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食べる夜中のわたし【シロクマ文芸部】

食べる夜中のわたし。

何を食べているの?

幽体離脱のように上から

食べる自分を見下ろしている

どっちが本当のわたし?

上?下?

どちらかが夢のわたし?

どっちも夢のわたし?

そうだ、両方とも夢。

夢だと分かってほっとして

自分の観察を続ける

食べている私はワンピースを着ている

白いカーテンが揺れる部屋で

ブルーグレーのゆったりしたワンピース

なにを食べているの?

どうして一人なの?

そこはわたしの部屋だろうか?

なんだか一人暮らしみたい

一人暮らしなんてしたことない

一人暮らしだったら

夜中に一人でこんなふうに

一人で。

ああ、あなたはわたしと違って

アルコールが飲めるのね

グラスに淡い黄色のワイン

少しずつ盛り合わせた料理

わたしには分からない

ワインに合う食べ物も

ワインのおいしさも

そんな一人の夜の楽しさも

寂しさも、静けさも。

わたしに分かるのは

一人ではない、かすかな悲しさ。

閉じたまぶたの裏に涙がわいて

眼のふちにたまって流れ

ハッと目が覚めた。

あれは夢だろうか

それともどこかにいる

もう一人のわたし。

食べる夜中のわたし。

ワインを飲むわたし。




*小牧幸助さんの企画に参加しています。


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