江中みのり

小説家。第24回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞受賞。 『吉原百菓ひとくちの夢』壱、弐 『時は黙して語らない』 『小料理屋「春霞亭」 かりそめ夫婦の縁起めし』(メディアワークス文庫)発売中。

江中みのり

小説家。第24回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞受賞。 『吉原百菓ひとくちの夢』壱、弐 『時は黙して語らない』 『小料理屋「春霞亭」 かりそめ夫婦の縁起めし』(メディアワークス文庫)発売中。

最近の記事

生涯忘れ得ぬ思い出を~ミュージカル『憂国のモリアーティ』コンサートを観て

そこにいられたことを奇跡と思えるような、夢のごとき5日間だった。 「ミュージカル『憂国のモリアーティ』コンサート」が、2024年7月にシアターHで開催された。 「モリミュ」の略称で愛されるこの作品のひとつの集大成として、歌もトークも何もかもが、とても楽しく充実したコンサートだった。 今回は演劇的ストーリーを伴わないコンサートだったから、「これが観られて嬉しかった!」がメインの感想になりますし、どこまでも「私がそう感じた」感想ですので、違うことを感じた方はそれを大切にしてい

    • フォーランドとアメストリスの思い出

      今年に入ってから観た、感想を残しておきたいと思った二つの舞台の感想をまとめました。 メインがハイカステージ、おまけで舞台ハガレンのことを書いています。 どちらかのみ読んでいただいても大丈夫な仕様です。 『HIGH CARD the STAGE – CRACK A HAND』感想 楽しくて、何だかハッピーな気持ちで劇場を後にできる、愛のある作品であったと、半年経った今でもしみじみ思う。 2024年1月、『HIGH CARD the STAGE – CRACK A HAND

      • 長い夜の明けたその先で ~ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.5―最後の事件―

        長い長い夜の、明けるときが来た。 犯罪卿が仕立てた、名探偵が主人公の劇が、ついに終幕を迎える。  「ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.5―最後の事件―」が無事に幕を開け、そして一公演も欠けることなく、本日無事に幕を下ろす。 「モリミュ」の略称で親しまれるこの作品を初演からずっと見てきたが、ついにここまで来たのかと、一観客ながらに感慨深い。  世に2.5次元舞台は山ほどあって、あのマンガもこのアニメも次々と舞台化されていく中で、続編をどれほど待望していても、叶わぬ作品

        • 謎の彼方に目を凝らせ ~ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.4―犯人は二人―

          深き闇と眩い光が、謀られた運命に引き寄せられ、ついに相まみえた。 決して後戻りできない道が、鮮やかな緋色に塗られていく。   「ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.4―犯人は二人―」(通称・モリミュ)が先日ついに幕を開けた。 2021年8月のOp.3から約1年半ぶりのモリミュは、原作マンガ『憂国のモリアーティ』でいうと9巻~12巻の内容を扱っている。 平等な社会を目指す議員・ホワイトリーをめぐる「ロンドンの騎士」。 ジョンの婚約者メアリーが持ち込んだ謎「四つの署名」。 そ

          あんステで松田岳くんを発見してしまった

          タイトル通りの話をする。 私がいつも書くような、あの場面が好きだったとかこの場面がこうだったとか好きに書き散らかす舞台感想ではない。 あんステの乱凪砂くんというキャラクターを通して、私はこの世界に松田岳くんという役者を発見してしまった。その震えるほどの感動を覚えておきたくて私が私のために書く、役者さんをひたすらに褒めながら綴った、虚空に投げるラブレターだ。 ……と、ここで、普段から江中をご存知の方はもしかしたら、ちょっと待て、と思ったかもしれない。 私は普段から「仮面ライダ

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          砂漠の果てに見る色は ~舞台『BASARA』を観

          文明の滅びた日本を舞台に、「運命の子供」として生まれた少女が革命を巻き起こしていく。 マンガ史に残る不朽の名作として名高い、田村由美先生の『BASARA』。重厚で波瀾に満ちたそのストーリーは、発表から30年以上経った今なお色褪せず、読む者を魅了し続けている。 その作品が、舞台になって、私達の前にやってきた。 2012年、『BASARA』は一度舞台化されている。その続編の関東編と紀州編も2014年に。さらには外伝も2019年に。 しかしこのたび、前回の続きでも再演でもなく、全

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          嘘とまことを突き抜けて ~ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.3—ホワイトチャペルの亡霊—

          闇と光。敵と味方。悪と義。嘘とまこと。犯罪卿と探偵――。めくるめく二項対立がぶつかり合い、混ざり合う。混沌渦巻く霧の街が、荘厳な旋律の中に浮かび上がる。 「ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.3 —ホワイトチャペルの亡霊—」。通称「モリミュ」の第3弾が、8月5日より東京ステラボールにて開幕した。 圧倒的な歌唱力の高さを誇り、初演から好評を博してきたモリミュの第3弾は、未解決事件として名高い「切り裂きジャック事件」に端を発するエピソードが取り上げられている。 去年、モ

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          英雄は永遠に滅びない ~宝塚宙組『シャーロック・ホームズ ~サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクターに拠る~』を観て

          先日6月26日に幕を上げた、宝塚宙組公演『シャーロック・ホームズ ~サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクターに拠る~』を観てきました。 これまでの宝塚観劇回数は、ちょうど片手の指で足りるほど。宙組初心者の感想です。キャストに詳しくないため、他人が見たご贔屓さんの演技の感想を求めている方には、ちょっと物足りないかもしれません。 宝塚のこと、用語などに関して、また作中台詞に関して、間違いや覚え違いがあると思います。 また、この演目を観に行こうと思い立った理由が、シャー

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          ≪魅力という極上の謎≫よ、どうか続け ~ミュージカル『憂国のモリアーティ』-OP.2 大英帝国の醜聞

          コロナ禍未だ収まりきらぬ中、無事に幕を開けた、「ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.2 -大英帝国の醜聞」。通称「モリミュ」。 2019年の第一弾公演から、その圧倒的な歌唱力の高さと、原作を緻密に分解・再構成した脚本、ピアノとバイオリンの生演奏で観客の心を見事に奪っていったモリミュが、さらなる進化を遂げてやって来た。 以下、モリミュ(1も2も両方)と原作(本誌#49のことも少し)のネタバレを含みます。 今回、サブタイトルの「大英帝国の醜聞」を見て「やったー!!」とバ

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          「斬月」を受け継ぐ者たちの物語 ~小説「仮面ライダー斬月」を読み終えて~

          おそらく、これ以上の完成形はありえない。 そんな小説でした。 『小説 仮面ライダー鎧武外伝 ~仮面ライダー斬月~』(以下「小説斬月」と略す)が2020年6月1日に発売されました。 この文章をご覧の方には言わずと知れた、メロンの君の小説です。 呉島貴虎という男は、これまでファンからしても望外なほどに多く、活躍の場を与えられてきました。 TV本編(最高だった)。 Vシネ(最高だった)。 『小説 仮面ライダー鎧武』(最高だった)。 舞台(最高だった)。 そして今回の、小説斬月。

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          舞台版『PSYCHO-PASS サイコパス Chapter1―犯罪係数―』を観て考えたこと

          予想していたより、ずっとずっと斜め上を行かれた。 なるほどこういう2.5次元もありなのか、と。 舞台版『PSYCHO-PASS サイコパス Chapter1―犯罪係数―』を観てきた。 一度目を観終えたとき、正直なところ、「賛否両論あるだろうな」と思った。観た人全員が絶賛する舞台ではなかろう、と。 でも私はすごく面白かった。 諸手を挙げて大絶賛! という感じではなくて、他人の感想や考察を見て後から思い返した時に、「ああ、そういうことだったのか」としみじみ噛みしめるような感覚で

          舞台版『PSYCHO-PASS サイコパス Chapter1―犯罪係数―』を観て考えたこと

          推しの誕生日をお祝いしてきた話

          俳優の久保田悠来さんの性誕祭に行ってきました。 参加して色々感じたことなど、忘れないうちに書いておこうと思います。 私はキャパを超えると、基本的にすぐ「楽しかった」ばかり言う人間なので、多分何の参考にもレポにもなっていないことを、まずお断りしておきます。 この記事を読んでくださっている時点で、久保田さんのファンである可能性が高く誤解はないかと思うのですが、しかしそれ以外の方のために言っておきますと、「性誕祭」、誤字ではないので大丈夫です。仕様です。 さて、以前の舞台斬月

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          舞台「ちょっと今から仕事やめてくる」を観てきました

          舞台「ちょっと今から仕事やめてくる」を観てきました。 江中みのりと申します。 noteをご覧いただきありがとうございます。 舞台を観てきたので、感想など残してみます。 さて、「ちょっと今から仕事やめてくる」=「ちょいやめ」舞台。 キャスト発表時に「永夢くんとシンケングリーンが仕事やめてくるに……!」と叫び、特撮クラスタの一人として楽しみにしていた舞台です。 原作は言わずと知れた、メディアワークス文庫賞の偉大なる先輩、北川恵海先生。 原作が大好きなので、どんな舞台になるん

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          舞台『仮面ライダー斬月』がなぜ素晴らしいのか、考えてみた話

          舞台『仮面ライダー斬月』、観ましたか? 最高でしたね!! 私の周りの鎧武オタクたちも、口々に絶賛しています。 本当に、やってくれてよかった! と。 しかし「最高だった」といくら言っても、何がどう良かったのかなかなか伝わりづらいので、私が持てる語彙を尽くして誉めていきたいと思います。 「舞台『仮面ライダー斬月』はいいぞ」の一言で済ませて、後は観てくれ! と言いたいところだけど、それじゃ何が素晴らしかったのか分かんないですものね。 舞台のストーリーから何からがっつりネタバレ

          舞台『仮面ライダー斬月』がなぜ素晴らしいのか、考えてみた話

          舞台『仮面ライダー斬月』があらゆるファンを完全に満足させる完璧な舞台であった話

          一言で表すなら「理想的で完璧で、最高の舞台」だった。 「鎧武」のストーリーが好きだった人は、迷いなく行くべきだ。 「TV本編で綺麗に完結しちゃったし、その後の話は蛇足かな……」とか言わないでほしい。 その後の物語が、TV本編の(そしてその後続々と発表されたVシネや小説の)余韻を殺さずに成立するからこその「鎧武」なのだ。 何の前情報も要らない。とにかく劇場に足を運んでほしい。 呉島貴虎というキャラが、とりわけ好きというわけでもなかったけど、愛すべきメロン兄さんだったな、とい

          舞台『仮面ライダー斬月』があらゆるファンを完全に満足させる完璧な舞台であった話