定番教材を楽しむ読書案内 #2 『羅生門』
『羅生門』といえば、多くの高校1年生向けの教科書に採用されており、来年度から始まる新課程のカリキュラムでも無事にカットされることなく、残った作品です。それだけ多くの高校生が読んだ作品であり、これからも読まれ続ける作品であると言えます。
『羅生門』を巡って、よく扱われる話、特に味読と呼ばれるような精読が終わって改めて作品の主題やテーマ、作者の考えを読み解くような最後のまとめのような授業において扱われる話として、結びの改変が挙げられます。
現在、教科書に載せられている文章の最後は、「下人の行方は、だれも知らない」となっています。しかし、初稿段階では「下人は、既に、雨を冒して、京都の町へ強盗を働きに急ぎつつあった」となっており、全く違う結びが与えられていたのです。これに関して色々説はありますが、今回紹介する本が関係するのがこの部分です。
『六の宮の姫君』は、小説でありながら文学に関する深い読みというか洞察がなされており、読み応えのある作品です。この中で、「義仲論」を取り上げて、芥川龍之介が憧れた義仲の特徴を『羅生門』の下人に見出してストーリーが進んでいきます。結末としては現在の形は小説家芥川龍之介らしさが出ており、普遍性は一気にましたが、当時の形の時にあった若い芥川の熱というものがなくなり、「義仲のなり損ないなんだ」とまとまっています。
若い頃の芥川はさまざまな経験をしており、まさに下人が作者の投影なんだという考え方は納得がいくところが多いです。こういう視点を生徒に向けることで、芥川龍之介ってどんな人生を送ったのと関心が向き、幼馴染との結婚ができなかった話、ラブレターの名手と言われた話、不倫沙汰などなどの略歴への関心も高まる気がして、この話は結構好きなんです。
大人になっても楽しめる本なんで、ぜひ気になった方はご一読ください。
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