識は多少必要なので、全く数学がわからない人は1つ上の本など数学の基礎を身に付けてから読みたい。
NHKスペシャル深海プロジェクト取材班+坂元志歩『ドキュメント 深海の超巨大イカを追え!』光文社新書
→少し前に流行った、生きたダイオウイカの撮影成功に関するドキュメントである。深海はまだわかっていないことが多く、現代でも事あるごとに発見がある。そのような発見についてどのようなプロセスを辿ったかがわかるので、ダイオウイカや深海生物について興味がある人は1度は読みたいし、その他の人も読んでほしい作品である。なお、イカに関しては『イカはしゃべるし、空も飛ぶ 面白いイカ学入門』(講談社ブルーバックス)という本もある。
中野信子『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』幻冬舎新書
→脳科学者の1人である著者がわかりやすく、脳内分泌物質であるドーパミンについて論じている。なお、簡単にと言ったように、多くの読者を獲得しようとしているので、わかりやすい分、既にある程度理解している人にとってはおもはゆい気持ちにされるかもしれない。その場合は医学書院や南山堂やひつじ書房など医学入門書を作成している出版社の該当する本を読むと良い。
内井惣七『ダーウィンの思想―人間と動物のあいだ』岩波新書
→ダーウィンの『種の起源』をわかりやすく書いた本である。生物についてある程度知識がある場合には『種の起源』を読んだ方が良いが。全くない場合にはこの本か入ると理解がしやすい。現代にまで大きな影響を与えているダーウィンの思想について理解することは文理問わず重要なことである。なお、ダーウィンの思想が現代でも大きな影を落とす大きな要因は、キリスト教とダーウィニズムは対立すると考えられているからである。そのような内容を扱った本としてはCan a Darwinian be a Charistian?という洋書が存在する。
R.P.ファインマン『ご冗談でしょう、ファインマンさん』岩波現代文庫
→天才物理学者の体験談を綴った本である。特に、MITからプリンストン大学へと進学先を変更する要因を与えた師の発言は有名であり、良き師との出会いというのは重要であることが分かる。なんにせよ、1人の理系学者の人生を読むのも大きな参考になるであろう。全体的に読みやすいのもおすすめの理由である。
筏義人『環境ホルモン』講談社ブルーバックス
→環境ホルモンは生物と化学にまたがる内容であり、環境を考える上で重要な視点となっている。そのような環境ホルモンについてわかりやすく書いた本である。ただし、少し古い本なので、基礎的な理解ができた後は、専門的な本にチャレンジしてみると良い。
松山恵『江戸・東京の都市史 近代移行期の都市・建築・社会』東京大学出版会
→都市研究は文理の境界を超えて議論されることが多く、この本もその典型である。建築に関する理論的な説明は少なく、都市の変遷を追っているので、都市計画や都市開発といった広い視野で行なう建築について興味がある人が入門的に読むのに参考になる。また、東京について関心がある人にも良い。ただし、高い本なので図書館で借りると良い。
[小説類]
複数の出版社から出されているものもあるので、特におすすめの出版社がある場合にはその出版社を明示する。
ジョナサン・スウィフト『ガリヴァ旅行記』中野好夫訳、新潮文庫
→4篇からなるガリヴァの旅行は人とはどのようなものであるかということを皮肉と風刺によって描き出している。典型的な風刺を読み解く中で、独特な視点で社会や人を捉える方法を知ることもでき、新たな視点を獲得できる。
チャールズ・ディケンズ『クリスマス・キャロル』
→良く知られた名作であるが、イギリスにおいてはクリスマスに読む定番作品である。過去・現在・未来から自己を見直したスクルージーのように、静かに自分を捉えなおしてみるきっかけにしても良いかもしれない。
ユゴー『レ・ミゼラブル』
→題の通り、みすぼらしい人々の話。感動作の定番となっているが、それぞれの人物が抱える心理的な葛藤を追っていく作品である。苦悩を1つの人生の形とすれば、人生の参考にもなる。
ロバート・マーフィ『風が吹くとき』
→反戦作品であり、映画化もされている有名作である。真面目で純朴な夫婦を襲う核戦争の様子を描いている。戦争について少し考え直す機会になる。
シェイクスピア『ハムレット』
→ハムレットの苦悩を描く作品である。人によって悩まされるハムレット独特の心理的な苦悩は心理学の分析の対象となるほどであるが、そのような心理を理解することで、自身が苦悩すべき状況に直面したときに参考になる。
オスカー・ワイルド『幸福な王子』
→タイトルに反して、不幸な境遇に見える王子の像と鳥の姿を通して、本当に幸福であるとはどのような状態なのかを考えさせられる作品である。
カフカ『変身』
→ある日虫に姿を変えてしまった男の話。変身した虫は次第に体が小さくなっていくが、それは彼の世間での存在感が薄れていくことに比例しているように見える。
日本人の作品については知っている可能性もあると思うので作品のみを列挙する。
紫式部『源氏物語』
『宇治拾遺物語』
近松門左衛門『曽根崎心中』
上田秋成『雨月物語』
夏目漱石『こころ』/『三四郎』
三島由紀夫『金閣寺』
森鴎外『舞姫』
泉鏡花『高野聖』
川端康成『伊豆の踊子』
太宰治『人間失格』
梶井基次郎『檸檬』
葉山嘉樹『セメント樽からの手紙』
小林多喜二『蟹工船』
[マンガ・映画・ゲームなど]
今回は参考になるマンガ・映画・ゲームなどについて少し触れる。もちろん、原作は本であることもあるが、敢えて映像化されたものを取り上げたものもある。
木尾士目『げんしけん』
→大学生のオタクサークルを描いた作品。大学生の生活をなんとなくつかむのに参考になる。恋愛物として特徴もあるので、大学生の生活前に読むと良いか。
桜井画門『亜人』
→「亜人」という新しい人種が存在したらという設定に基づく作品である。未知が他人を恐怖し、その人間を迫害するという根源的な差別の問題にも気づかせてくれる作品でもある。単純にストーリーを楽しむのにも向いている。
三浦しをん『舟を編む』
→辞書編集をテーマにした作品であり、その中に見える人間関係も興味深いが、1つのことに人生をささげるという姿勢を見る中で、自身の人生の目標を考える参考にすることができる。
『FRAGILE® ~さよなら月の廃墟~』
→人とのつながりを考えさせられるゲーム。廃墟を探索しながら、1人の少女を探し求める少年の姿を見ながら、人とのつながりの大切に気づくことできる。
『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』
→大きな選択が存在することで有名な作品。その大きな選択とは結婚相手を選ぶことである。子ども向けゲームでありながら、実際の人生においても重要な選択を迫られるからこそ、自身の人生に大きな影響を与えると言える。
『ハルタとチカは青春する』
→時代性を反映したのが特徴の作品。人の闇に敢えてスポットを当てているのが特徴と言える。時代性という点で言えば、『氷菓』でも見られるものであるが、歴史叙述としての過去の影響を考える鏡となる作品であり、過去の見方を改める1つの端緒としてほしい。
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