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インデックスファンドの手数料が下がると、そのぶん儲かるの?(+11月上旬の日記)

2018年に「つみたてNISA」が始まる前後からインデックスファンドの低コスト化が急速にすすみました。そんな中、「投資信託を保有している間にかかる運用管理費用(信託報酬)が下がるとそのぶん儲かる」と思っている人もいるようです。はたしてそうなのでしょうか。


投資信託にかかる手数料

まずは投資信託にかかる手数料についてのおさらいです。投資信託は運用をお任せするわけですから、さまざまな手数料がかかります。

まず、投信を購入するときにかかるのが「購入時手数料」です。これは銀行や証券会社といった販売会社に対して支払う手数料のこと。スポーツジムにたとえると、入会するときに支払う入会金のようなもの、と考えればよいでしょう。

そして、スポーツジムの年会費にあたるのが、「運用管理費用(信託報酬)」です。入会金は入会時に一度支払えばおしまいですが、会員でいる限り、会費はずっと払い続けますよね。

それと同じで、投信を保有している間、ずっと投信の資産から間接的に支払われるのが運用管理費用です。運用管理費用は運用会社、販売会社、信託銀行の3者に支払われます。

具体的には、投信の資産残高に応じて年率〇%という率が定められていて、毎日、毎日、信託資産から差し引かれていきます。みなさんが目にする投資信託の値段である「基準価額」は、この運用管理費用が差し引かれたあとの数字です(基準価額からさらに運用管理費用が差し引かれるわけではありません)。

ちなみにNISAの「つみたて投資枠」の対象となっている投資信託は購入時手数料はゼロで、運用管理費用(信託報酬)にも上限が設けられています。

4月から目論見書に総経費率を記載

保有中には運用管理費用(信託報酬)以外にも、株式などを売買するときにかかる売買委託手数料や保管費用、監査法人に対して支払われる監査費用なども差し引かれます。2024年4月からは運用管理費用(信託報酬)以外の費用を含めた「総経費率(投信の純資産に対する総経費の比率)」についても目論見書に記載されるようになりました。

総経費は「信託報酬」と、それ以外の「その他費用」の合計。信託報酬は投信の販売や運用にかかる費用で、販売会社や運用会社が受け取る。通常、信託報酬に含まれないその他費用もある。海外の株式や債券といった有価証券などを現地で保管してもらうために、海外金融機関に払う保管費用などだ。株価指数などの使用料や書類の印刷費用は、信託報酬に含めるかどうか投信により異なる。

(2024.9.23 日経新聞電子版「新NISAの投信、「総経費率」で比較 新興国は割高に」/編集委員 田村正之)

そして、3つ目が解約するときにかかる「信託財産留保額」です(かからない商品もあります)。信託財産留保額は投信の資産に戻されるので、金融機関に支払う手数料とは性格が異なります。

手数料が下がるとそのぶん儲かる?

さて、インデックスファンドの運用管理費用(信託報酬)引き下げのニュースをみて、「運用管理費用が下がった分だけ儲かる」と考える人もいるようですが、それは誤解です。

そもそもインデックスファンドは目標とする指数(ベンチマーク)と同じように動くことが求められます。指数との連動性が高いことがよい、とされているわけです。

運用管理費用が安くなると、資産残高から「差し引く」手数料が減ります。投資信託の価格である基準価額は(運用管理費用を差し引いたあとの)純資産総額を受益権総口数で割ったものですから、「差し引く」額が小さいことは指数との連動性を高めるという意味ではいいことです。

ただ、運用管理費用の低さは指数との連動性を高める要因のひとつではありますが、それがすべてではありません。

指数とのかい離は信託報酬だけでは決まらない

指数とのかい離はいろんな理由で発生します。例えば、投信の中身(ポートフォリオ)の構築方法をはじめ、(資金の出入りが大きく)頻繁に株式を売買している、運用管理費用以外のコストが高い、配当金を再投資するタイミングなどによる要因などです。対象指数に連動される技術力が試されているわけです。

そのため、運用管理費用がいちばん低いインデックスファンドが対象指数とのかい離がもっとも小さいとは限りません。

いずれにせよ、インデックスファンドはベンチマークとの差が小さいことが評価されますから、「指数を無視して基準価額が上昇するわけではない(=儲かるわけではない)」ことは押さえておきましょう。

コストの前にどの指数を選ぶか

手数料よりも前に、どの指数を選ぶのか、つまりどの範囲(=国や地域、会社群などを)をカバーする指数なのかを理解して、選ぶことが大事です。全世界なのか、先進国なのか、米国なのか…。また、同じ地域・国でも複数の指数がありますから、中身をきちんと確認しましょう。

また、同タイプの中で運用管理費用(信託報酬)や総経費率がいちばん低い投信を追いかけ続ける必要はなく、つみたて投資枠の対象商品で低コストグループ(上位3~5本程度)の中から、ほかのポイント(純資産総額が安定的にふえているか、資金が安定的に流入しているか、信頼できる運用会社か)などを加味しておおらかな気持ちで選べばよいのではないでしょうか。

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日記&日々の雑感(11月1日~10日)

10月から11月は出張シーズンです。ところが、11月に入っても、台風が発生するなど、移動が大変なことに。なかなかスリリングな11月上旬でした。

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