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本の一生
好きな本を自由に買うことができなかった子供の頃。
子供と言ってもバイト禁止だった高校生の頃まで、
いつか、自分でお金を稼いだら、
この大好きな本を手に入れよう
と、いろいろな本について思っていた。
知らなかったのだ。
本に「廃版」「絶版」というものがあることを。
図書室に素敵な青い表紙のムーミン全集があった。
大人になって買おうと思ったとき、違う表紙になっていた。
児童書専門店の店員さんが言った言葉を覚えている。
ああ、青いのね、いいよね、あれ。僕は持ってるけどね。
…自慢された。
しかたなく別の表紙のムーミン全集を買った。
でも買えたからまだ良いのだ。
もう買えない本があることにも気が付いた。
悲しかった。
今ならメルカリやAmazonで古い本も探して買える。
でもその頃は絶版になった本は古本屋で探すしかなかった。
インターネットはまだ普及しはじめだった2000年頃のことだ。
絶版の本の復活を願って投票するサイトなどもあった。
今もあるのだろうか。
出版社で生まれた本は、読者の手元に届かずに廃版の日を迎えると
断裁されてただの紙に還ってしまうのだ。
本にとっても作者にとっても読者にとっても、悲しい本の人生の終わりだ。
でも今、好きな本を好きなだけ買うかというと
やはりそうではない。
予算、置く場所、眼のことなどが頭を巡る。
なにも考えずに買いまくった本に埋もれて過ごせる日はなかなか来ない。
仕事中にAudibleを聴きながら、これは果たして本当に読書なのだろうかと思いながら過ごす日々だ。