見出し画像

アセクシャルを自認した私は新しいパートナーの形を構築した

私には、異性のパートナーがいる。彼は、5年くらい前に恋愛関係で付き合っていた人。付き合っていた当時、私は彼に向けている感情が恋愛感情なのだと信じて疑わなかった。

ただ彼を前にしても身体に触れたいとか、キスをしたいとか、はたまたセックスしたいなどとは1ミリも感じていなかった。話が合って尊敬できて好きなものも似ているから、彼とどこかに遊びに行ったり会話をしたりして楽しく過ごせればと思っていただけだったと今振り返ると思う。

思えば、小学生の頃から私は同性よりも異性と話している方が心地よいと思っていた。それは、女の子は基本的に恋愛話が多かったから。少女漫画を読んで盛り上がっていたり、有名な芸能人をいくつかピックアップしてどの人がかっこいいと思うか?みたいなことをしていたりした。

当時の私は自分の感情を分析していたわけではなかったので周りの子とどのように考え方が違うのかまではわからなかったけど、私の好きと周りの子の好きの認識が異なるというのはなんとなくわかっていた。あと私は恋愛が描かれている作品よりも熱い友情だったり目標や夢に向かって奮闘する様子が描かれている少年漫画の方がはるかに好きだったし、異性の外見でかっこいいとかそういう感情がわくことが一切なかったから、どの人がかっこいいと思うとか聞かれても困るし決めるのもとても苦痛だったのを覚えている。

だから、私は何かと理由を付けて男子と遊べる機会を作るようにしていた。同性と遊ばない明確な理由がないと「好きなの?」と言われたり、恋愛関係のように勘違いされたりして本当に面倒くさいので「将棋をする」「ゲームをする」といった同性の友達とはできない遊びの約束をして、男子といられる時間を確保していた気がする。

でも中学生以降、私は男子と仲良くするのが困難になってしまった。なぜなら、男子も女子も何かスイッチが入ったかのように変わってしまったから。普通の人は感じたことがないかもしれないけど、私は教室中のすべての人が異様な雰囲気をまとっているように見えた。その当時は「何かがおかしい、私以外の人の様子が変だ」と思うしかなかったけど、今よくよく考えるとあれば性的感情・恋愛感情が周りの人に強く芽生え始めた時期だったのだと思う。私はそういう感情がなかったから、周りをおかしいと思っていたのかもしれない。

男子と二人で話をしているとそれだけで恋愛関係なのだと噂されるような状況だったし、男子と仲良くなって変な気を持たれても困るのでそこから私は女子としか関わらなくなった。


今パートナーである彼とは、マッチングアプリで出会った。なんとなく気が合いそうだと思い、私から連絡をしたのが始まりだ。予想通り、気が合って何年ぶりかわからないくらい久しぶりに男性と深い話をすることができた。私はそれがとても嬉しかったし楽しかった。私が求めていたのはこれだ!と思った。

マッチングアプリなので私も彼も恋愛関係になったけど、やはりうまくはいかず別れることになった。私は別れた後も彼と普通に話がしたいと思っていたけれど、周囲の人に「都合の良い人になっちゃだめ。男の人なんてたくさんいるんだから、もっと他に良い人を探した方がいいよ」と言われ、男性と女性は恋愛関係でなくなったら都合の良い関係とされてもう話せないのかと絶望した。「良い人を紹介してあげるよ」という人もいたけど、私は他の人と関係を作りたいというより彼との会話でしか生まれない話をしたかっただけだったので断わった。

その後、私はシェアハウスに2年間滞在する機会があった。シェアハウスには私のイメージとは全く異なりさまざまな価値観の人がいて、世間に合わせなくてもいいのだと気づけた貴重な体験だった。その頃から、私は自分の思考をよく深堀りするようになった。当時は彼と別れてから2年以上経っていたのだが、私は変わらず彼と話したいと思っていたのでなぜこんなに彼を想っているのか、彼と仲良くなったとしてどうしたいというのか考えることにした。

その答えはそう簡単に出てこなかった。男性と女性は恋愛・結婚以外に、良い関係性は築けないという周囲から植え付けられた考え方が思考から離れなかったからだ。

そんな折、彼から連絡が来て久しぶりに話せることになった。私は話せなかった2年間を埋めるようにたくさんの話をした。それはとても楽しい時間だった。その後も彼とはどちらからともなく連絡をしてビデオ通話したり、直接会って話したりする関係性になった。

そして私は彼に向けていた感情を思い出し、彼に向ける感情・親友に向ける感情・シェアハウスでできた気の置けない人に向ける感情の何が違うのかを考えた。

答えは、どれも同じだった。私の好きは「人として好き」であり、それ以上でも以下でもない。他の人が何を持って恋愛といっているのかわからないし、好きを恋人と友達によってどう分けているのか私には全くわからなかった。

これは、アセクシャルというセクシャルマイノリティに該当するらしい。アセクシャルのなかにも色々な人がいるらしいけど、私は「恋愛感情も性的感情も抱かない人」に分類される。セクシャルマイノリティの中でもマイノリティだといわれており、これを知ったときは「私と同じような人もいるんだ!よかった」と思ったと同時にうっすらとしかない孤独感が増していくのがわかった。

私のような人と、異性は仲良くしていたいと思わないのではないかと勘違いしていたからだ。

彼とは「恋愛関係のような依存関係ではなく、お互い縛らずに連絡を取りたいときにとって会いたいときに会う、趣味も共有したかったら共有して楽しく過ごせる関係性」として合意のもとパートナーになったが、アセクシャルの件はまだ伝えていなかった。

最近彼から関係性について心配な部分があると連絡が来たため、私たちは直接会って話す機会を作った。

彼は私と違って恋愛感情も性的感情もある人だ。

私と恋愛関係にないのはわかっているけれど、だからといって他の人と恋愛関係や性的関係を結んでもよいのか悩んでいるようだった。多くの女性は、他に恋人などを作られたら嫉妬をしたり傷ついたりすると思うからそうならないようにちゃんと話しておきたかった。でもできることならこれからも関係性は続けていきたい、と彼はそう打ち明けてくれた。

私は今の関係性を続けていけるのであれば、恋人を作っても結婚をしてもそれは自由であること、また私はアセクシャルである件も伝えた。そして、私たちはお互い他に恋人などを作っていい関係値になった。(私は恋愛感情がわからないので、男友達を増やす感じになると思うが)彼は、この先も私との関係を切らずにすむような恋人関係を形成すると言ってくれた。(浮気と捉えられても困るので、恋人にはちゃんというように念を押しておいた。)

その後、私たちは「好きとは」「恋愛とは」「恋人とは」など、さまざまな議論をした。彼もマイノリティ側の考えを持っているようで、私の考え方に共感できる部分がたくさんあると話してくれた。彼は合理的に物事を考える人だからか、彼の中の恋人の定義も周囲に話したら99%批判されるような内容で面白かった(笑)

お互い仕事人間なので仕事の話はもちろん、将来やりたいことについての話もした。それは、とてもとても楽しい時間だった。

こうやって話すと多くの人はきっと「それはパートナーじゃなくて、友達なのでは?」と思うかもしれないけど、恋愛・性的関係・結婚のすべてを望まない私にとって、彼はれっきとした唯一無二のパートナーだ。一時的な関係や浅い会話で繋がっているような関係ではない。

仕事でも人間関係でも生きる中で疑問や不安に感じることなどがあれば、それを1つのテーマとして議論をしてお互いの中での結論を出し理解を深め合う。まず、こういう会話ができる人は滅多にいない。また、彼とは仕事でもお互い協力できる部分があるので仕事を依頼したりされたりすることも出てきているし、お互いの仕事内容をある程度理解できているので仕事上の悩みを相談し合える関係性なのもありがたい。趣味や好きなことも合うので、今後もお出かけしたり旅行したりする計画もしている。少なくとも私の中の友達には上記すべてを満たす人はいないので、彼は友達ではなくパートナーなのだ。

私には多くの人にある恋愛感情・性的感情がないからこそ、生き方や人間関係の形成はとても悩む部分だし今でも結構悩んでいる。ただ、すべて私のやり方次第で状況は如何様にも変えられるはずだと思っているのでそこまで辛くはないし、むしろどうやっていこうかと考えるのが楽しい。

現に、私は恋愛も結婚もしていないのに人生を生きるうえで大切なパートナーが作れた。普通ならあり得ないことだと思う。これからもきっと、考えなくてはならない部分がたくさん出てくるのだと思うけど、自分はどうしたいのかを見失わないように心に耳を傾け私だけの人生を歩みたい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?