コスタリカってどんな国? | ミュージック・ジャーニーvol.54
皆さん、民音ミュージック・ジャーニーへようこそ。
今回は、南北アメリカ大陸を結ぶ地峡地帯に位置するコスタリカ共和国へ、駐日コスタリカ共和国大使館の皆様とともにご案内いたします。
コスタリカとは、スペイン語で「富める海岸」を意味します。国名の由来通り、太平洋(西側、南側)とカリブ海(東側)に囲まれており、沿岸には美しいビーチが無数に点在しています。
また、国土の中央には複数の山脈が背骨のように走っており、海だけでなく山や森林といった豊かな緑にも恵まれているのがコスタリカの魅力です。
今回は、そんなコスタリカの自然を体感できる楽曲とともに旅をスタートしましょう。2008年に開催した民音公演『セントロアメリカの風』より、グラミー賞を3度受賞したコスタリカの音楽グループ「エディトゥス」の演奏で、「樹木」をお送りします。楽器を通じて、コスタリカの湿った森林に響く音が巧みに再現される様子をお楽しみください。
「樹木」
コスタリカの国民性・ライフスタイル
コスタリカには、ほかの国にはない独特な社会制度が存在しています。まずは、2つのキーワードを通して、コスタリカの国民性やライフスタイルに触れていきましょう。
「兵士よりも多くの教師を」
コスタリカは、世界で初めて、憲法の定めるところによって常設の軍隊を廃止した国です。実際のところ、内戦終結後の1948年12月1日に現行の憲法が制定されてからというもの、一度も軍隊が組織されたことはありません。
「兵士よりも多くの教師を」というスローガンのもと、軍事予算をゼロにして、国家予算の多くを教育・医療・福祉に傾けることで、社会の安定を築いた成功例として知られています。なかでも教育分野においては、憲法で「国の教育費はGDPの6%を下回らないこと」と定められており、国際的に見ても高い水準が保たれています。(OECD加盟国の平均で4.9%)
97%を超える識字率や高度な社会保障・健康保険制度、専門性の高い高等教育の充実などが実現された結果として、コスタリカは「地球幸福度指数」(ニュー・エコノミクス財団)で3回連続の1位を獲得する幸せの国としても注目を集めています。
前向きな国民性を表す言葉「プラ・ビダ」
プラ・ビダとは、老若男女問わず、挨拶をはじめとする日常のさまざまな場面で使われている言葉です。直訳すると「純粋な人生、素朴な生活」といった意味を持ちますが、実際には「元気ですよ」「ありがとう」「OK!」などの幅広い意味合いで使用されています。
「人生を楽しむ」「すべてうまくいく」といった、コスタリカの人々の前向きで穏やかな気質を象徴するような言葉として広く愛用されています。
コスタリカの玄関口 首都サンホセ
標高1,200mに位置する首都のサンホセは、コスタリカ観光の玄関口です。平和を愛する国家の価値観を象徴するように、ここには1980年に設置された「国連平和大学」があり、国連の研究機関および教育機関として各国から留学生が訪れます。
コスタリカの主要な観光地までは、サンホセを旅の拠点にすればどこでも容易にアクセスできます。サンホセには観光客向けの宿泊施設ももちろん充実していますが、地元の人々の生活をダイレクトに感じられるスポットが多いのも魅力です。
たとえば、サンホセでもっとも大きな中央市場では、現地の新鮮な野菜や魚介類、トロピカルフルーツが店頭を彩り、多くの人々で賑わう活気を味わうことができます。コスタリカではとうもろこしやお米、肉料理がよく食べられており、代表的な料理としてはご飯に豆を混ぜ込んで炒めた「ガジョピント」や牛肉と野菜をあっさりとしたスープで煮込んだ「オジャ・デ・カルネ」が挙げられます。
また、魚介類も豊富にとれ、飲食店ではサラダ・ご飯・豆・野菜・魚または肉の組み合わせで構成された定食「カサード」が人気です。
豊かな自然を利用したエコツーリズム
国土の約27%が国立公園、自然保護区で構成されるコスタリカは、美しい自然と豊かな生態系に恵まれた自然大国として広く知られています。また、2021年には、海洋保護区を最大30%にまで拡大しました。
国を挙げて取り組まれるエコツーリズム
エコツーリズムとは、自然環境などの資源を損なうことなく、自然を対象とした観光によって地域の発展を図る取り組みです。ボートでしか行けない「トルトゥゲーロ国立公園」や、最大で最後の秘境と呼ばれる「コルコバード国立公園」でさえ、清潔で快適な宿泊施設が整備されており、安全に自然観察を満喫することができます。
地球上の全動植物種の5%が生息する生き物の楽園
コスタリカは世界のわずか0.03%しかない面積の国土に、地球上の全動植物種の5%が生息する生態系の宝庫です。鳥類にいたっては全種類の10%もの種が生息するとされており、手塚治虫氏の漫画『火の鳥』のモデルになったケツァール、色とりどりのクチバシを持つトゥカンなど、熱帯ならではめずらしい種族に出会えます。
コスタリカの音楽文化
首都サンホセでの滞在中、一度は訪れたいのが中心街にある「コスタリカ国立劇場」です。完成は1897年であり、建築費は当時主流産業となっていたコーヒーに税金を導入することで賄われました。
法律により「最高レベルの芸術作品を上演し舞台芸術を推進すること」と定められており、国内最高峰の芸術・文化の発信地となっています。パリのオペラ座をモデルに造られたとされ、夜には美しくライトアップされるサンホセのシンボルでもあります。
コスタリカでは、9月15日の独立記念日に合わせて、町中が国旗の色である白・青・赤の三色で装飾されます。当日には各地でパレードが開催され、民族衣装を身にまとった多くの子どもたちが演奏や踊りを披露しながら行進します。
コスタリカの音楽文化には、中南米の周辺国と共通する要素が数多く存在します。その1つが民族音楽の要素を持ったフォルクローレです。フォルクローレはもともと民族音楽を指す言葉として使われていましたが、現在では民族音楽的な要素を持ったポピュラー音楽なども表すようになり、国や地域ごとに独自の発展を遂げています。
ここでは、再び『セントロアメリカの風』民音公演から、エディトゥスの演奏でコスタリカの都市フォルクローレを代表する曲「予感」をお届けいたします。
「予感」
旅のおみやげ アラビカ種のコーヒー豆
コーヒー豆を生産する国は数多くありますが、法律によってアラビカ種以外の生産が禁止されているのは、世界の生産国のなかでもコスタリカのみです。アラビカ種は栽培条件が厳しく、品質管理がとても難しい品種として知られています。
コスタリカでは、古くからコーヒー豆を運ぶのに「カレタ」と呼ばれるカラフルな花の模様が描かれた牛車が使われており、牧牛と牛舎の伝統は世界無形文化遺産として登録されています。高い品質管理のもと、十分な標高で育てられたアラビカ種のコーヒー豆は、その他の産業が発展した現在でもコスタリカの代表的な名産品です。
コスタリカの国立音楽教育システム「SiNEM」
最後に、駐日コスタリカ共和国大使館が推薦するコスタリカの国立音楽教育システム「SiNEM」についてご紹介します。
SiNEMとは、オーケストラでの楽器練習を通じた青少年の育成プログラムです。主に貧困地域で生活する子どもや若者が音楽教育を受ける機会を提供する取り組みの一環として、2007年に5月に創設されたシステムであり、現在では国内に20ヶ所の拠点があります。楽器との触れ合いやアンサンブルの経験を通して、平和的で協力的な人格形成を支援し、暴力の防止と平和による社会の安定を促進することを目的としています。
今回は、3つの地域で行われた演奏の様子をご覧ください。
1.Charío Fuentes "Parrandera" - SiNEM Liberia
2.Tacuma and Anancy's Party - SiNEM Limón
3.A la sombra del Poás - SiNEM Alajuela
皆さん、コスタリカへの音楽の旅はいかがでしたでしょうか。
音楽の旅はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに。
協力:駐日コスタリカ共和国大使館
写真提供:The Press and Public Relations Department of the Ministry of Public Education from Costa Rica、 Communication Unit of the Ministry of Culture from Costa Rica、the Costa Rican Institute of Tourism (ICT)
Min-On Concert Association
-Music Binds Our Hearts-
ご案内
この記事は英文での提供もしています。
https://www.min-on.org/13650/min-on-music-journey-no-61-costa-rica/
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