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「個人投資家が選ぶ! Fund of the Year 2024」の結果と雑感(+1月中旬の日記)

2024年1月24日(金)に個人投資家が選ぶ! Fund of the Year 2024」の結果発表と表彰式が行われました。


個人投資家なら誰でも投票できるように

このアワードは2007年に「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year」としてスタートしました。

「個人投資家が選ぶ! Fund of the Year」とは?
証券会社の宣伝やうたい文句にまどわされず、自分たちにとって本当によいと思える投資信託を個人投資家たちが投票で選び、それを広めることで「自分たちの手でよりよい投資環境を作っていこう!」というイベントです。

今回から
●「個人投資家が選ぶ! Fund of the Year」に変更
→ブロガーさんに限定せず、個人投資家さんは誰でも投票できるように
●インデックス部門とアクティブ部門を分ける
→両部門投票してもよいし、一部門だけでもよい(投票数は圧倒的にインデックス部門の方が多かったですね…)
という形に変わりました。

ここ数年、上位はほぼインデックスファンドで占められていたので、アクティブファンドの結果も含め楽しみにしていました(が、例年土曜日開催なので、油断して金曜夜に仕事を入れてしまい、会場には行けませんでした…涙)。

「インデックス部門」はオルカンが6連覇

気になる結果は次の通りです。まずはインデックス部門トップ10です。

【インデックス部門】
1位:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
2位:eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 
3位:<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド                 
4位:eMAXIS Slim 先進国株式インデックス 
5位:楽天・プラス・オールカントリー株式インデックスファンド
6位:eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
7位:たわらノーロード 先進国株式          
8位:<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド
9位:はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オールカントリー)         
10位:楽天・全米株式インデックス・ファンド 

1位を獲得したのは三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim全世界(オールカントリー)」、愛称:オルカン。243名・655ポイントと圧勝で、これで6連覇です。

ここ数年の傾向はあまり変わらず、三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim」シリーズや、ニッセイアセットマネジメントの<購入・換金手数料なし>、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」など、代表的な低コストインデックス投信のシリーズがランクインしています。

ブロガーの菟道りんたろうさんの以下の指摘があるように、インデックスファンドはどの指数に連動するか、という視点で商品を選択するわけですから、現状では(日本を含む)全世界や米国株、(日本を除く)先進国株をカバーする指数が好まれている、ということでしょう。

そもそもインデックスファンドは規模の経済が働く商品のため、どうしても特定のファンドによる独占・寡占になりやすいのですが、今回上位を占めた3ファンドは、いずれも「全世界株式」「S&P500」「先進国株式(日本除く)」それぞれの指数に投資するインデックスファンドとして圧倒的な地位を築いてています。そして、順位は、それぞれのファンドへの評価というよりも、指数の人気を反映しているということです。

ブログ「The Arts and Investment Studies」Posted by 菟道りんたろう

「アクティブ部門」1位は鎌倉投信「結い2101」

今回初の試みとなった、アクティブ部門の順位は以下の通りです。

【アクティブ部門】
1位:結い2101(鎌倉投信)
2位:セゾン・グローバルバランスファンド(セゾン投信)
3位:コモンズ30ファンド(コモンズ投信)
4位:セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信)
5位:SOMPO123 先進国株式(SOMPOアセットマネジメント)
6位:なかの日本成長ファンド(なかのアセットマネジメント)
7位:農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね(農林中金バリューインベストメンツ)
8位:ひふみ投信(レオス・キャピタルワークス)
9位:楽天・高配当株式・米国ファンド・四半期決算型(楽天投信)
10位:Tracers S&P500ゴールドプラス(日興アセットマネジメント)

初の1位に輝いたのは鎌倉投信が運用する「結い2101」でした。ブローガーさんなどには人気のある投信ですが、少なからず驚きました。というのも、同投信は、目標リターン(信託報酬控除後)を長期的に年率4%以上、変動リスクを年率10%以下においていて、直近のリターンも決して高いとはいえないからです。

それでも評価されたのは「お客様から託された資産の長期的な成長と、社会の持続的発展の両立のために、事業性と社会性を兼ね備える"いい会社"に投資する」という運用理念に共感する投資家さんたちの票を積み重ねたからでしょう(長期的に経済的リターンと社会的リターンの両立をめざしてほしいです)。

そういう意味では、アクティブファンドは(指数に勝つというよりは)指数にこだわらない運用を行う投信なのだと思います。もちろん、指数に勝つ、を目標に掲げる投信もありますし、要はそれぞれの特徴・個性をみることが大事、という意味です。

さて、アクティブ部門の上位には個性的な投信が並びますが、お金の行き先を意識できる”手触り感”と対話を重視している運用会社・商品が目立ちます。

市場に幅広く投資するインデックス投信に比べて、アクティブ投信はより丁寧な情報開示が求められます(情報開示が優れているからよい投信とは言えませんが、少なくとも購入するか否か、持ち続けてよいかどうかを判断する上では大前提だと思います)。

下に「5つのP」をあげましたが、これらを総合的に見ることが大事でしょう。

【5つのP】
①Philosophy(投資哲学)
②Process(投資プロセス)
③Portfolio(ポートフォリオ=①②に沿った中身になっているか)
④People(運用体制)
⑤Performance(運用実績)

投資哲学がどんなによくても成績がボロボロではだめでしょうし、短期的な成績の良さに飛びついても、リターンは上にも下にもブレますから、①どんな投資哲学なのか、②どのような基準・プロセスで投資先を選んでいるのか(または手放すのか)、③どんな中身(ポートフォリオ)なのか、その特徴を理解していなくては持ち続けるのは難しいと思うのです。

長期的な投資を行う上で、投信を購入したら終わり、ではなく、そのまま保有・継続してもよいかを判断する必要があります。その判断材料として、①から⑤の一貫性が保たれているかはとても大切です。

二項対立ではない

昨年(2024年)から新NISAスタートがスタートし、市場全体に投資をするインデックス投信が注目を浴びています。が、パッシブ運用とアクティブ運用は両輪です。

「インデックス投資とアクティブ投資は「対立事項」ではありません。健全なアクティブ投資があってはじめて、健全なインデックス投資は成り立ちます」

インデックス投資アドバイザーのカン・チュンドさん

インデックスvsアクティブといった軸で話している限りは堂々巡りな気がします。AかBかではなく、モザイク型なんじゃないかな、と。インデックスファンドとアクティブファンドでは選ぶ基準も異なれば、求めるものも異なります。

今、コツコツ投資家さんのインタビューをしていますが、100%インデックスファンドでシンプルな運用を心がけている人も多いですが、「インデックスファンドの積み立て+個別株投資」「インデックスファンド+一部アクティブファンドを持つ」「インデックスファンドからアクティブファンドにシフト」など様々なかたちがあります。

また、個人投資家が選ぶ! Fund of the Year」に参加した個人投資家さんからはこんなコメントもありました。

来年以降ファンドオブザイヤーをより興味を持てるものにするための希望として、注目のファンドやその年に話題になったファンドの内容を掘り下げるコーナーがあってもいいのではないかということです。
例えば今回アクティブ部門1位である「結い2101」がどのような運用方針でどれくらいの運用成果を目指していて、構成銘柄はどのようなものがあるかなどの解説や、最近本件オルカンより成績がいいのではないかと言われることもある野村アセットマネジメントのノムカンこと「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」と本家オルカンとの比較など、熱い思いにプラスして数字で投資信託を学べるコーナーなどがあれば、参加者の行動が翌日から変わるきっかけになりそうな気づきや示唆を得られる、より有意義な会になりえるのではないかと感じました。

https://noriyusaku1128.com/fund/fund-of-the-year-2024/

アワードも、どんどん進化していけるとよいですね。ボランティアで運営に携わっている皆さま、投票した投資家の皆さま、お疲れさまでした! これからも、前向きな発信を心がけてまいりましょう。

*第3部に登壇されていた加藤航介さんのnoteと日経新聞の記事を追加

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日記&日々の雑感(1月11日~20日)

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